シグ モンドラゴンM1908 / SIG Fusil Porfirio Díaz Sistema Mondragón Modelo 1908 【自動小銃】

モンドラゴン M1908
全長銃身長重量口径装弾数発射形式製造国
1105mm577mm4.18kg7mm×57 Mauser8/10/20/30/100Sスイス

 モンドラゴンM1908はメキシコのマニュエル・モンドラゴン将軍によって19世紀末に設計され、スイスのシグ社によって生産された自動小銃である。
 メキシコ近代化の父、ポルフィリオ・ディアス大統領により、『メキシコ人として世界のどの国よりも早く立射・連射が可能な小銃を設計せよ』との命を受けたマニュエル・モンドラゴン将軍は、1891年に次世代小銃の設計を開始。当時最先端の科学を学ぶためヨーロッパへと留学し、先進的な小銃の基本設計を完成させた。モンドラゴン氏は1892年にベルギー・フランス・アメリカへ特許を出願。同年ベルギーとフランスにおける特許を取得し、1893年にはスイスのシグ社に生産を依頼。同年メキシコ軍に納入されたのは、専用の6.5x48mm弾を用いるストレートプル・ボルトアクションのM1893であった。
 これはまだセミオートではないものの、初期のポンプアクションショットガンなどで見られるスラムファイアが可能な設計となっており、ボルトを前後させるだけで連射が可能となっていた。最初の50挺がメキシコ軍に納入されると、この銃は高い評価を受け、直ちに200挺の追加試験が決定した。1894年に納入されたM1894は、シュミット・ルビンM1889の設計で有名なスイスのエドワルド・ルビン氏との共同研究により改良され、より強力な5.2x68mm弾へと使用弾薬が変更された。
 1896年にはこの小銃はアメリカでも特許を取得。これこそメキシコの狙いであり、この銃の特許をベースに半自動小銃を設計する事で『世界初の半自動小銃』の特許を揺るぎないものとし、世界に名立たる軍事国家として返り咲く算段であった。
 モンドラゴン将軍は開発をその後も続け、1904年にはアメリカに「小火器(Firearm)」の設計を出願。1907年にこの特許を取得した。口径は最終的にメキシコ軍制式の7x57mmモーゼル弾へと改められた。そして1908年、メキシコ政府は遂に「1908年型モンドラゴン式ポルフィリオ・ディアス小銃」4000挺の生産・納入をシグ社に依頼した。
 しかしほぼ同時にメキシコでは政情不安定が進行し、1910年にはメキシコ革命が勃発。1911年、ポルフィリオ・ディアス大統領は革命に敗れフランスへ亡命。「1908年型モンドラゴン式ポルフィリオ・ディアス小銃」は最終的に約1000挺が納入されたものの、信頼性に難があり新政府により残りの発注はキャンセルされてしまった。こうして、メキシコの軍事大国への夢は破れた。
 一方、遠く海を隔てたシグ社では残り約3000挺の小銃が完成していたが、メキシコ政府転覆の報せを受けるとこの先進的な小銃を近隣諸国へと売り込んだ。ドイツ帝国はこの小銃に興味を示し、この在庫を購入した。複雑な機構ゆえ、塹壕戦では土と砂によりすぐに故障したが、砂塵の無い上空においては動作することが発見され、自国で開発した30連ドラムマガジンと共に「Fliegerselbstlader Karabiner 1915(1915年式航空兵向け自動装填式騎兵銃)」の名称で、航空機パイロットの自衛火器*1として配備された。しかしそれでも信頼性は従来の小銃に比べて劣り、1916年にはモーゼルM1916自動小銃に置換されている。
 生産国スイスにおいても7.5x55mmスイス弾に口径を変更したモデルが同様の役割に使用されたが、第一次世界大戦が終わると、世界各国の関心は塹壕戦において多大な戦果を挙げたより大火力の機関銃へと移っており、この小銃が追加生産される事はなかった。

 M1908の作動方式はロングストローク-ガス圧利用方式で閉鎖機構は回転ボルト方式。発射方式はセミオートのみである。マガジンは着脱不可能で、5連クリップ×2により10発を装填する*2。これは後に普及した自動小銃でもよく見られる機構だったが、本銃の特徴的な点として、ガスブロックのレバーで作動ガスをカットし、さらにガスピストンとボルトキャリアを連結するラッチを解除する事によって*3、試作モデルのモンドラゴンM1900と同様にストレートプル・ボルトアクション小銃としても動作することができた。

 数奇な運命を辿ったM1908小銃であったが、この銃の国産化の動きを発端としてメキシコの銃器製造技術の下地が形成され、1933年には完全国産のメンドーザRM2軽機関銃を完成させて量産させるなど、メキシコの銃器史の中では重要な役目を担った銃でもある。
 なお開発者のモンドラゴン将軍はメキシコ革命後、新政府への反対運動を支持して成功させたものの、陰謀によりスペインへ追放された。彼の心中がどのようなものであったかは定かでないが、フランスからはその功績を讃え、レジオン・ド・ヌール勲章が贈られている。

登場作品ジャンル使用者備考
ジオブリーダーズ項目参照
バトルフィールド 1項目参照
幼女戦記アニメターニャ・デグレチャフ
ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ
帝国軍航空魔導師
20発マガジン仕様
銃剣装着

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最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • フルオートに不安があったから(何かあっても使えるように)とかですかね? -- 2016-09-16 (金) 18:52:28
  • ↑セミオートでは?
    あとは(当時あったかどうかは不明だが)ライフルグレネードの発射に使ったとか。 -- 2016-09-16 (金) 19:04:58
  • 一応、メキシコでコイツの軽機関銃verが開発された事はあって、それがメンドーザRM2につながったけど、コイツそのものはセミオンリーだよ。 -- 2016-09-16 (金) 20:30:58
  • Wikipediaによるとこの銃は元々普通のストレートプルボルトアクションの小銃で、1908年に出来たのがそのセミオート版だ。要はセミオートの方が後付け。 -- 2016-09-16 (金) 21:50:47
  • MGDBのこのページの作成者も、Wikiの現版の編集者も私なんですけど、Wikiのその箇所は各々の完成年順に並べて記述しただけなのです。
    実際には、セミオート機構の大まかな設計は1887年に出された特許で殆ど完成されていたので、後付けのセミオートというよりは、途中経過のストレートプルボルトアクションと言うのが的確かと。 -- Grigorye? 2016-09-16 (金) 23:00:50
  • あ、年号を取り違えてる? -- [[ Grigorye]] 2016-09-16 (金) 23:07:47
  • 悪いけど「日本語版Wikipedia」の話であれば出展が無く、おまけに出だしの歴史的経緯から既に適当過ぎるので参考になるとは考えていない。とりあえず一旦「英語版Wikipedia」と「Forgotten Weapons」の折衷内容を表記。以前の内容は全てコメントアウトしており、どちらが正しいとは考えていない。が、英Wikipediaではパテントに関するソースが幾つか提示されており、1887年にセミオート機構の原型が完成していたという説はやや怪しく思われる。それと最終的にメキシコ政府に納入された数と余りの在庫の売却先などもソースが検証しきれておらずどれが正しいのかまだ分からない。 -- 2016-09-16 (金) 23:40:19
  • お、校閲サンクス。やっぱ記事は1人で完成するもんじゃないもんな。誰も手付けてくれないから内心冷や冷やしてた。
    モーゼルM1916自動小銃もアレなんだよな。「モンドラゴンより高価格なのに信頼性が低くて1000丁しかドイツ帝国陸軍航空隊に納入されなかった」とかあって、モンドラゴンが3000丁以上納入されたのに対して数が少ないし。あるいは数が納入される前に戦闘機に需要を駆逐されたのか、だけど。 -- Grigorye? 2016-09-17 (土) 00:08:53
  • 「モンドラゴンより更に信頼性が劣っていたが、精度は高かった」との表記があるがよく分からんね。この時代はほんと手探りで開発されてるようで口径違いやらバリアントやらも多過ぎて真偽を検証して全容を記述するにはかなり手間が掛かるね・・・ -- 2016-09-17 (土) 00:16:40
  • ドイツでの戦闘機の配備が1915年以降(フォッカーE.I〜)だから、戦闘機の充足に伴って航空兵向け自動小銃がお役御免となったと考えると、需要を駆逐されたと考えるべきか。だけど時期的にはモーゼルM1916がモンドラゴンを完全更新とは至らず纏めて二線級扱いにされたのかな。 -- 2016-09-17 (土) 00:29:15
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*1 当時の軍用機同士の戦闘といえば、威力に劣る拳銃か、狭いコックピット内では扱いが困難なボルトアクション小銃での撃ち合いであり、威力に優れる弾をボルト操作無しに連発できる銃としての自動小銃が注目されていた。
*2 初期のストレートプル・ボルトアクションモデルでは8発。スイスモデルでは12発である
*3 ロングストローク-ガス圧利用方式では普通、ガスピストンとボルトキャリアは固定されている。

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