#author("2023-11-09T09:02:59+09:00","default:user","user")
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*フラッシュハイダー / Flash hider [#o7da5db2]

 発射時に銃口から生じる火炎と閃光、いわゆるマズルフラッシュを減衰するため銃口部に装着される部品。「''フラッシュサプレッサー(Flash suppressor)''」とも呼ばれる。日本語では消炎器と訳される。
 
 充分な銃身長があれば、弾が銃口から飛び出すときには発射ガスの圧力と温度は適度に下がり、マズルフラッシュは昼日中では全く視認できないほど小さなものとなる。しかし、改造によって短銃身化したカービンのように銃身長と弾薬とのバランスを欠いている場合、高圧高温なまま噴出した発射ガスはより激しいマズルフラッシュを発することになる。これは夜間での発砲では特に問題となり、暗がりになれた射手の視力を奪うことになる。
 そこで、銃口部の形状や穴、スリットによって、噴出するガスの圧力と温度を下げ、発砲炎を抑制するのがフラッシュハイダーである。
 連射時の視認性を向上し、負担を軽減するための器具だが、副次的な効果として、敵から見える銃口炎を減らし、被発見率を下げることにも役立つ。

 同様に銃口部に装着する[[コンペンセイター]]とは混同されることが多いが、反動や跳ね上がりを抑制するそれとは役割は全く異なる。しかし穴やスリットによるフラッシュハイダーの場合、その配置や噴出方向を限定することでコンペンセイターとしても機能するハイブリッド型も多い。[[M16A2>コルト AR15A2]]の鳥籠型ハイダーは、上半分にスリットが集中する代表的なハイブリッド型である。日本の[[89式小銃>豊和工業 89式小銃]]のものもデザインは異なるが、同様に消炎・制退機能を併せ持つ。
 同様に銃口部に装着する[[コンペンセイター]]とは混同されることが多いが、反動や跳ね上がりを抑制するそれとは役割は全く異なる。しかし穴やスリットによるフラッシュハイダーの場合、その配置や噴出方向を限定することでコンペンセイターとしても機能するハイブリッド型も多い。[[M16A2>コルト AR15A2]]の鳥籠型ハイダーは、上半分にスリットが集中し、銃の跳ね上がりと伏射時に土煙の巻き上げを抑制する代表的なハイブリッド型である。日本の[[89式小銃>豊和工業 89式小銃]]のものもデザインは異なるが、同様に消炎・制退機能を併せ持つ。

 減音器より遥かに小型かつ耐久性も高く、現代では軍用として普及している。減音器や他のマズルデバイスと交換できるよう、マズルスレッド(螺子切り)によって装着されるのが定石であるが、製品によってはフラッシュハイダーそのものを減音器の取付アダプターとして着脱の手間を省いているものもある。[[ライフルグレネード]]の発射を想定する場合は、当然ながらその装着に対応した形状で設計されている。初期の機関銃には発砲炎を減らすのではなく、直接遮蔽する円盤状のデバイスなども存在した。

 第一次世界大戦において旧来の単発式小銃よりも高い連発能力を持つ[[ボルトアクション]]小銃、さらには持続射撃さえ可能となった[[重機関銃]]が大規模に配備運用され、その火力の凄まじさだけでなく、その連射力によりマズルフラッシュで位置を露呈してしまう危険性が初めて世界に大きく認知された。
 この脆弱性に対抗すべく機関銃の発砲炎を抑制する工夫が急速に考案され、[[ホチキスM1914>重機関銃/ホッチキス M1914]]などでは「牛追い型」と呼ばれる、逆向きにしたちり取りのような形状により発砲炎を丸ごと下に吐き出すフラッシュハイダーなども作られた。((https://www.forgottenweapons.com/hotchkiss-1914-cow-catcher-muzzle-device/))
 当時、最も効果が高かったのはいわゆる「漏斗型(コーン型)」のフラッシュハイダーである。これはドイツを中心にMG 08/15やシュワルツローゼ機関銃などに開発され効果を発揮し、他の重機関銃にも普及していった。

 第一次世界大戦後、発砲炎が如何に戦場で不利に働くかを痛感した世界各国は発砲炎抑制の研究に努めたが、アメリカ以外の多くの国では無煙火薬のような劇的な発展があったこともあり、「火薬自体を改良すべき」との意見が多く、フラッシュハイダーの改良はあまり進められなかった。
 一方、余力・技術力のあったアメリカではフラッシュハイダー自体の改良を視野に入れ、当時の制式機関銃[[M1917>重機関銃/ブローニング M1917]]向けにM1923フラッシュハイダーなどの多くの新構造のフラッシュハイダーを作成した。
 しかし、これらのモデルは「隙間にススが詰まりすぐ使えなくなる」「連続射撃時に飛んで行ってしまう」など問題点が多く、最終的には従来的な漏斗型のフラッシュハイダーを採用することとなる。((https://www.smallarmsreview.com/display.article.cfm?idarticles=1816))
 第二次世界大戦の頃には[[SMLE No. 5 ジャングルカービン>小銃/RSAF リー・エンフィールド]]や[[ボーイズ対戦車ライフル>ボーイズ MkI]]など[[小銃]]でも採用され始め、当時登場したばかりの[[暗視装置]]を使用する[[M3カービン>ウィンチェスター M1]]では発射時の火炎や閃光を抑える事で射点の暴露を防ぎ、そして暗視装置の焼き付きを防止するために同様に漏斗形状のフラッシュサプレッサーが装備されることになったが、小銃用としては漏斗形状が[[銃剣]]やライフルグレネードの使用に支障が出やすい事から配備は暗視装置の使用時か[[狙撃銃]]など一部に留まった。

 第二次世界大戦後、二大大国となったアメリカ・ソ連では共にフラッシュハイダーの改良が進められた。
 1950年代のアメリカでは円筒側面に複数のスリットを配置したかご型(ケージ型)のフラッシュハイダーが[[M14>スプリングフィールド M14]]で採用された。さらに1960年代にはより小型ながら消炎効果の高い「三叉型」タイプのフラッシュハイダーが開発される。これは[[弾薬]]やバレル長にもよるが、発砲炎体積を90%以上も削減するほど消炎効果が高い設計だった。このタイプはその後アメリカでは[[M16>コルト AR15]]で採用されるが、この設計は先端が開いているため、草木などに頻繁に引っ掛かるという欠点があったため、三叉型の先端を閉じ、またフラッシュハイダーの内面に漏斗型を採用する事で、漏斗とスリットの両方の消炎効果を利用した形式が発展形として開発され、M16A1で採用された。
 一方、ソ連でも同様に、[[USSR AKM]]の暗視装置着用モデルAKMLや[[PK>USSR PK]]でM14と同様に単純なかご型を採用した後、AKMの後継である[[AK74>USSR AK74]]ではフラッシュハイダーではなくマズルブレーキを採用したものの、PKの改良型であるPKMではM16A1と同様に漏斗型とかご型を組み合わせたフラッシュハイダーが採用された。
 
 一方、車載機関銃や各種機関砲などでは小銃のように銃剣やライフルグレネードなどを運用するような事が無く((全くの皆無という訳ではなく、第二次世界大戦の頃には砲口に被せる形式の対戦車擲弾が各国で開発され、ドイツでは実際に3.7cm高射機関砲で運用されていた。))寸法にそれほど制約が無い事、発砲炎だけでなく衝撃波による周辺の二次被害を防ぐ目的などで、現代でも漏斗型が採用されているものも多く、三叉型やケージ型のフラッシュハイダーと競合している。

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