#author("2023-09-08T15:44:26+09:00","default:user","user")
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*.40S&W(10mmショート)弾 / .40S&W (10mm Short) [#t1263314]
 1989年に、[[S&W(スミス アンド ウェッソン)>スミス アンド ウェッソン]]社と[[ウィンチェスター]]社の共同で開発された[[自動拳銃]]用実包。
 1988年、FBIは[[10mmオート弾]]の減装弾(通称「FBIロード」)を採用していたが、これにS&W、ウィンチェスター両者は疑問を抱いた。発射薬を減らすのであれば、最初から薬莢を短縮すれば、弾薬の全長も[[マガジン]]の前後幅も短縮でき、ひいてはグリップも細く、握りやすくなって、より扱いやすくなるはずと考えたのだ。
 そこでS&W社のメルヴィン、ウィンチェスター社のバーセットが中心となって、10mmオートの薬莢を約3.5mm短縮した新弾薬『.40S&W』を開発したのである。

 .40S&Wと10mmオートは、薬莢のサイズが異なるだけで、弾頭の直径や薬莢底部の構造は共通している。このため「10mmショート」と呼ばれることもある。
 短縮されたとはいえ、薬莢全長は22mmと長めだが、弾頭が薬莢内に深く入るため、全長ではむしろ[[9mmパラベラム弾]]よりもやや短い。直径が大きい分、9mmパラベラムよりも装弾数は若干低下するが、弾薬のサイズや発射時のプレッシャーが近いため、9mm仕様の銃を大きく改変することなく容易にコンバートすることが可能((ただし9mmと比べ部品の消耗は大きくなる))。威力も反動も、9mmと[[.45ACP弾]]の中間で扱いやすく、ある意味、10mmオートが当初目指していた性能・性格を実現している。

 当然、各方面から注目を集めた.40S&Wだったが、デビュー直後に、思わぬところでつまずくことになる。命中精度が非常に悪かったのだ。
 ある実験では、S&W社の[[4006>SW M39]]から発射した場合、射程50[[ヤード>ヤード・ポンド法の単位]]で着弾が平均15cm(最小11cm、最大20cm)もずれてしまったのである((ウィンチェスター社製、180グレイン、JHP弾使用))。「.40S&Wには重大な欠陥があるのではないか?」と疑われても仕方のない、惨憺たる結果だった。
 だが、問題は弾薬ではなく、銃にあった。初期型のS&W 4006は9mm仕様の銃をわずかにアレンジしただけの言わば『手抜き銃』で、各部のメカニズムが.40S&Wに適応していなかったため、反動が無用に大きくなり、命中精度が低下していたのだ。
 その後、リコイルスプリングを強化するなど対策を施された結果、銃の性能は改善、.40S&Wもめでたく名誉回復となったが、S&Wは危うく自分で自分の首を絞めるところだった。

 他メーカーの銃でも、初期ロットではしばしばトラブルを生じ、また10mmオートより非力であることから、「.40 Short and Wimpy(短小で弱虫)」や「.40 Slow and Weak(遅くて弱い)」と言った蔑称で呼ばれることもあった。
 しかし、様々な経験を踏まえて洗練されたカートリッジだけに完成度は高く、本来の性能を発揮し始めた後はシェアを徐々に拡大。.40S&W仕様の銃も各社から続々と発売され、中には[[FN ハイパワー]]のようなベテラン銃からのコンバート例も見られるようになった。
 SOCOM傘下の各種米軍特殊部隊でも2000年代から.40 S&Wを使用する[[グロック 22>グロック 17]]が装備として選択可能となっている他、9x19mmや.45 ACPに比べてパフォーマンスを重視するコアなユーザが多いため卓越した記録も多く、2014年にアメリカ・テキサス州オースティンで発生した銃乱射事件では、たまたま近くで2頭の馬を牽引中だったジョンソン巡査部長が空いた片手で[[スミス&ウェッソン M&P 40>SW MP]]を発砲、約100m先の犯人を一発で即死させるなどの離れ業を見せている。
 SOCOM傘下の各種米軍特殊部隊でも2000年代から.40S&Wを使用する[[グロック 22>グロック 17]]が装備として選択可能となっている他、9mmパラベラム弾や.45ACP弾に比べてパフォーマンスを重視するコアなユーザーが多いため卓越した記録も多く、2014年にアメリカ・テキサス州オースティンで発生した銃乱射事件では、たまたま近くで2頭の馬を牽引中だったジョンソン巡査部長が、空いた片手で[[スミス&ウェッソン M&P 40>SW MP]]を発砲、約100m先の犯人を一発で即死させるなどの離れ業を見せている。

 現在ではアメリカの約7割の公的機関で採用されるまでに成長し、近年誕生した中ではもっとも成功した拳銃用カートリッジとされている。しかし、単価がまだ高い((ただしアメリカでは.45ACPより安い))ためか、北米以外ではあまり普及していない。
 全米の警察を席捲した.40S&W弾だったが、FBIによって[[JHP>ホローポイント弾]]を使用した拳銃弾の殺傷力について.[[9mmパラベラム弾]]、.40S&W弾、[[.45ACP弾]]の間に大きな差異が無いと調査結果が示されており、FBIをはじめとするアメリカの警察で9mm回帰の動きが始まっている。
 全米の警察を席捲した.40S&W弾だったが、FBIによって[[JHP>ホローポイント弾]]を使用した拳銃弾の殺傷力について、9mmパラベラム弾、.40S&W弾、.45ACP弾の間に大きな差異が無いと調査結果が示されており、FBIをはじめとするアメリカの警察で9mm回帰の動きが始まっている。

|弾丸直径|弾薬全長&br;/薬莢全長|リム形状|弾頭重量|銃口初速|初活力|有効射程|代表的な銃|h
|10.17mm(0.4005in)|28.8mm (1.135in)&br;/21.6mm(0.850in)|[[リムレス>リム]]|135gr(8.7g)|1375ft/s|567ft-lbs|−|[[S&W 4006>SW M39]]&br;[[ベレッタ 96>ベレッタ M92]]&br;[[グロック 22>グロック 17]]&br;[[CZE Cz75]]&br;[[FN ハイパワー]]&br;[[AMT コマンドー>AMT ハードボーラー]]&br;[[M610>SW M610]]|

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CENTER:※データは[[DOUBLE TAP AMMUNITION>http://www.doubletapammo.com/php/catalog/product_info.php?manufacturers_id=10&products_id=107]]からの抜粋で、[[Nosler JHP>ホローポイント弾]]を4インチ銃身から発射した場合の一例です。&br;弾薬の種類や製造元、発射する銃によって数値は異なります。
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