信号銃/Flare gun †
信号弾を上空に発射するための小型銃火器。多くは単発式の拳銃だが中にはドイツ空軍が使用した二連式の物もある。
主に自分の位置や対象を示したり、船舶同士の信号伝達などに使用される。非電源式で広範囲に伝わる信号装置として、一定以上の航行力を持つ船舶には搭載が義務付けられているため、民間でも目にする機会は比較的多い。
単純に光る物体を発射する装置は歴史を通じて火器の登場とともにしばしば開発されてきたが、現在のような高性能で規格化された信号弾を開発したのは、1859年のアメリカの女性発明家マーサ・コストンであった。彼女が開発した信号弾とその先込め式の信号拳銃はアメリカ南北戦争を通じて多く使用され、その存在が認知されるようになった。
1877年には、米海軍のエドワード・W・ベリー大尉が10ゲージの散弾実包をベースに作成されたより汎用的で軽量な中折れ式の信号拳銃を開発。これが現代的な信号拳銃の元祖と考えられており、現在でも多くの信号拳銃はこの方式を用いている。
第一次世界大戦にはフランスで、余りにも広大な戦場に対して信号拳銃が不足したため、小銃を改造したボルトアクション中折れ式の信号銃が製作されて運用されている。
信号(フレア)には赤、白、黄、緑など多くの色があり、複数種をまとめたクラスター式のものも存在している。色付きで光るものは彩光弾などと呼ばれることもある。信号弾は「相手に伝える」のが第一目的であるため、滞空時間を稼ぐためにパラシュートを付けたものも存在している。弾道確認に使用される曳光弾も、即席の信号弾として使用されるケースもある。
性質上、昼間の視認性は低く、偶然発射を視界にとらえていなければまず気づかれない。このため昼間用として赤やオレンジ色の煙を出すフレアもあり、軍ではその他の色の発煙弾も使用された。発煙弾には、空に煙の帯を残すタイプと、落下の衝撃で発火し煙を出す物がある。
現在では様々な口径の信号銃が開発され、12番、10番、1インチ、27mm(実口径は26.5mm)、35mm、37mm、40mmなどがある。これらの中には散弾銃や擲弾発射器の弾薬の一つとして信号弾を用意して信号銃としても使えるようにしているものも存在している。
これより大きな規模の発光する弾頭は主に照明弾と呼ばれる、夜間の暗闇を照らし出す目的に使われる種類のもので、迫撃砲やさらに大きな火砲によって発射される。
軍用に開発されたH&K P2A1やワルサー カンプピストルといったモデルも存在するが、その需要故に民間で流通する商品にも十分な性能があるため、市販モデルが軍・法執行機関などでそのまま用いられることも多い。