ワルサー TPH / Walther TPH 【自動拳銃】 †
1968年にドイツのワルサー社が発表した小型の自動拳銃。もともと小柄なPPをベースに、更に全体をシェイプしたもので、重量はPPやPPKのほぼ半分となり、機構はPP/PPK同様のストレートブローバックと、ダブルアクショントリガーが組み込まれた。
コルトのベストポケットやジュニアコルトなどの、いわゆる「ポケットピストル」や「マウスガン」と呼ばれるカテゴリーに属するが、このクラスでコンベンショナル・ダブルアクションは珍しい。同様にDA/SAトリガーを有するカウンターパート的な銃には、イタリアはベレッタ社製のM21ボブキャットがあるが、こちらの登場はTPHから10年以上後の1979年である。
TPHは発表されたその年に施行されたケネディ法の関係から輸入販売が難しくなったため、アメリカでも製造された。
製造は当時の代理店だったインターアームズ社が行ったが、このインターアームズ製TPHはあまり評判が芳しくなかった。パーツのクリアランスやトリガーの感触が粗雑で、競合する他社のポケットピストルに比べ信頼性に劣ると云われたのだ。
また、TPH自身に起因する問題もあった。それは余りにも小さなことからくる「バイト(bite/噛み付き)」と呼ばれる現象である。発砲時に高速で後退するスライドとハンマーが、グリップからはみだした人差し指と親指の間の肉をおもいきり「噛む」のだ。
ふつう、この噛み付きを防止するためにフレーム後部に大きな反り返りが設けられているが、それでも握りを高くすると、手の大きなユーザーでは指の間の肉がはみ出すことがままある。もともと小さなPP/PPKでは特にこうした事故に苛まれるユーザーが続出したようで、銃愛好家からは「ワルサーバイト」というアダ名まで頂戴している。PPKよりもひとまわり小さくなったTPHはなにをかいわんやである。
TPHは近年までワルサー社のラインナップに名を連ねていたが、現在はカタログ落ちしている模様。
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