対象物への貫通力を高めた弾のこと。日本語では『徹甲弾』。
元々は戦車砲弾のための技術で、大別して大口径ライフルや戦車砲等で使われる硬度と運動エネルギー(弾丸自身の貫通力)を活かす徹甲弾と、ロケット砲や無反動砲などで多用される炸薬の配置や性質を活かした化学エネルギーの徹甲弾(HEAT弾やHESH弾)の2種類がある。
小口径である拳銃弾、小銃弾は弾頭に炸薬を装填するスペースがないため、ほとんどが運動エネルギー利用の古典的徹甲弾である。その中でも、弾丸に用いられる材料の硬度によって貫通力を高めるタイプと、高初速や大質量によって運動エネルギーを増大させて貫通力を高めるタイプ、あるいはその両方を用いたものある。
拳銃弾の場合はさすがに装甲車まで撃ち抜くことはできないが、物によっては中程度のボディアーマーを貫通することができる。
小口径用のものは弾芯(コア:弾丸の中心部にある芯材)に鉄やタングステンなど硬度の高い物質を用いたものが主流である。通常弾に比べて基本的に高価であるほか、単に材質を変更したものはフラグメンテーションの原理の関係でストッピングパワーが劣る場合もあり、弾種としては存在するが軍では実際にはあまり使用されていない。
また、過去には以下のような特殊な弾頭を用いて貫通力を増加させている弾薬も存在する。
・THV(Tres Haute Vitesse)弾
フランス SFM社開発の軽量高速弾。フラットノーズ(平ら)の先端に、突起がついているのが特徴。発射速度は800m/sにも達すると言われ、クラスIIまでのボディアーマーを完全に無力化する。その上、人体に入ったあと先端の突起が『ブレーキ』になってエネルギーを体内に打ち込むため、殺傷力も高い。
・フレシェット弾
矢の形状をしたアーマーピアシング弾。先端面積に対して弾体が非常に長いため、空気抵抗が小さく初速が低く、また高い貫通力を持つ。構造上フラグメンテーションが起きづらいため殺傷力が低い事が判明しているが、それを逆手にとって散弾銃やランチャー、砲などで使用する、複数の矢を装填した面制圧タイプの牽制用実包も存在する。
銃本体に手を加えなくても貫通力を上げられるのがメリットだが、警察や市民団体は悪用を懸念するところも多く、常に規制論に晒されている。例えば徹鋼弾として販売されたKTW弾は、法執行機関向けに開発された弾種だったが、TV局に『コップキラー(警官殺し)』になり得る弾として報道されたことからアメリカ全土の社会問題となり、法的な規制を受けることとなった。当時の検証によって実際には徹鋼弾と呼ぶには貫通力が低いと判明したにもかかわらず、規制は一部の州では現在も有効である。
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