ライオットシールド / Riot shield †
警察、一部の軍隊(治安維持部隊)、PMCなどで使用される軽量な盾。その名のとおり、ライオットコントロール(暴動取り締まりor暴徒鎮圧の意味)に用いられる。
主な用途は、暴徒を押しとどめる即席のバリケード、複数で犯人を押さえつけての拘束、障害物(暴徒側のバリケードや窓ガラスなど)の破砕で、銃器に対する防弾性能はほぼ無い。
暴動につきものの投石などの飛翔物や、角材などの鈍器、刃物を防ぐように作られており、火炎瓶などを考慮して耐火性を備えたものも多い。
大抵は長方形の使用者の頭から膝の範囲を十分覆えるほどのサイズで設計されている。軽度の暴動を想定したものでは、バックラーにも似た円形の小型のマンホール蓋程度の大きさになっていることもある。
日本では、古くは警視庁機動隊が使用した、上部に覗き窓のついた長方形のジュラルミン*1製のものが知られている。防弾性能は無いに等しく、特に有名な「あさま山荘事件」の事例では犯人グループの銃弾が貫通したため、現場で盾を2枚に重ねて使用している。
現在使われている物の多くは、盾ごしでも見通しの利く透明のポリカーボネイト製が多数である。強化プラスチックなど複数の樹脂層を重ね強度を高めている。
取っ手の付き方もさまざまだが、一般的なものは、2つの取っ手が同じ高さで並んでいるものである。使用者は一方の取っ手に腕を通したあと、もう一方をつかんで、片手のみで保持する。
防弾性能を持つものは「バリスティックシールド(Ballistic shield)」と呼ばれる。こちらは銃などの火器で武装した犯罪者を想定したもので、ライオットコントロールを目的とはしていない。
19世紀末期に軍隊用として鋼鉄製やアルミニウム製の物が作られたのが最初で、現在では7.62mm x39弾のようなライフル弾の貫通にも耐える高い防弾レベルのものも存在する。
楯本体はボディアーマーに用いられるような素材で作られ、通常、覗き窓の防弾ガラスだけが楯越しの光景を見通せる設計である。重量が嵩むため、鞄のように取っ手で持つものや、オーストリア製のラムシース三輪バリスティック・シールドのようにあえて手で持たずに大型化し車輪によって手押ししたり、支持脚によって設置できるようにしたものも存在する。
SWATなどの警察特殊部隊が行う、ダイナミックエントリー(建造物等の突入・制圧作戦)に用いられるのはこのバリスティックシールドのほうである。シールド・マンと呼ばれる盾を持った隊員が先頭に立ち、その隊員の陰に隠れる形で後続が追従する縦列パターンが一般的である。この場合、シールド・マンの武装は拳銃のみとなり、発砲時にはシールド脇や上部から顔を出して照準するのだが、顔を出さずに覗き窓ごしに照準するために、拳銃を横撃ちよろしく構える隊員の写真も見られる。
真ん中にフラッシュライト(LEDライト)が埋め込まれた物(ロシアのヴァントVM防弾など)や、拳銃の横撃ち用に盾に切り込み(ガンポート)が入ったものも存在する。
近年では背中に懸架腕付きバックパックを背負い、肩越しに伸ばしたアームに盾を吊るす形式も考案されている。両腕が空くので短機関銃やPDWが使用しやすくなるが、脚部の防御が薄くなったり、体ごと動いて防御しなければならない弱点がある。
メディア的にはビジュアル重視のためか、ポリカーボネイト製ライオットシールドのような透明な素材の外見ながら、非常に高い防弾性能を持ったものが多い。映画では『007 リビング・デイライツ』などにおいて無色透明の防弾シールドが登場している。
FPSゲームでは特にプレイヤーの視界が大きく塞がれてしまい不便なため、透明化する利点が強いといえる。著名FPS『コール オブ デューティ: モダン・ウォーフェア2』で登場して以来人気を博し、ライバルの『バトルフィールド』や『PAYDAY』シリーズといった他のゲームにも影響を与えている。もっとも、FPSゲームにおけるライオットシールドの起源自体は伝説的FPS『カウンターストライク』に遡る。こちらは現実的な覗き窓の付いた不透明なタイプのものであった。
ゲームでは一撃で相手を無力化出来るほどの威力を与えられている事が多いが、もちろん、ゲームデザイン上の非現実的な性能である。現実のシールドによる打撃の際には底面を振り下ろすように用いるのが基本だが、ゲームでは防御と両立できるように正面に構えたままのタックルとして描写されることが多い。
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