(※)このページに記載されているOICWとは、HK XM29ページの補足説明が大部分である。
・次世代歩兵用個人火器
OICWは1990年代からアメリカが開発を進めている、4軍(陸・海・空軍と海兵隊)共用の次世代軍用小銃である。
統合運用小火器プログラム(JSSAP)*1は、アメリカ軍装備研究開発製作コマンド(ARDEC)*2の一部門で、21世紀型歩兵火器及び関連機器の開発を任されている。
OICWの基礎研究の一部は、「ランドウォーリアー プログラム*3」の中で、M16A4MWS(モジュラー ウェポンシステム)により、すでに試みられている。これは既存のアサルトライフルにM203や赤外線映像夜間暗視装置などを取り付けたものだが、重量や価格などの問題が指摘されている。
OICWプロジェクトには「AAI社」と「アライアント テックシステムズ社」の二つの多企業グループチームが参加し、プロトタイプの設計を担当している。
AAI社のチームは、機関部の一部がブルパップ型になったモジュラー構造のモデルを造っており、これはM16と同系のメカニズム及び弾薬を使う5.56mmライフルに、ブルパップタイプの20mmグレネードランチャーを組み合わせたものになっている。
アライアント テックシステムズ社*4は当初、ライフルとグレネードランチャーを相互に横から接合したような構造のモデルを打ち出していた。本体右半分が5.56mmライフル、左半分が20mmグレネードランチャーになっており、上面のスコープにはレーザー測距装置が組み込まれている。
しかし結局はこれを改め、5.56mmライフルの上にブルパップ型の20mmグレネードランチャーを背負わせたようなスタイルに変更した。
つまりデータベースにも記載されている、「XM29」とはこのモデルのことである。
ARDECは1998年4月にアライアント テックシステムズ社を候補に選び、1,200万ドルの予算が決定された。
ちなみにプロジェクトに参加している企業間では、OICWを「SABR*5」とも呼称している。
OICWはアメリカ陸軍第25歩兵師団「トロピック ライトニング」によって、過酷な実践テストを行っている(現在も行っているかは不明)。
・火器管制システム(FCS = Fire Control System)
コントラバス ブラッシャーシステムズ社製FCSの、アルミニウム製ハウジング側面のスイッチ類は左から、視察チャンネル、信管設定、視察倍率、ダットサイトの明るさ等のオプション。加えて下記の設定を行うこともできる。
・移動目標を追跡するビデオトラッカーのON/OFF
・火器のカント(水平からの左右のひねり)
・サイトの傾き(目標又は射手が高所にいる場合)
・測定データの射手の調整の有無
・弾薬タイプ(実戦弾薬かどうか)の設定
・レーザーステアリング操作
・コンパス測定、自己診断、周囲の空気の温度、銃口調整、信管の選択、ゼロイン
またFCSからのビデオ信号は、ランドウォーリアーの「ヘルメット マウンテッド ディスプレイモジュール(サングラス型ディスプレイ)」にも表示される。これにより物陰に隠れている状態での正確な射撃も理論的には可能となる。
チャージングハンドルと火器のコントロールに必要なものすべて(排莢も含め)は、完全に左右両用。
アサルトライフル部分に使われている改良型G36は、緊急時にはカービンモジュールとして単体で運用可能。オリジナルのG36マガジンとは異なり、OICWはM16用20/30発スタンダードマガジンを採用しているので、戦場で分隊の他の兵士が装備するM16と完全な互換性がある。
・20mmHE榴弾
OICWのグレネードランチャーは、マイクロチップを搭載した「20mmHE榴弾(高性能榴弾)」を使用する。
信管はセッティングしないと瞬発信管モードとなる。また、目的に応じて下記の4つのモードを選択することも可能。
・弾幕射撃に有効な空中爆発(バースト)モード
・選択式PDモード(信管をセッティングしない場合と同じ)
・セミハードの壁等に隠れている標的に有効なPDD(遅発)モード
・レーザーで測定した目標を超えた後、射手が指定した距離で爆発するウィンドーモード
20mmHE榴弾の信管は弾頭の中心に配置され、爆発時には多数の断片となる金属で作られている。これは現在、通常使用されているほとんどのボディアーマーやヘルメットを貫徹できる破片を作り出すほどの威力がある。
・OICWの問題点
XM29やXM8の項でも述べられているとおり、現在OICW計画は凍結状態となっている。
大きな理由として、予算の不足とOICW構想に対する技術不足という、二つの問題点が挙げられる。現在のプランでは最低でも40,000挺のOICWと大量のHE弾が要求されるとされ、膨大なコストがかかる。技術不足に関しては、OICWの重量がフル装填状態バッテリー込みで8.172kgにもなるので、兵士にかかる肉体的疲労ははかり知れないだろう*6。
他にもバッテリーの持続時間不足、FSC本体の強度不足といった、ハイテク機器につきものである問題も挙げられる。
OICWやランドウォーリアー プログラムは、基本的には湾岸戦争で絶大な威力を見せつけたハイテク兵器の思想・運用を、歩兵レベルにまで応用しようとした試みだった。
しかしその後の戦争・紛争は、イラク戦争に代表されるように正規軍と民兵組織やテログループが入り乱れる複雑な非対称戦が主となっており、ランドウォーリアー プログラムの思想は現状と乖離しつつある。
そこで求められるのはよりシンプルで扱いやすくタフな兵器であり、ある意味OICWの対局とも言えるAKシリーズがイラクで再評価されていることは、皮肉な現実と言える。
OICWの頓挫により、アメリカ軍では現用のM16やM4カービンが、改良を受けつつ今後も引き続き使用されている。あくまで凍結状態なので、問題が解決(小型化・軽量化の実現など)されれば、新たなOICWが誕生する可能性も否定はできないが、近い将来には望み薄の状況にある。
・新たなOICWの運用方法
兵士の肉体的疲労を軽減させる目的で、二足歩行式の搭乗型兵器(つまり戦闘ロボット)にOICWの役割を負わせる、との考えを示す専門家もいる。つまり兵士には必要最低限の装備だけを持たせ、その他の機能はすべてロボットの機能に組み込んでしまうというのだ。
ここで言うロボットとは必ずしも人型とは限らず、『メタルギアソリッド4』の「メタルギア月光」や『バトルフィールド2142?』の「バトルウォーカー」といった、文字通り二足歩行型ロボット等も該当するだろう。
また所謂、「パワードスーツ」もOICW関連、ランドウォーリアー関連の装備品の重量化等から、研究が進められている*7。
・OICWに類似したコンセプトの銃
1990年代から2000年代初頭にかけては、湾岸戦争の影響でハイテク兵器の評価が非常に高く、米国のみならず諸外国(特にNATOなど西側諸国)でもOICWやランドウォーリアー プログラムに類似した、あるいは対抗馬的な未来戦士構想と、その主力となる次世代歩兵用突撃銃が研究、開発されていた。
ただこれらの銃は全くの新規設計ではなく、既存の技術や銃の応用、発展型が多いのが特徴である。その分開発コストも抑制されており、実用化、あるいはその寸前まで進んだものもある。
下記はその代表例である。
・FAMAS-FELIN(フランス)
・FN-F2000(ベルギー)
OICWと異なり、こちらはまだ開発継続中ではあるが、やはり未来戦士構想が下火となる中で今ひとつ精彩を欠いている。
F2000は近年、スロベニアからの大量受注に成功したが、自慢(?)のFCSシステムなどは排除され、オープンサイト装備のシンプルなバージョンが採用されている。
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