中国南方工業集団公司 (中国兵器装備集団公司) / CSGC:China South Industries Group Corporation

 中国南方工業集団公司は中国の銃火器及び銃火器用弾薬製造企業のほぼ全てを傘下に収めるグループ企業である。
 中国南方工業集団公司が海外向けの名称で、中国兵器装備集団公司が国内向けの名称であり、略称としては英語表記のイニシャルからCSGC、中国国内では兵装集団と呼ばれている。
 1999年6月29日に中国兵器工業集団有限公司の傘下にあった銃火器及び銃火器用弾薬製造企業が移管される形で発足しており、実態としてはノリンコグループと共に国務院国有資産監督管理委員会の下で軍需企業を統括する国有企業である。

 グループ傘下の企業で製造される銃火器及び弾薬は、かつてはノリンコによりノリンコブランドで輸出されていたが、最近では中国南方工業集団公司や傘下の製造企業のブランドで輸出される事も増えている。
 またCSGCはノリンコグループ傘下にあるノリンコの株式を37.53%保有しており、CSGC傘下の企業で製造された銃火器がノリンコブランドで輸出されているのはこれに拠るものと思われる。

 CSGC傘下の銃火器製造企業と、その製品たる銃火器は以下の通りである。

建設工業集団有限責任公司

 前身は1951年6月17日に重慶で設立された国営296廠(建設機械廠)だが、さらに遡ると日中戦争で重慶に疎開した漢陽兵工廠などによって形成された第21兵工廠の小銃部門にまでたどり着く。
 第二次世界大戦の後、第二次国共内戦により第21兵工廠の小銃製造設備の多くが国民党により台湾へ疎開されたが、その残りを共産党が活用する事となり国営296廠が設立された。
 設立以来、中国における小銃生産の基幹工廠としての役割を担っており、モシンナガンM1944のライセンス生産を始めとして、最新の191式自動歩槍に至るまで、中国軍制式小銃全ての生産に関わっている。
 銃への刻印は"△の中に角ばった数字の26"、最近の95-1式自動歩槍などでは単に数字で"296"と打刻されている。
 また、軍用銃の他、峨眉(海外向けはEMEI)ブランド*1で民間向けの競技銃を製造販売している他、E&L airsoftとして遊戯銃事業も行っている。

短機関銃

05式微声短機関銃
 CS/LS2型(05式微声短機関銃の9mmパラベラム弾仕様)

小銃

53式騎槍(モシンナガンM1944のライセンス生産型)

自動小銃

56式半自動歩槍(SKSのライセンス生産型)

突撃銃

56式冲鋒槍(AK47のライセンス生産型)
63式自動歩槍
81式自動歩槍
 87式自動歩槍(QBZ-87)(81式の5.8mm×42仕様)
95式自動歩槍(QBZ-95)
 97式自動歩槍(QBZ-97)(95式の輸出用モデル、5.56mmx45仕様)
03式自動歩槍(QBZ-03)
191式自動歩槍

狙撃銃

79式狙撃歩槍(SVDのコピー生産型)
 85式狙撃歩槍(79式の改良型)
 NDM-86(EM351)(輸出用のSVDコピー)
 NDM-86(EM352)(同上、7.62mmx51仕様)
 CS/LR19(85式の輸出用改良型)
88式狙撃歩槍(QBU-88)
 KBU-97A(88式の輸出用モデル、5.56mmx45仕様)

対物火器

JS 12.7mm狙撃歩槍

四川華慶機械有限責任公司

 前身は国営216廠(長慶機器廠)として発足した。
 機関銃の生産体制拡張の為に国営456廠によって分派的に発足した工廠である。
 なおCSGCの直接の子会社ではなく、建設工業集団有限責任公司の子会社である。
 中国軍向けの銃への刻印は"△の中に216"、輸出向けの銃への刻印は"△の中にCQ"が打刻されている。これは長慶のピンイン(Cháng Qìnɡ)のイニシャルに由来している。

自動拳銃

64式手槍(52式手槍の改良型)

突撃銃

CQ 5.56(M16A1のコピー)
CQ311 (M16A2のコピー)
CQ311A(M4A1のコピー)

軽機関銃

95式班用機槍(QBB-95)
 97式班用機槍(QBB-97)(95式の輸出用モデル、5.56mmx45仕様)
CQ / CS/LM1(MAGのコピー)

重機関銃

54式12.7mm高射機槍(DShKMのライセンス生産型)
W85式高射機槍
 88式車載機槍(QJC-88)(W85式の車載型)
QJZ89式12.7mm重機槍

雲南西儀工業有限公司

 前身は1951年に設立された国営356廠(昆明西南儀器廠、1965年に移転して雲南西儀廠に改称)であるが、さらに遡ると国民党政府の第51兵工廠まで遡れる。
 日中戦争ではZB26を製造していた経緯もあり、軽機関銃の製造を担当する基幹工廠として設立された。
 1980年代には民需事業として"春花"ブランドで自転車の製造販売を開始し、中国国内では槍管車(銃身自転車)の異名で人気を得たがその後は低迷。しばらく経営難が続いたが、2000年代に入ると自動車部品事業が中国国内のモータリゼーションが急速に進んだ波に乗り業績を拡大。現在では中国最大のコンロッドメーカーとして中国国内のみならず中国に進出した日欧の自動車メーカーへ各種の自動車部品を供給している。
 中国軍向けの銃への刻印は"△の中に36"が打刻されている。ワルサー PPのコピー生産型である52式手槍の場合はスライド右側面に数字の"356"が打刻されている他、左右両方のグリップパネルにWalthに"Waltherのリボンを模した枠の中に数字の356"がモールドされている。

自動拳銃

52式手槍(PPKのコピー生産型)

自動小銃

M305民用槍(M14のコピー生産型)

軽機関銃

56式班用機槍(RPDのライセンス生産型)
 56-1式班用機槍(56式班用機槍の改良型)
67式通用機槍
 67-1式通用機槍(67式班用機槍の改良型)
 67-2式通用機槍(67-1式班用機槍の改良型)
81式班用軽機槍(81式自動歩槍の分隊支援火器モデル)
88式通用機槍(QJY-88)
XY5.56mm通用機槍(ミニミのコピー)
XY7.62x51mm通用機槍(MAGのコピー)

重機関銃

02式単管高射機槍(QJG-02)

長安汽車有限公司

 中国国内7位、世界14位の自動車製造企業でもあり、日本の自動車メーカー、スズキ(2018年に合弁解消)やマツダとも提携している。
 歴史は古く、1862年11月に清朝で設立された上海洋炮局にまで遡る。
 1865年に南京に移転して金陵制造局、1929年に金陵兵工廠へと改名している。
 この頃はガトリングガンやノルデンフェルト式機銃に加え、12ポンド砲など各種火砲を製造しており、金陵兵工廠となってからはM1900やマキシム機関銃*2、82mm迫撃砲の製造も始まった。
 1937年に勃発した第二次上海事変で空襲により被災すると重慶への疎開が行われると共に第21兵工廠へと改称し、第二次世界大戦の終戦まで重慶で中国軍を支える兵器廠としての役割を担った。この頃には前述のマキシム機関銃などに加えてZB26も製造している。
 戦後、1951年に長安汽車有限公司の前身となる国営456廠(長安機器廠)へと改編され、戦中に重機関銃や迫撃砲の製造を担っていた経緯もあって重機関銃の製造を担当する基幹工廠となり、SG-43や82mm迫撃砲のライセンス生産を担う事となった。
 自動車事業の端緒は1957年に兵器部から国産ジープの開発要求があり、これに基づいて長江46型4輪駆動車を開発製造した事から始まっている。
 銃への刻印は"△の中に数字の46"と打刻されている。

自動拳銃

51式手槍(TT-33のライセンス生産型)

重機関銃

53式重機槍(SG-43のライセンス生産型)
57式重機槍(SGMのライセンス生産型)

対物火器

56式40mm火箭筒(RPG-2のライセンス生産型)

重慶長風機器有限責任公司

 1965年に国営236廠(長風機器廠)として発足した。
 機関銃の生産体制拡張の為に国営456廠によって分派的に発足した工廠である。
 銃への刻印は最近の92式手鎗などでは単に数字で"236"、ノリンコブランドで輸出しているPPNでは"MADE IN CHINA BY CF."と打刻されている。これは長風のピンイン(Cháng Fēng)のイニシャルに由来している。

自動拳銃

64式手槍(52式手槍の改良型)
 PPN(64式手槍の輸出型)
92式手槍(QSZ-92)

短機関銃

CS/LS06冲鋒槍
 CF05(CS/LS06冲鋒槍の開発時名称)

軽機関銃

80式通用機槍(1980年式通用機槍)
 86式車載機槍(80式通用機槍の車載型)

重機関銃

53式重機槍(SG-43のライセンス生産型)

河北太行機械工業有限公司

 前身は国営197廠。
 親会社である北方凌雲工業集団有限公司はCSGCの完全子会社ではなく、CSGCが65.29%、ノリンコが34.71%の株式を持ち合っている。
 銃への刻印は"〇の中に197"が打刻されている。

対物火器

69式40mm火箭筒(RPG-7のコピー生産型)

西安昆侖工業集団有限責任公司

 前身は国営847廠(昆侖機械廠)。

対物火器

23-1型航空機砲(NR-23(ロシア製航空機搭載用機関砲)のコピー)
23-2型航空機砲(AM-23(ロシア製航空機搭載用機関砲)のコピー)
23-3型航空機砲(GSh-23L(ロシア製航空機搭載用機関砲)のコピー)

中国兵器工業第208研究所

 銃器開発及び研究の為に発足した研究機関。
 79式冲鋒槍の開発を始めとして、81式自動歩槍の競作にも参加し、95式自動歩槍の開発にも関わっていた。


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  • 一応、中国では後継で全自動が無くなって半自動のみとなったので中国唯一ではあったのですが、PAW-20やハイドラも自動擲弾発射機ではなく半自動擲弾発射機だったとような気がするのですが、どっちでしたっけ? -- 2021-09-01 (水) 22:34:23
  • あ〜「フルオート」の意味では確かにまともに存在する製品の中では唯一ですね。ここのサイトでもセミオートは「自動」小銃だったり「自動」拳銃だったりして日本語では伝わりづらい気がするので、フルオート表記の方がいいかもしれません(確かにその二挺も流石にフルオート機能はありません) -- 2021-09-01 (水) 22:48:18
  • 艦載用のCIWS(日本周辺の軍事兵器によると陸上型もあるっぽい?)搭載用のガトリングガンはどこが製造しているのでしょうか? それと西側のガトリングガン(20mm以上)と比較して特筆すべき差異があったらご教示お願いします -- 2021-09-13 (月) 20:17:52
  • 中国の艦砲は良く分からないですが、たぶん制御系が江蘇自動化研究所(716研)、砲が鄭州機電工程研究所(713研)、レーダーが揚州船用電子儀器研究所(723研)かと思われます。全て中国船舶集団有限公司の傘下です。 -- 2021-09-14 (火) 00:47:57
  • ガトリング関連でついでにM134とGAU-19のコピーっぽい?CS/LM12とCS/LM5を追加。 -- 2021-09-14 (火) 01:22:59
  • 重慶がノリンコ傘下だった事、ヤマハと合弁していた事を追記。ソース ttps://global.yamaha-motor.com/jp/stories/history/stories/0038.html -- 2022-01-16 (日) 19:12:06
  • 第二次世界大戦中に軍事援助で供与されたM1バズーカやその後継の対戦車ロケットランチャーをコピー生産ないし、独自改良モデルは造られなかったのでさしょうか? 現物はそれなりに入手できたはずで、技術資料には困らなかったと思うのですが -- 2022-05-23 (月) 05:54:58
  • その手のモノで主なのは51式火箭筒ですね。朝鮮戦争で1950年に鹵獲したM20スーパーバズーカを瀋陽52兵工廠(1948年に国民党から解放、更に前は満州国奉天造兵所の一部)で、瀋陽52兵工廠に残っていた試製四式七糎噴進砲の資料と合わせる形でコピーしたものです。弾はM20スーパーバズーカのを90mm口径にしたものと、試製四式七糎噴進砲のを90mm口径にしたものの2種類を使えるようになっていました。 -- 2022-05-24 (火) 12:00:12
  • 去年の質問についてですが、「艦載用のCIWS」を製造していたのは西安昆侖でした。 -- 2022-10-16 (日) 22:54:56
  • 今更ながら長安汽車がホームページで上海洋炮局まで遡った社史を紹介してるのに気付いたので内容をいくつか反映させました。https://www.changan.com.cn/web/index.html -- 2023-10-08 (日) 22:18:37
お名前:

*1 峨眉ブランド以前には53式騎槍をベースにした競技銃を"天安門"ブランドで製造していたが、政治的理由により変更された。
*2 ドイツからMG08に関する技術支援があり、中国国内で製造出来なかった布製ベルトリンクについても日本が抗議するまではドイツが、それ以降はアメリカのコンチネンタル社が供給していた。

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