フラッシュハイダー / Flash hider

 発射時に銃口から生じる閃光を減らす為、銃口部に装着される筒形の部品。「フラッシュサプレッサー」とも呼ばれる。
 原理としては銃口炎(マズルフラッシュ)を複数方向に分散させることで、熱・密度を減らし、冷却速度を速めるというもの。

 元々は射手側の視界に入る銃口炎を隠す(hide)ことで連射時の視認性を向上し、負担を軽減する装置(hider)であった。その後、暗視装置の登場と時を同じくして敵から見える銃口炎を減らし、被発見率を下げる方向性へと変化していく。その用途としては「減音効果のない減音器」とも評せる。
 減音器より遥かに小型かつ耐久性も高いため、現代では軍用としては一般的である。減音器や他のマズルデバイスと交換できるよう、マズルスレッド(ねじ切り)を介して装着されるのが定石である。ライフルグレネードの発射を想定する場合は、当然ながらその装着に対応した形状で作成される。

 第一次世界大戦の頃には、メガホン状の形状をした射手側の視界補助となるパーツが既に登場しており、主に機関銃に装着されていた。メガホン形状は射手の耳に届く発砲音を減退する効果もあったが、敵からの視認性は変わらず、パーツ自体が大型になりがちだったため、第二次大戦後に廃れていくことになる。
 第二次大戦頃からSMLE No. 5 ジャングルカービンなど小銃用にも広く普及し始めたが、当時登場したばかりの暗視装置を使用した際の優位性を確保するため、そして暗視装置の焼き付きを防止するため、改良が続けられた。かくしてアメリカ軍のM3カービンに発射炎を分散する現代的なフラッシュサプレッサーが装備されることになる。同様の経緯で戦後のソ連でもAKML用のフラッシュサプレッサーが開発された。

 同じく銃口に取り付けるコンペンセイターとは混同されることが多いが、それぞれの役割は全く異なり、機構的にも別物に近い。
 一応、ハイダーの形状によってはある程度の反動抑制効果が得られることはある。更に、根元にコンペンセイター、先端にハイダーを搭載することで双方の効果をそれなりに併せ持つパーツも存在している(SureFire社のWarComp、日本の89式小銃の消炎制退機など)。


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 「浪費しがち」は前述の通り、重量比で特に大きく消費している訳ではないため特に関係ありません(PKMのケージ型ハイダーに至っては9オンスもあります)。そもそも現在主流の非全体コーン型の消炎率は90%を超えていますから、同サイズで余程効果が高くない限り「取り回しを重視したので廃れた」と言うのは難しいでしょう。砲に関してはそれはその通りですが、逆に前回挙げていただいたような製品でハイダーが採用されている例や、ケージ型が大幅に少ない理由との整合性が取れません。「砲レベルの大口径では弾種や圧力、耐久性等の点でコーン型の方が有利である」「艦砲などではあまり意味はないが、使っている製品もある」ぐらいが妥当かと思いますが。 -- 2021-08-28 (土) 17:47:19
  • 「浪費しがち」と記載したのは材料か工数についてであり、最終製品の重量ではありません。DP-28のそれであった実例ですが、戦前型では板金成形した漏斗部と削り出し加工したネジ部を溶接で組立ていたのを、戦時量産型では工数削減のために丸ごと削り出し加工に変更し、加工所要時間を大きく削減した代償として鋼材を浪費していました。大型の部品とはそれだけ材料か工数のどちらかが嵩むのです。 -- 2021-08-28 (土) 22:10:05
  • また、個々の採用事例に関してどんな理由で採用されたかなんて公開情報でも無ければ知りませんよそんなもん。結局、最終製品として採用、運用されているなら、それは使い物になる程度にはまともなんでしょうとしか言えませんよ。 -- 2021-08-28 (土) 22:21:37
  • DP-28の例については現代には適用できないかと。要点としては「公開情報でも無ければ知りません」であれば、「全体コーン型は携行性を重視しない場合は(性能が高いので)使用されている」という表現は誤解を招く、という話です。他に特になければその点だけ改訂しようかと思います。 -- 2021-08-29 (日) 10:06:37
  • 機械加工なんて当時から大きく変わったのは数値制御が加わった程度なのに、それでどうして現代に適用できないと?むしろ、ケージ型など複雑形状の加工が容易となった事で、漏斗型など単純に大きな形状となる製品の材料コストのデメリットはむしろ相対的に大きくなっています。 -- 2021-08-29 (日) 11:48:25
  • 現代の小型なフラッシュハイダーでも旧来の大型に比類する性能を持つ製品がある事は事実のようなので、その点を反映させる事には賛同します。 -- 2021-08-29 (日) 11:53:03
  • 加工については主流としてはともかく、特化型製品としても前回挙げられたような製品がトップにないことから明らかと思いますが・・・繰り返しますが、「大型に比類」がそもそも趣旨として間違っており、同サイズで劣るのであればそれは明らかに消炎については効果自体が低いと見なすべきです。砲では明確な典拠が今のところありませんが、消炎自体よりは衝撃波の指向化などが主目的か大口径では空力学的に効果が異なると考えられ、そうなると「小火器用の」「フラッシュハイダー」としてはやや話が異なってくるでしょう。とりあえずコーン型が「第二次世界大戦以降は」「重いが消炎効果は高いので」「砲などでは引き続き使用されている」という内容は一旦項目から外すべきでは、というのが私の意見ですが、典拠がありましたら随時復元いただければと思います。 -- 2021-08-29 (日) 14:48:11
  • 色々思う所はありますが、とりあえずM14などの単純なかご型を飛ばしてAR15の話題となっていたのが意味不明だったので修正。また以前のコメントで何故か無視された漏斗型が銃剣や擲弾と干渉しやすい問題についても反映させました。 -- 2021-08-29 (日) 22:34:17
  • ちょうどM14の話を完全に失念していたと思っていたところ、ちょうどありがとうございます。ただどうも調べていた感じM14時点でプロトタイプでは三叉もかご型も既に存在していたようなので実戦前から既に問題視されていたのかどうなのか・・・干渉の問題は単に個人的にはそれほど関心がなかっただけです(当時の話としては仰られたような配備の工数の方がそもそも問題であったろうと思われますので) -- 2021-08-29 (日) 22:46:46
  • M14のプロトタイプ時点で三叉もかご型も存在した、という風に統合しようと思っていますが、基部に漏斗形状があったかの情報がパッと出て来ないんですよね。重要事項なのであんまり飛ばしたくもないんですが・・・難しい所です。 -- 2021-08-29 (日) 22:53:09
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