トリジコン ACOG

ACOG TA31RCO-M150CP
モデル倍率xレンズ径全長重量光源
TA01NSN4x32147.3mm424.1gトリチウム
TA31RCO-M150CP4x32185.4mm(フルセット)452.9g(フルセット)トリチウム・光ファイバー
TA11MGO-M2493.5x35221.0mm396.9g
TA11SDO-CP3.5x35221.0mm589.7g
TA648MGO-M2406x48266.7mm1255.9g

 ACOG(Advanced Combat Optical Gunsight)とは、アメリカのトリジコン(Trijicon)社が製造するスコープシリーズである。
 倍率は固定で、一般的なテレスコピックスコープより小型。倍率(1.5倍から6倍)、レティクル形状、RMR(ミニダットサイト)の有無などで多種多様なバリエーションを誇る。

 両目を開けた状態での使用を考慮した設計(BAC:Bindon Aiming Concept)と、電池不要なトリチウム*1と光ファイバーを利用したレティクルの発光機構が特徴。
 従来のスコープでは両目での照準が難しく、かといって片目を閉じて覗くと視野が狭まるだけでなく、視野が暗くなるという問題があった。BACに基づいたACOGでは明るい視野とレティクルによって、両目で覗いた時に自然に標的をズームできるようになっている(倍率の付いたダットサイトのように扱える)。
 明所ではスコープ上部の集光チューブから光ファイバーを通してレティクルを照らし、暗所では内蔵のトリチウムが光る。
 全モデルが、弾丸の落下から距離に合わせた照準線を持つ弾道補正機構(BDC:Bullet Drop Compensator)を標準装備している。

 ピカティニー規格のレイルに対応したマウントを持つ他、AR-15系のキャリングハンドルに直接マウントすることも可能である。基本的に2本のネジ締め固定だが、モデルによってはQD(クイック脱着)タイプが装備される。
 2013年モデルからミニドットサイトのマウント穴が標準装備された。

 2000年代初頭のアフガン紛争やイラク戦争の頃、市街地戦で誤射が多発しており、アメリカ軍は敵味方・民間人を識別して誤射を防ぐ目的で、一般兵にも広くACOGを配備した。
 またこの時期、非正規戦闘において5.56mm弾の威力不足と射程不足が囁かれており、旧式だが大口径・長射程のM14が持ち出されたり、高威力の6.8mmx43 SPCへの移行なども検討されていた。ACOGの配備で弾着を良く確認できるようになると、実際は威力不足ではなく単に当たっていなかった事が判明した。この後、新型弾薬(M855A1)の配備もあり、5.56mm弾の不満は激減した。

 「TA01NSN」は初期のACOGでSOPMODキットのBlock1に採用されている。このモデルには光ファイバーによる光源やBAC設計がない。
 レティクルはクロスヘア型で夜間のみトリチウムが発光する。BDCの対応距離は600m。また近距離戦・バックアップ用のゴーストリングサイトが取り付けられている。

 「TA31RCO(RifleCombatOptic)」は現在米軍で使用されているACOG。外形はほぼTA01と同じだが、光ファイバー・トリチウムのデュアル光源を持ち、レティクルはシェブロン(逆三角)形で常に発光する。
 BDCは800mまで対応し、バックアップサイトを持たない。ベースモデルのTA31Fとの違いは、レンズを保護するレンズキャップとキルフラッシュ(反射防止材)を標準装備している点。
 陸軍向けが「M150CP」で、海兵隊が「M4」・「A4」であり、それぞれ微妙にBDCが違う。現在では海兵隊においてシェブロンレティクルをTA11SDOと同じレティクルに改装したTA31Dが使用されている。

 「TA11」は海兵隊向け分隊支援火器用ACOGで、倍率が3.5倍になり、TA01、TA31の弱点であったアイリリーフ距離が長くなった。
 馬蹄型レティクルのTA11Hをベースにした専用の複雑なレティクル形状を持つ。「SDO-CP」モデルには上部にRMRサイトが取り付けらている。

 「TA648MGO」は機関銃用ACOGで、6倍・馬蹄型レティクルを持つ。主に海兵隊で用いられている。
 倍率が高いだけに大型で、上部にミニダットサイト用のピカティニーレールが取り付けられている*2。12.7mm弾に対応した「TA648MGO-M2」も存在する。

 この他、イギリス軍ではDoctor(ミニドットサイトの一種)を上部に搭載したTA31を、自衛隊のAASAM出場チームがLED+単三電池を使用するTA02を使用している。

 シンプルで高性能なスコープだが、その分高価で、TA01NSNは1347ドル、TA31RCO-M150CPが1779ドル、TA11SDO-CPが2698ドルにもなる(2015年10月現在、Trijicon社ホームページより)。M4カービンの単価が650ドル程度と考えるといかに高いかが分かる。

 一時期、軍に納入された製品に聖書の一節を示す刻印があったことで、イスラム系団体から反発を受け、物議を醸した。これに対し、トリジコン社は軍用モデルへの刻印を削るという対策を取った。トリジコン社によれば刻印は複数種類あるが、その節の内容は「光」に関するものでACOGの「電源なしに光り続ける」という特徴を表しているに過ぎず、聖戦の意味合いはないとされる。


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最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • これはダットサイトと同じように、どこから覗いてもレティクルの位置は変わらないんですか? -- 2015-12-20 (日) 18:04:59
  • いいえ。その為普通のスコープの場合は視差を矯正するダイアルが存在しますが、ACOGの場合は説明が難しいんですが、正しく覗きこんだ時に「レティクルの右側だけがぼやける」ような構造になってまして、これによって素早く、直感的な照準が可能なようになっています。 -- 2015-12-20 (日) 20:43:56
  • 照準するとき片目閉じる人はいるみたいですよ。要は個性だと。 -- 2016-02-22 (月) 14:12:42
  • いやACOGではそれは正しいのかって話だろ。正しい使い方かそうでないかで言ったら違う。ACOGは両目で見た時に正しく機能するように「歪み」が付いてるからな。 -- 2016-02-22 (月) 20:49:28
  • ホースシューレティクルって狙いやすいの?
    普通にシェブロンレティクルでいいと思うけど・・・ -- 2016-12-04 (日) 04:02:38
  • 何が「普通」な訳?どっちも普通じゃないしそもそも選べるんだけど。 -- 2016-12-04 (日) 09:18:01
  • あー、ごめん言い方が悪かった。
    ただ純粋にACOGのホースシューレティクルの評価を聞きたかっただけなんだ -- 2016-12-05 (月) 06:18:30
  • そんなもん大して差がある訳ないだろ。シェブロンはターゲットに重ねて使うもの、ホースシューはターゲットの外周に合わせて使うもの。単純なターゲットの見やすさで言えばホースシューの方が上としか言い様が無いけど。 -- 2016-12-05 (月) 07:55:55
  • トリジコンがACOGの100万機生産記念でACOGの歴史を公開中ttps://www.millionthacog.com/history/ -- 2017-10-16 (月) 11:58:15
  • 現行モデルでは何度までの低温で問題なく使用できるでしょうか? -- 2022-12-12 (月) 18:16:01
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*1 日本語では三重水素と訳される水素の放射性同位体
*2 他機種では専用マウントが用いられる

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Last-modified: 2022-12-12 (月) 01:30:48 (500d)