第75レンジャー連隊 / 75th RANGER REGIMENT †
単に「レンジャー」、あるいは「75レンジャー」とも呼ばれるアメリカ陸軍緊急即応部隊。
数ある特殊部隊の中でも、レンジャーは極めて特異なルーツを持っている。その前身は第二次世界大戦当時、OSS(戦略事務局)指揮下に編成された第5307挺進隊、通称『メリル・マローダーズ』。東南アジアのジャングルで日本軍相手に攪乱戦を挑んだこの部隊は、実は特赦を条件に寄せ集められた死刑囚・凶悪犯で構成されていた。「自殺同然」とさえ言われた無謀・過酷な任務を、しかし果敢に戦い抜いたメリル・マローダーズだったが、終戦に伴い一旦は解隊される。
その後ベトナム戦争において師団ごとに編成されたLRRP(長距離偵察部隊)が統合・再編され、第75レンジャー部隊が発足。これが現在までつながるレンジャーの系譜となる。つまり大戦中のレンジャー(メリル・マローダーズ)と現在の部隊には直接のつながりはないのだが、75レンジャーは発足に当たり部隊章にマローダーズのイニシャル『M』を掲げ、自分たちこそその正当な後継であると誇示したという。
こうして再編となった75レンジャーだが、当初はその任務の性格上レンジャー単独での作戦行動は少なく、元のLRRPチームが原隊にとどまり偵察活動などをサポートすることが多かった。しかしベトナム戦争後にはヘリボーンを主体とした軽装備の空挺・即応部隊としての性格を徐々に強め、1987年以降はSOCOM(合衆国統合特殊作戦群)の指揮下に入り、グレナダ、パナマ侵攻、湾岸戦争など数々の作戦に参加。現在の75レンジャーは3個大隊を擁し、出動命令から18時間以内に世界全域に展開が可能、海兵隊と並ぶアメリカ軍の緊急即応戦力と言われている。
時代の要請に応じてその性格を変化させ続けているのも、この部隊の特徴と言える。
レンジャーは特殊部隊と言ってもむしろ空挺部隊・偵察部隊の性格が強いが、訓練は当然のごとく過酷で、合格率・卒業率は極めて低い。また、レンジャーからグリーンベレー、デルタフォースといった他の特殊部隊に入隊する者も多く、『特殊部隊の登竜門』的存在にもなっている。
もっとも、そのためにデルタフォースの隊員の中にはレンジャーを「格下」と見下す者もいるようで、このあたりの微妙な対立は映画『ブラックホーク・ダウン』などでも垣間見える。
装備面では、空挺部隊としての性格もあって近接戦闘重視の軽装備だが、ジャベリン、スティンガーといった対戦車・対空ミサイルなども用意している。また銃火器以外ではランドローバー改造のRSOVやHMMWVの派生型車輛であるGMV(陸上機動車)と呼ばれる軽車両、または250ccオフロードバイクといった軽快で機動性に優れた車両群を駆使するのも特徴だ。
なお、部隊のモットーは「レンジャーは味方を勝利に導く(Rangers Lead The Way)」、そして「仲間を決して見捨てない、たとえ死体になっても必ず祖国に連れ帰る(Leave no one behind)」。特に後者はレンジャーの規約にも明記され、メディア上でも『ブラックホーク・ダウン』や『コン・エアー』で、登場人物達の行動のバックボーンとなっている。
しかし、仲間にとっては全く心強いこの『レンジャー魂』も、時として裏目に出るジレンマ――つまり、味方を救おうとしてかえって犠牲を拡大してしまうリスクをも抱えており、『ブラックホーク・ダウン』でもそのあたりの葛藤が描かれている。
- ■在籍/出身の人物(実在)
- ケニー・トーマス(退役二等軍曹。モガディシュの戦いに参加。現在は歌手として活動。)
- ジェフ・ストルッカー(退役少佐。モガディシュの戦いに参加。アフガニスタン、イラク戦争では従軍牧師として活動。)
- マイケル・デイン・スティール(退役大佐。モガディシュの戦いに参加。イラク戦争では民間人の殺害を指示したとされ、処分を受ける。)
- ■在籍/出身の人物(架空)