1986年に、アメリカのフォートベニング陸軍訓練基地で発行された、D/296文書が定義した新機軸銃。
当時、ボディアーマーの普及と高性能化により、軍の後方部隊が持つ護身用火器(拳銃、短機関銃)の威力不足がささやかれ始めていたが、貫通力に優れる突撃銃は何かとかさばるため携行は難しかった。そこで以下の条件に合致した新機軸銃の要望提案書『Smalls Arms Strategy 2000』がPDW(当時は"Advanced"が付いてAPDW)の名と共に世に登場*1する。
・レベルIIIaのボディアーマーを貫通する弾薬 ・小型の高速小口径弾 ・短機関銃並のコンパクトさ
この要望案に手を挙げたのがベルギーのFN社とフランスのGIATであり、FN社は翌1987年に上の条件を全て満たしたP90を開発。しかし、冷戦終結による買い控え全盛だった当時の市場には受け入れられず、かつ要望書を出したアメリカ軍自身もM4カービンの登場で、安く、かつ訓練もM16と同じに運用できるようになったため、採用を見送った。
やむなくP90はPDWの名前を捨て、短機関銃のカテゴリに組み込まれ販売されていたが、1996年に発生した在ペルー日本国大使公邸占拠事件にてP90を持つ突入部隊の映像が全世界に放映され注目を浴びると、H&K社もPDWの開発に参入し「H&K PDW(後にMP7に改称)」を発表。2000年代には、ロシアでもPP-2000が登場し、アメリカではナイツ PDW、スウェーデンのサーブ・ボフォース・ダイナミクスのCBJ-MSなど、PDWに類する銃器が後追いで登場している。
近年のPDWは、短機関銃に替わる新たな武器として世界各国の法執行機関や軍の特殊部隊に使用されている。P90は、同じ専用弾薬を共用可能なファイブセブンと共に、40ヵ国以上の軍・法執行機関によって採用され、後発のH&K製MP7A1も、先進国数カ国で採用されており、アメリカ特殊部隊によって2011年のビン・ラディン暗殺作戦といった重要な作戦でも用いられている。これらは「個人防衛火器」という元々の意図したコンセプトからは外れているものの、その威力とコンパクトさを買われた結果だ。
一方で、市場に普及していない新型弾薬を使用する性質上、既存のものに比べ弾薬が高価で、他の銃との弾薬の共用性もないため、新たなカテゴリーとして認識されるほどの市場には至っていない。FNのような代表的メーカーがすでにPDWの名称を用いていない点もその一因のようだ。
近年では通常の弾薬を用いるカービンを、更に20インチ程度かそれ以下のサイズにコンパクト化した製品にPDWの名を冠したものも登場している。PDWという名称から「高価な専用弾を使用しているのでは」という誤解を避けるためか、SBR(Short Barreled Rifle)*2の名称で販売されるものも多い。
ちなみに、「PDW」という言葉自体はその名のとおり広義なもので、軍・法執行機関などが各オフィサー、オペレーターたちに支給する護身用火器全般(従来の短機関銃や拳銃)を指してこう呼ぶ場合もある。
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