シグ モンドラゴンM1908 / SIG Fusil Porfirio Díaz Sistema Mondragón Modelo 1908 【自動小銃】

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全長重量口径装弾数発射形式製造国
1105mm4.18kg7mm×57 Mauser8/10/20/30/100Sスイス

 モンドラゴンM1908はメキシコのマニュエル・モンドラゴン将軍によって19世紀末に設計され、スイスのシグ社によって生産された自動小銃である。
 この銃の開発当時、メキシコはアメリカとの領土紛争を抱えており、アメリカの強大な軍事力に対抗する為の新しい兵器を必要としていた。その中でモンドラゴン将軍は自動小銃のアイデアを完成させて1887年に特許を出願した。しかし、この自動小銃のアイデアを実現させるのに当時のメキシコの工業技術力は未熟であり、この為、モンドラゴン将軍はスイスのシグ社に試作と量産の協力を取り付ける事となった。
 こうしてモンドラゴン将軍の自動小銃はシグ社の技術力によって完成し、モンドラゴンM1908としてメキシコ軍に制式採用されて1910年には400丁がメキシコ軍に納入された。
 しかし、ここに来てメキシコ政府はモンドラゴンM1908の高いコストに尻込みして注文をキャンセル。さらに1910年から始まったメキシコ革命によってメキシコ政府そのものが転覆してしまった。
 これによってシグ社は、メキシコが購入するはずだった膨大なモンドラゴンM1908の在庫を抱え込む事となり、一時は倒産の危機にも喘ぎながらも各国へ必死のセールスをしたが、自動小銃ゆえの高コストが各国軍に嫌われて研究目的に少数ばかり購入されるのみ*1。大口としては唯一、ドイツ帝国がシグ社の抱えていた在庫のほぼ全てである3600丁を購入し、「Fliegerselbstlader Karabiner 1915(1915年式航空兵向け自動装填式騎兵銃)」として30連ドラムマガジンと共に航空機パイロットの自衛火器*2として配備した事が知られている。しかし機関銃を搭載する航空機*3の登場によって、この役目からも早々に退役することとなった。

 作動方式はロングストローク-ガス圧利用方式で閉鎖機構は回転ボルト方式、発射方式はセミオートのみである。これは後に普及した自動小銃でもよく見られる機構だったが、モンドラゴンM1908の特徴的な点として、作動ガスをガスブロックでカットし、さらにガスピストンとボルトキャリアを連結するラッチを解除する事によって*4、試作モデルのモンドラゴンM1900と同様にストレートプル方式ボルトアクション小銃として動作させられる事がある。

 このように、開発した国からは高コストから敬遠された挙句に国が革命で転覆し、他国からも高コストから買い手が付かずシグ社を苦しめ、ようやく掴み取ったニッチな需要さえも機関銃に取られてしまったモンドラゴンM1908であるが、この銃の国産化の動きを発端としてメキシコの銃器製造技術の下地が形成され、1933年には完全国産のMendoza RM2軽機関銃を完成させて量産させるなど、メキシコの銃器史の中では重要な役目を担った銃でもある。

登場作品ジャンル使用者備考
ダイナマイトが百五拾屯項目参照

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • フルオートに不安があったから(何かあっても使えるように)とかですかね? -- 2016-09-16 (金) 18:52:28
  • ↑セミオートでは?
    あとは(当時あったかどうかは不明だが)ライフルグレネードの発射に使ったとか。 -- 2016-09-16 (金) 19:04:58
  • 一応、メキシコでコイツの軽機関銃verが開発された事はあって、それがメンドーザRM2につながったけど、コイツそのものはセミオンリーだよ。 -- 2016-09-16 (金) 20:30:58
  • Wikipediaによるとこの銃は元々普通のストレートプルボルトアクションの小銃で、1908年に出来たのがそのセミオート版だ。要はセミオートの方が後付け。 -- 2016-09-16 (金) 21:50:47
  • MGDBのこのページの作成者も、Wikiの現版の編集者も私なんですけど、Wikiのその箇所は各々の完成年順に並べて記述しただけなのです。
    実際には、セミオート機構の大まかな設計は1887年に出された特許で殆ど完成されていたので、後付けのセミオートというよりは、途中経過のストレートプルボルトアクションと言うのが的確かと。 -- Grigorye? 2016-09-16 (金) 23:00:50
  • あ、年号を取り違えてる? -- [[ Grigorye]] 2016-09-16 (金) 23:07:47
  • 悪いけど「日本語版Wikipedia」の話であれば出展が無く、おまけに出だしの歴史的経緯から既に適当過ぎるので参考になるとは考えていない。とりあえず一旦「英語版Wikipedia」と「Forgotten Weapons」の折衷内容を表記。以前の内容は全てコメントアウトしており、どちらが正しいとは考えていない。が、英Wikipediaではパテントに関するソースが幾つか提示されており、1887年にセミオート機構の原型が完成していたという説はやや怪しく思われる。それと最終的にメキシコ政府に納入された数と余りの在庫の売却先などもソースが検証しきれておらずどれが正しいのかまだ分からない。 -- 2016-09-16 (金) 23:40:19
  • お、校閲サンクス。やっぱ記事は1人で完成するもんじゃないもんな。誰も手付けてくれないから内心冷や冷やしてた。
    モーゼルM1916自動小銃もアレなんだよな。「モンドラゴンより高価格なのに信頼性が低くて1000丁しかドイツ帝国陸軍航空隊に納入されなかった」とかあって、モンドラゴンが3000丁以上納入されたのに対して数が少ないし。あるいは数が納入される前に戦闘機に需要を駆逐されたのか、だけど。 -- Grigorye? 2016-09-17 (土) 00:08:53
  • 「モンドラゴンより更に信頼性が劣っていたが、精度は高かった」との表記があるがよく分からんね。この時代はほんと手探りで開発されてるようで口径違いやらバリアントやらも多過ぎて真偽を検証して全容を記述するにはかなり手間が掛かるね・・・ -- 2016-09-17 (土) 00:16:40
  • ドイツでの戦闘機の配備が1915年以降(フォッカーE.I〜)だから、戦闘機の充足に伴って航空兵向け自動小銃がお役御免となったと考えると、需要を駆逐されたと考えるべきか。だけど時期的にはモーゼルM1916がモンドラゴンを完全更新とは至らず纏めて二線級扱いにされたのかな。 -- 2016-09-17 (土) 00:29:15
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*1 日本も研究目的に少数を購入している。
*2 当時の軍用機同士の戦闘といえば、威力に劣る拳銃か、狭いコックピット内では扱いが困難なボルトアクション小銃での撃ち合いであり、威力に優れる弾をボルト操作無しに連発できる銃としての自動小銃が注目されていた。
*3 戦闘機のこと。
*4 ロングストローク-ガス圧利用方式では普通、ガスピストンとボルトキャリアは固定されている。

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