人狼 JIN-ROH †
1998年(製作)/2000年(公開),日本アニメーション映画
監督 沖浦 啓之
「銃をもって立ち塞がるものあらばこれを撃て」
・ストーリー
あの決定的な敗戦から十数年。
占領軍統治下の混迷からようやく抜け出し、国際社会への復帰を図るべく「高度経済成長」の名の下に強行された急速な経済再編成が、その実を結びつつある一方で、この国は多くの病根を抱えていた。
わけても強引な経済政策が生み出した失業者の群れと、その都市流入によるスラム化を温床として激増した組織的凶悪犯罪。それに対するべく設立された《首都警》。迅速な機動力と強大な打撃力で治安の番人、第三の武装集団として勢力を拡大した彼らは、《セクト》と呼ばれる非合法政治団体との市街戦の様相すら呈する苛烈な闘争の中、激しい世論の糾弾を浴びる。
強化服と重火器で武装した"ケルベロス"の俗称と共に武闘路線をひた走り続けた首都警の中核である《特機隊》は、その宿敵である《セクト》と共に急速に孤立を深めつつあった、そんな時代。
特機隊の一隊員、伏 一貴。彼はセクトの掃討作戦中に爆弾を抱えた一人の少女に遭遇する。伏は射殺するのを躊躇し、そして彼女は自爆する。伏はこの事件により首都警養成校の再教育課程に送られる。
阿川 七生。それが自爆した少女の名だった。そして向かった七生の墓前。伏はそこで自分の運命を変えるもう一人の少女、七生の姉である圭と出会う―――
・作品解説
『紅い眼鏡』、『ケルベロス 地獄の番犬』に続く本作。
前2作が「ケルベロス騒乱」の後の物語であったのに対して、この作品は騒乱の前の話となる。表現方法を実写からアニメに変更。製作期間は約2年に亘り、1998年末に完成。2000年に公開された劇場用アニメーション作品。喪われた昭和30年代の叙情的な風景はアニメ作品ならでは。
本作では押井守は原作と脚本のみを担当し、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』で作画を務めた沖浦啓之が監督を務め、プロテクトギアのデザインのマイナーチェンジも氏が行っている。音楽も押井作品の多くを手がける川井憲次ではなく溝口肇が担当しており、これまでの押井作品との雰囲気の違いも興味深い。
押井関連の作品としては20世紀最後のセルアニメであり、それに相応しい緻密な描き込みは必見である。第54回毎日映画コンクール・アニメーション賞他、受賞多数。
2018年に韓国にて『人狼 (2018年)』として実写映画化。