.338 ラプアマグナム弾は、軍用の長距離狙撃用ライフル向けに開発されたボトルネック弾薬である。一般的な有効射程は約 1,500 m、威力は .308 NATO弾のおよそ2倍(約 5,000 ft-lbs)。
第二次世界大戦まではほぼ全兵士にボルトアクション式小銃を配備させ、狙撃手にはその中から命中精度の高い物を選抜して装備させる事が一般的だった。ところが第二次世界大戦以降になって突撃銃が普及すると、軍用弾薬は、小口径の突撃銃用と大口径の機関銃/狙撃銃用に分かれていく。さらに狙撃銃でも用途に応じて弾薬を選択する思想が生まれ、「長距離狙撃専用」弾薬というニーズが現れた。
そこで、初めから「長距離狙撃用に」とデザインされた弾薬が .338 ラプアマグナム である。開発は、アメリカ海兵隊からこの要望を受けた同国のリサーチ・アーマメント・インダストリーズ(RAI)社でスタートしたが、最終的にRAI社からプロジェクトを引き継いだフィンランドの有名な弾薬メーカー・ラプア社(Lapua)と、イギリスのアキュラシー・インターナショナル(AI)社とのジョイントベンチャーによって、1989年に完成した。
設計当初から長い射程と高い命中精度と威力を目指した「長距離狙撃用」弾薬であり、本弾薬を使用する銃が軍・警察に多数納入されている。メディア上でも精密狙撃のできるエリートスナイパー用として頻繁に登場し、多数の敵を仕留める描写より困難な状況で渾身の一撃を決める描写が多い。
現在では、より長射程の .408 チェイタック弾などが登場し、大口径狙撃ライフル用としてもポピュラーな重機関銃用弾薬の.50BMG弾などの存在もあって、当初の強烈な印象はない。しかし、それらを差し置いて世界最長狙撃記録を樹立しており、今も命中精度の高さで存在感を発揮している*1。命中精度の高さから競技用, 狩猟用にもある程度普及し、民間では多少高価でも命中精度と威力を求める用途に使用される。
類似の弾薬として .300 ウィンチェスターマグナム弾 (.300 Win Magnum) があるが、こちらは北米がメインで用途も狩猟用が中心である。(但し米軍などに一部採用されている)
弾丸直径 | 弾丸全長 /薬莢全長 | リム形状 | 重量 | 銃口初速 | 初活力 | 有効射程 | 代表的な銃 |
8.58 mm(0.338 in) | 93.50 mm(3.681 in) /69.20 mm(2.724 in) | リムレス | 16.2 g | 2953 ft/s | 4840 ft-lbs (1000ヤード先:1365 ft-lbs) | 約 1,500 m | AI AWSM |
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