肩に当てることで射撃の体勢(照準のぶれ)を安定させ、発砲時の反動や跳ね上がりを抑える部品。日本語では銃床(じゅうしょう)とも表記する。
古くは木製で、添え手で握るフォアエンド部分から、グリップ後方の肩に当てるバットストック(Buttstock)部までが一体となっていたが、現代軍用ライフルは狙撃銃を除いて、ほぼこのバットストック部が独立している。普通、このストックを備えるものをライフル(もしくはカービン)と呼ぶが、拳銃に装着するカービンストックと呼ばれるものも存在する。精密射撃が求められる狙撃銃では調節可能なチークピースを備えている物も多い。素材は耐衝撃性に優れ、狂いの少ないものが用いられる。主にクルミ材などの木材、プラスチックなどのシンセティック素材が用いられ、結合部や心材にスチールやアルミ合金(場合によっては真鍮や亜鉛合金)などの金属素材が用いられる。
ストックの歴史は曲銃床から始まった。というより、ストックといえばふつう曲銃床であった。曲銃床タイプのストックは、構えた際に照準線と弾道とのズレが最小となるため、光学照準器抜きで考えれば、精密射撃に有利なレイアウトだからである*1。また、発射の反動の方向とストックの角度がずれているため、銃身が跳ね上がることで衝撃をある程度緩和し、射手への負担を軽減できる特性を持っていた。
この「跳ね上がり」は単発式のライフルが主流であった当時はほとんど問題にはならなかったが、第二次世界大戦を経て、フルオート射撃が可能なライフルが登場すると、アメリカの「M14」のような曲銃床のフルオートマチックライフルでは、発砲時の跳ね上がりを抑え込むよりも早く次弾が発射されるため、フルオート射撃をまともに制御できなかった。このため、突撃銃が歩兵の主力火器として普及していくうえで、MG42のような軽機関銃で見られたストレートタイプのストックが採用されるようになっていく。
本来の役割以外としては、銃を前後逆向きに持ってストック部を打撃武器として使ったり、物を破壊する場合に利用することもある。映画などでは、相手を気絶させるシーンに用いられるケースが多いが、現代の自衛隊の「自衛隊銃剣格闘術」でも、マガジンなどとともに、ストックによる打撃が採り入れられ、実際に訓練が行われている。
ただし、現代のプラスチックや軽合金製の銃床は強度面で不安があり、打撃には不向きとされている。
下記に挙げた名称は、外観もしくは機能からつけられた名称だが、下記のうち2、3種の特徴を併せ持つストックも少なくない。例えばドイツのG36の場合、フォールデング・スケルトン・ストレートの3タイプに当て嵌まる。
・ストレートストック
M16に見られるような、銃身から肩当までが一直線となっているデザインのストックのこと。発砲時の跳ね上がりの抑制に優れるため、突撃銃などの現代フルオートマチックライフルのほとんどがこのデザインのストックを備える。直銃床とも。
軍用アサルトライフルでは、旧タイプの小銃のようにストック部がやや下に下がっている曲床は既に旧式になりつつあり、AK47系統やその派生、コピー系統以外にはほとんど見られない。
・フォールディングストック(折り畳み式ストック)
運搬のさいに取り回しが良いよう、折り畳むことが可能となっているストック。横に折り畳めるタイプや前方に倒すタイプが多いが、ウージー?のように機関部の下に折り畳むタイプもある。横に折り畳むタイプの場合は、排莢口を塞がないよう、左サイドに折り畳むか、畳む角度を若干下げるような工夫が施されている。
またM93Rやグロック 18などのマシンピストル用フォールディングストックもある。
・テレスコピックストック(伸縮式ストック)
ストックの長さが調節可能なストック。スライドストック(引き出し式ストック)、または上記のフォールディングストックともども、リトラクタブルストック(収納式ストック)とも呼ばれる。運搬のさいに取り回しが良いよう設計された点はフォールディングストックと同様だが、数段階に調節可能なタイプは、使用者の体格や装備状況(ボディアーマーなど厚みのある服装を着用している場合)に合わせることができる利点をもつ。
全長の短縮という面ではフォールディングストックに劣るので、両者を組み合わせたタイプも登場し始めている。
・フィクスドストック(固定式ストック)
バットストック部が機関部に固定され、上記のリトラクタブルタイプのような、収納や伸縮機能を持たないストックのこと。上記2種と区別するための用語である。ただし狙撃用ライフルや競技用精密射撃ライフルに見られるような、肩当やチークピースが調節可能なタイプでもフィクスドストックと呼ばれる場合もある。
全長が長くなるため取り回しでは不利となるが、「ガタ」が少ないため、精密な射撃を要求される特殊部隊の装備(MP5?など)にもよく用いられている。
・スケルトンストック
肉抜き加工(SIG550等)が施されていたり、ワイヤー(金属線)やパイプを組み合わせて作られていたりと、最低限の骨組みのみで構成されたストック。なお、ワイヤーを折り曲げて作られたものはワイヤーストックという(スコーピオン?等)。
このタイプが採用されるのは、軽量化が主な理由だが、折り畳んだ状態で排莢口を塞いでしまわないため、スケルトンストックを採用している銃もある。
普通はライフル系の銃に備わっているが、リボルバー(SAAなど)に装着するストックも存在する。これはリボルバーカービンのような固定式ではなく、簡単に着脱することが可能となっている。
・サムホールストック
ストレートストックとピストルグリップを組み合わせたような形状をしている。ピストルグリップ風に握るため、親指を通すための穴が開いている。狙撃銃や競技用銃でみられるが、ピストルグリップを有する民間転用アサルトライフルが規制されている地域で、法的に合致するようこのタイプに改修したものも少なくない。
・ホルスターストック
自動拳銃のホルスターとしても使用が可能なストック。フルオート機構を備えたスチェッキンやM712の他、ストックを装着することでバースト射撃が可能となるVP70が有名。
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