1970年代に米国内で対テロ能力の不足を指摘する声が上がったため、1977年に陸軍内に発足した対テロ作戦専門の特殊部隊。創設以来、世界各地の戦闘に参加している実戦部隊である。正式名称はアメリカ陸軍第一特殊作戦部隊分遣隊デルタ(1st Special Forces Operational Detachment Delta: SFOD-D)。
その訓練方式や入隊選抜はイギリスのSASを倣っており(これは創設者であるチャールズ・ベックウィズ大佐が1960年代に米軍からSASに派遣されて受けた訓練のフィードバックによるものである)、対テロ作戦のための非常に高度で過酷な訓練が行なわれる。そのためか、レンジャー部隊出身者や他の特殊部隊出身者の入隊が多く、志願者を非人間的とも言えるような過酷極まりない体力テストに掛けて選抜したり、徹底的な心理テストや精神分析で隊員を選抜することも稀ではない。
その訓練内容は対テロ部隊として要求される基礎的な技能である強行突入や閉鎖空間での戦闘術、爆薬や銃器の取り扱いといったもの、敵の武器を奪っての射撃、格闘術などにも多くの時間が割かれるが、変わった事例として空港の地上スタッフ(給油や誘導等を行う職員)や列車の乗務員や駅員に扮するための実地訓練も行っているという(特殊な作業を行い、その場の風景に溶け込むことで緊急事態が発生したときに現場近辺にいる隊員が迅速に対応するためである)。
作戦行動や部隊の編成は完全に極秘扱いであり、1980年の『イーグルクロー作戦』でその存在が明るみに出たものの、現在でもアメリカ政府はこの部隊の存在を公式には認めていない。ただ、現在はアフガニスタンやイラク国内への展開が確実視されており、アフガニスタン国内では、海軍のSEALとタスクフォースを組んで、タリバンの残党やアルカイダ戦闘員の捜索や逮捕、掃討作戦に従事していると言われている。
米軍でも屈指の対テロ部隊であるデルタフォースだが、その秘匿性故に、参加した作戦で明るみとなるのは、多くの犠牲を出した作戦であるため、その意味では印象は良くない。初めての本格的な実戦投入となった『イーグルクロー作戦』は、突入前に輸送用ヘリの不時着・墜落などで失敗に終わっており、初陣を飾れなかった。その後に実質的に関した作戦の中でも、特に過酷で凄惨を極めたものが、ソマリアのモガディシオにおける作戦行動である。映画「ブラックホーク・ダウン」の元になった本作戦では、精強無比な最精鋭部隊が全滅寸前まで追い込まれている。この作戦失敗の最大の要因は、現地の情報収集を怠ったうえ、隊員にボディアーマーを支給しなかったことによると後年になって指摘されている。
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