マイアミ銃撃事件 †
1986年、アメリカのフロリダ州、マイアミで発生した銃撃事件。日本での知名度は低いが、FBIが10mmオート弾、および.40S&W弾を採用するきっかけとなった事件として特筆される。
1986年4月11日、2名の武装強盗犯マイクル・プラット、ウィリアム・マティックスと、彼らを監視していたFBIの捜査チームの間で銃撃戦が発生。カービンやショットガンで重武装した2名に対し、FBI側も拳銃、ショットガンで応戦。わずか5分間で合計144発の銃弾が飛び交う激しい銃撃戦となった。結果、武装犯2名は射殺されたが、FBI側もジェリー・ダヴ、ベン・グローガンの2名が殉職、5名が負傷するという惨事となった。
だが、問題はその後におきた。司法解剖の結果、犯人のうち1名、マイクル・プラットは、9mmパラベラム弾を一度は胸部に被弾したにも関わらず、その後も怯まずにカービンを撃ち続けていたことが判明したのだ。プラットの右上腕に命中した9mmのシルバーチップ・ホローポイント弾(以下;「ST弾」)は、右肺を貫通しながら心臓の手前で止まってしまい、プラットを絶命させることができなかったのだ。
大きな犠牲を払ったFBIは、この事件をきっかけに、9mmパラベラムの威力に不信感を抱くようになる。
もっとも、このケースでは9mmパラベラム弾自体ではなく、ST弾、および弾薬の選択に問題があったのだと言われている。当時のST弾は軽いアルミ合金で被甲されていたが、弾頭が軽すぎた(115グレイン、7.4グラム)ために、体内を十分進まないうちに拡張してしまい、浅い部分で弾が止まってしまったのだ。
気温30度の暑いフロリダであったにもかかわらず、犯人が長袖シャツの厚着の上に、重武装をしていたことも災いした。もし、もっと弾頭が重く、貫通力のある弾薬を使用していたなら、9mmでも十分致命傷を与えられていたはずだった。
とはいえ、9mmパラベラムを「役立たず」と考えたFBIは、さらに威力とストッピングパワーに優れた拳銃弾を追求しはじめ、10mmオートの減装弾、さらに.40 S&Wの開発・採用へとつながっていくことになる。
なお、ST弾の方も、その後アルミから、ニッケルと銅亜鉛の被甲に変更して弾頭を180グレイン(11.6グラム)にまで増量、貫通力を増す改良が施された。
事件後、9mmパラベラム弾より高威力を求めるようになったFBIだが、2014年には現在の法執行機関向け弾薬であれば9mmパラ、.40S&W、.45ACPの間でほどんど銃創の差は見られない、という調査結果を示している。銃創の差がほとんどないならば、反動が少なさから速射に向く、多弾数が容易、弾も安価であるといったことから9mmを再採用する運びとなった。*1
武装 †