民間軍事契約業者(Private Military Contractor)とも呼ばれ、また、個人(社員)を指すときは『プライベートオペレーター(Private Operator)』と称される。近年では、所謂、『戦争屋』のイメージを払拭させた『民間警備／保安会社(PSC：Private Security Company)』との呼称も多くなった*1。
『傭兵組織』と同一視されることも多いが、厳密に言えば、傭兵行為は現在、国際法上禁止されている。PMCも表向きはあくまで軍隊(正規軍)をサポートする『非戦闘員』という位置づけなのだが、実際には戦闘に直接関与することもあり、事実上の『傭兵組織』と言える。
実際、他国の政権転覆など生臭い行為に手を染めた例もあり、中には反傭兵法やクーデター関与などの罪で逮捕・投獄された者もいる。
業態は軍隊のための物流、人材派遣などのサービスの提供から、兵士への軍事教練や訓練の請負、各種の軍事的アドバイスの提供、さらには戦闘員の派遣(直接の戦闘行為だけでなく、重要設備の警備や、護衛任務なども含まれる)など多岐にわたり、規模も人材派遣会社に毛の生えた程度のものから、独自の航空戦力(武装ヘリなど)を保有するものまで様々である。大規模な会社では、重武装の一個大隊程度の部隊を編成・派遣したり、オプションで航空支援まで追加できることさえ可能と言われる。
また、雇用主も国家に限らず、危険地域で活動する企業やNGO、マスコミなどの人員・設備の護衛・警護を請け負う例もある。
人員は現地雇用などが多いが、他国での軍経験者が移籍する例も増加しており、特に特殊部隊経験者は相当な高給で迎えられるという。しかし、一方で正規軍にあるような負傷・戦死時の補償や恩給などは非常に薄く、負傷・退役(退社)後に生活に困窮することもあるらしい。(そのため、社員(兵士)個人が戦争専用の生命保険に入ることも多い)アメリカやイギリスといった先進国以外の国家では東南アジアやコロンビア、ボスニアといった元紛争地帯の軍隊経験者が雇用される場合が多い。
近年は主に財政上の理由から正規軍(国軍)の維持が難しく、PMCの一時雇用でしのぐ例が増えつつある。これは途上国に限った問題ではなく、例えば長期化・泥沼化しつつあるイラク戦争においても、各国派遣軍の戦力不足を補うため、基地の警護など多くの任務を『業務委託』という形でPMCに肩代わりさせている。
但し、民間軍事会社による優秀な現役軍人のヘッドハンティングも問題となっており、戦闘機パイロット、特殊部隊の隊員等、莫大な税金と、長い年月を費やして育て上げた国防のための優れた人材が、(利潤目的の民間軍事会社に)引き抜かれてしまうことにより、結果として、正規軍の予算の『無駄遣い』となってしまうことも多い*2。
PMCの誕生初期にはエグゼクティヴ・アウトカムやサンドライン・インターナショナルなどがアフリカや東欧での紛争に少数精鋭体勢で参加していたが、同時多発テロ以降始まったイラク・アフガニスタンにおける対テロ戦争によって市場が大幅に拡大した。一説には、現在イラク国内では2〜3万人のPMC従業員が活動していると言われている。ただし、従業員は現地雇用が多く、またそのすべてが戦闘員というわけではない。任務も要人警護、イラク人部隊の教練、補給ラインや石油関連施設の警備など多種多様である。
以上のような事情からPMCは増加傾向にあるが、『傭兵』つまりは『金次第』という基本形は変わらず、雇用主の資金が尽きれば引き上げる、あるいは最悪敵に寝返ってしまう、また正規軍のような軍法や軍法会議が存在しないため、規律面で不安がある、などの問題も抱えている。
近年では2007年9月、イラクで活動中のPMC『ブラックウォーター』社の武装要員とテロリストとの銃撃戦に民間人が巻き込まれ、多数の死傷者(イラク側発表で死者17人、負傷者23人)を出したことや、『ブラックウォーター』や『イージス』の社員が警告もなしに無抵抗の民間車両に対して銃撃を行う映像が動画共有サイトにアップロードされたことが問題となった。
なお、PMCはその性格上、統一した装備は持っていない。しかし、活動する地域や時代によって、ある程度の傾向・定番は見られるようだ。初期のPMCは統一性のない多種多様なデザインの迷彩服で身を包んでいたが、イラク戦争時代のPMCからは、カジュアルなＴシャツやポロシャツの上に、チェストハーネスもしくはチェストリグを巻く、軍人とも民間人とも言いがたいような「PMC装備」に身を包んだ者が主流となる。
また彼らが装備する銃火器は、初期のPMCは敵対者となるゲリラ達と同様AK47といった東欧製装備で武装していた*3が、イラク戦争時代からは多様化が始まり、活動中のPMCの一部(BHI；ブラックハート インターナショナルなど)で、AK47やAKM改造のモデルを支給している例もあれば、各銃器メーカー・カスタムメーカーが自ら供給している最新銃火器で武装するケースもある。メーカーにとってみれば、自社の製品の実地テストや箔付けにうってつけであるからだ*4。
・アフリカ内戦
・イラク戦争
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