特殊核爆破資材(SADM)【戦術核兵器】
全長 | 重量 | 弾頭 | 出力 | 製造国 |
不詳 | 68kg(弾頭は23kg) | W54(Mk54) | 10t〜1kt | アメリカ |
アメリカ海軍、および海兵隊の特殊部隊向けに開発された、戦術核兵器。「特殊核爆破資材(Special Atomic Demolition Munition)」を略して「SADM」と呼ばれる。
通常の戦術核兵器は、航空爆弾や砲弾、ミサイルなどで目標に投下・投入されるが、SADMは歩兵によって運搬される非常に特異な核兵器だった。これはエアボーン(空挺投下)や潜水などで、兵士と共に敵後方に隠密裏に潜入し、重要施設・拠点を爆破する構想の元に開発されたためである。
全体のサイズは、一般の兵士が背負う背嚢(リュックサック)程度。弾頭には当時、アメリカの陸・海・空軍で戦術核弾頭として採用・配備されていたW54(Mk54)が使用され、核出力(威力)は10t〜1ktの間で調整可能。起爆は機械式タイマーを使用した。
個人携行可能な兵器としては当然、最強クラスの威力だが、いくら小型化されているといっても68kgもの重量は兵士1人で運搬するには相当に重く、またセットした後、果たして安全圏まで無事に退避できるか、万一、敵側に奪われた場合のリスク等々を考えると、実際には非常に使いにくい兵器とも言える。慎重な扱いを要する核兵器を、末端の兵士や部隊が、無事に操作・運用できるかという疑問も残る。
SADMは1965年から部隊配備されたが、結局(当然)、一度も使用されることなく、冷戦の終結と共に1989年に退役した。
なお同時期、アメリカ陸軍向けには、同じくW54核弾頭を装備する戦術核無反動砲『デイビー・クロケット』が生産・配備されたが、こちらはSADMより一足早く、1971年には配備を解除されている。