英語ではsling belt や gun sling 。 日本語では負革や負い紐、背負い紐と呼ばれることもある、行進などの際に銃を肩に掛けるための紐またはベルト状のもの。その歴史は古く、18世紀前半の頃のマスケット銃には既に存在していた。
取り付けられているのは小銃や短機関銃、散弾銃といったショルダ―アームが大半であり、これを使用することで長距離でも楽に携行できるようになったり銃を手放すことなく手が自由に使えるようになる他、命中率を高める為に腰だめや伏射での射撃の際に銃を固定することもある。
かつては革製だったが、現在ではナイロンなどの化学繊維製の物が最も広く用いられている。パラコード*1を編み込んだものを代用する場合もある。
スリングを取り付ける為に銃に備えられた金具をスイベル*2やDリングと呼び、これを使ってスリングを装着する方式をライフルスリング(rifle sling)と呼ぶ。これが無い場合、ストック?等にスリングを巻き付けて代用することがあり、こちらはサファリスリング(Safari sling)と呼ばれる。最近ではクイック脱着式でスイベルが交換可能になっていたり、ピカティニーレールに取り付けるスイベルが登場している。
主に以下のような形式のスリングが存在する。
・1点式(シングルポイント)
スリングと銃が1点で接続される形式。銃の自由度が高く、取り回しやすくスイッチング(持ち手の切り替え)・トランジション(武器の切り替え)もしやすい。その一方で保持性が低く、銃がぶらつきやすいため、携行時の負担は他のスリングより大きい。短機関銃のような小型・軽量な銃や、CQBにおいてよく用いられる。
・2点式(ツーポイント)
スリングを銃の前後2点で接続する形式。もっともベーシックな形である。銃を背負うことが出来、非使用時の保持性が良く、ライフルのような長い銃に向いている。また長い銃で使用する場合は、腕にスリングを巻くことで構えた時の安定性を増加させることが出来る。一方でスイッチングやトランジションには不向きである。
最近では1点式と2点式の切り替えが可能であったり、素早く長さを調整できる製品が登場している。
・3点式(スリーポイント)
1点、2点に合わせて3点と呼ばれているが、実際に銃とスリングは2点で繋がっている。後方のスイベルを支点にしてスリングの先端をスリング中間で自由に移動できるように接続した形式。携行時はロックを掛けスリングを短くし、射撃時はロックを外しスリングを伸ばすことで、携行時・射撃時それぞれの理想な保持性を併せ持つことが出来る。1点式・2点式の利点を併せ持つ一方で、複雑でスリングの付け外しが面倒といったデメリットがある。AR15の場合、ボルトリリースボタンと干渉してしまうこともあるようだ。
軍や法執行機関等で一昔前までは幅広く使われていたが、現在では古い形式として使われなくなっているという。タクティカルスリングとも呼ばれることもある。
・ランヤード
ピストルに取り付けられる紐。こちらは保持というよりも、ホルスター脱落時の紛失防止や強奪防止が主眼に置かれている。現代では収納時に短く、使用時に長く伸ばせるコイル状の紐が使われる。
ランヤードの取り付けのためのポイントは、リング状が多いことから、「ランヤードリング」と呼ぶ。19世紀中盤から登場し場所は多くの場合がグリップ底部だが、マガジンキャッチが底部にある拳銃では側面となる。
スリングはピカティニーレール・フォアグリップやより人間工学的なタクティカルストック?が登場する以前はライフルの取り回しを向上するためにもよく使用され、軍用・近代でもM1ガーランドやSVDのような長い銃を立射・座射する際、フェルールやフロントサイトなどに通したスリングを操作してライフル先端の操作性を上げるテクニックが広く使用されていた。
また、特に緊迫した集団戦においては「銃を落とさず(両手を用いて素早く)負傷者を後方に移動できる」という効果は非常に重要であり、映画「エリート・スクワッド」でもスリングを掛けずに味方を回収しようとする訓練生が激しく叱咤される姿が描写されている*3。
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