モデル | 全長(伸縮時) | 重量 | 連射速度 | 口径 | 装弾数 | 発射形式 | 製造国 |
88式自動歩銃 | 930mm | 不明 | 650発/分 | 5.45mm×39 | 30/?+1 | S/F | 北朝鮮 |
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88-1式自動歩銃 | 943(694)mm | 不明 | |||||
88-2式(98-1式?)自動歩銃 | 不明 | 不明 |
1980年代後半に北朝鮮が68式自動歩銃の後継として、ソ連のAK74をコピーした小銃。
木製の固定ストック?には他国製AK74に見られるようなAKMとの識別用の溝が無く、スリングスイベルの位置や膨らみの無いハンドガードは58/68式自動歩銃から継承されている*1。
マガジンは中国北方工業公司(ノリンコ)の88-S式突撃歩槍の物によく似た金属製の物を使用する。このマガジンはポーランドのKbk wz.1988 タンタルやルーマニアのPA md.86(AIMS74)のような、AK47 III型のマガジンをそのまま5.45mm×39弾のテーパーからくる緩い彎曲に合わせただけのような形状ではなく、AK47 II型や56式自動歩槍型の、背面のリブが無く、側面下部のリブの配列が異なるタイプのマガジンを5.45mm口径対応にしたと思われる形状をしている。
PA md.86のように槓桿が斜め上方向に曲がっている個体もある。これは左手で引きやすくするため、あるいは後述の88-1式歩銃の右側面に折り畳むストックと干渉させないためなどが理由として考えられるが、あくまでも推測の域を出ない。
ガリルのような形状のストックを備えたタイプは88-1式自動歩銃と呼ばれ、そのストックはロシア製AKS74とは逆の右側面に折り畳むようになっている。
2001年に発生した九州南西海域工作船事件において、海上保安庁の巡視船に向けて発砲された北朝鮮製AKS74というのはこの88-1式自動歩銃のこと。その後自沈した工作船やその他の装備と共に揚収され、現在は横浜の赤レンガ倉庫のすぐそばにある海上保安資料館横浜館に展示されており、誰でも無料で見ることができる。
中国の79式衝鋒槍の物と酷似したトップフォールディングストックを備えた88-2式自動歩銃という物も確認されている。既にサイドフォールディングストックの88-1式自動歩銃がありながら、何故このようなバージョンが開発されたかは定かでないが、金正恩第1書記の警護を担当する兵士がなんと円筒状のヘリカルマガジンを装着した88-2式自動歩銃を保持していることが確認されており、通常のマガジンと比べて幅広なヘリカルマガジンと干渉しないような折畳ストックを考えた結果としてあのユニークなトップフォールディングストックが生まれたのかもしれない。
88式自動歩銃が大々的に他国へ輸出されたという情報はないが、アフリカのザンビアで警察官が88-1式自動歩銃と思われる銃を持っている画像が撮影されている。
優秀な兵士に最高指導者(現在は金正恩第1書記)から直々に下賜される贈呈用の88式自動歩銃も存在する。それらは全ての金属部分に銀メッキが施されている。『ロード・オブ・ウォー』のバプティスト Jr.が持っていた金ピカAKや、東京マルイが過去に限定販売していた銀ピカAKS74Uというと分かる人には想像しやすいかもしれない。贈呈用88式自動歩銃はただ単に銀メッキが施されているわけではなく、レシーバーのハンドガード側の端には「조국통일(祖国統一)」の文字、トラニオンブロックには今は亡き金正日総書記のサインが彫られている*2。88式自動歩銃の通常タイプのグリップは樹脂製だが、贈呈用に限っては見栄えを意識してかグリップは木製である。
近年になってロシア製後期型AK74のようにハンドガード、ストック、グリップ、マガジンが黒い樹脂製の北朝鮮版AK74が確認されている。ストックには部分的にMPi-KMのようなブツブツしたイボがあり、比較的近代的な外見だが、名称が88式自動歩銃のままなのかどうかは不明。レシーバー左側面にサイドレールと思しき物が付いている個体もある。
一部では“プラスチック部品が金属製になっている”「98式自動歩銃」という小銃が採用されているとの情報があるが、情報の出典が明確でない。この情報について考察してみる。
まずロシア製AK74でプラ製部品というとグリップとマガジン、後期型になるとハンドガード、固定ストックあたりが考えられるが、グリップ、ハンドガード、固定ストックが金属製というのは、直接人間と触れる部分というのと重量の問題から考えにくく(特に北朝鮮は68-1式自動歩銃のただでさえ細いストックに穴を開けるほどの国)、そのようなAKは確認されていない。となると考えられるのはマガジンだが、確かに北朝鮮は5.45mm口径の金属製マガジンを製造している。しかし脱北した元朝鮮人民軍将校の証言から、よく目にする金属製マガジンを装着した北朝鮮製AK74の採用名は88式自動歩銃で間違いないようだ*3。さらに朝鮮人民軍で58/68式自動歩銃が採用されたのは、ソ連軍でのAK47やAKMの採用から約10年後であり、新弾薬を使用する小銃の採用がソ連から遅れること14年というのは自然な年数だと考えられる。おそらくこの“ソ連ではベークライト製のマガジンが北朝鮮では金属製になっている”という事実が誤った形で広まった結果が「“プラスチック部品が金属製になっている”98式自動歩銃」という小銃の情報なのではないだろうか。
では“98式”という採用年数は何処からきたのか。88式自動歩銃の勘違いということも考えられるが、上述の黒い樹脂製のハンドガード、ストック、グリップ、マガジンを備えた北朝鮮版AK74に98式自動歩銃という採用名が与えられている可能性も捨てきれない。
ここで2013年11月に韓国で報道されたあるニュースを紹介する。「北韓軍*4、新型自動小銃問題深刻」と題されたそのニュースは、北朝鮮国内の消息筋からの情報として、北朝鮮唯一の弾薬製造工場が移転によってまともに稼働せず、軍人でも1年に一度、3発ずつしか実弾射撃訓練が行えないということと、さらに現在配備が進められている88式新型自動小銃は銃身に重大な欠陥があり、射撃精度が著しく低いということを伝えている。
それによると「朝鮮人民軍は最前線部隊*5を初めとして、2004年から88式新型自動小銃を軍人に普及し始めた」とのことである。88式自動歩銃はその名の通り1988年に採用されたが、実際に部隊への配備が始まったのは1991年か92年頃からといわれており、2004年には最前線部隊へはとっくに配備は完了しているものと思われる。ではこの2004年から配備が始まった88式“新型”小銃とは何なのか。やはり黒い樹脂製パーツを多用した北朝鮮版新型AK74である可能性は高いだろう。
上述のトップフォールディングストックを備えた小銃の名称が、88-2式自動歩銃ではなく98-1式自動歩銃なのではないかという意見もある。確かに北朝鮮版トップフォールディングストック型AK74が確認され始めたのはごく最近になってからの話であり、確認されている個体のハンドガードは全て黒い樹脂製である。1988年に採用された88式自動歩銃の折畳ストック型ではなく、新型小銃の折畳ストック型として開発されたとしても不自然ではない。
固定ストック、グリップ、マガジン、そしてアッパーハンドガードが黒い樹脂製で、ロアハンドガードのみが木製というAK74もあり、既存の88式自動歩銃の近代化がパーツ単位で進められているという見方もある。実は海上保安資料館横浜館に展示されている88-1式自動歩銃も、上下のハンドガードの内、アッパーハンドガードのみが黒い樹脂製であり、ロアハンドガードは木製だったためにその部分だけ海水によって浸食されて原型を留めていない物もある状態である。現在のところ北朝鮮製AK74用黒色樹脂パーツが確認された最も古い事例はこの九州南西海域工作船事件であり、発生したのは2001年の12月なので、それ以前から黒い樹脂製パーツは採用されていたことになる。88式自動歩銃が採用から配備開始までに約3年という月日を経ていることから考えると、黒色樹脂製パーツを多用した北朝鮮版AK74の採用名は98式自動歩銃で、経済面や技術等の問題から当初は既存の88式自動歩銃への樹脂製パーツのみの配備となり、完成品としての本格的な配備が開始されたのが2004年だったという仮説が成り立つかもしれない。
北朝鮮の国柄もあるが、一国の正規軍の主力小銃がここまで謎に包まれているのも珍しい。
登場作品 | ジャンル | 使用者 | 備考 |
TRIDENTS トライデンツ | 漫画 | 北朝鮮工作員 | 88-1式自動歩銃 |
ゴルゴタ | 小説 | 北朝鮮特殊部隊 | おそらく88-1式自動歩銃 |
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