#author("2023-08-24T02:17:26+09:00","default:user","user")
*銃把 / Grip [#y3ad28e1]

 殆ど各種の銃器が人の扱う道具であるために、人の手で握って保持する為に備わっている持ち手の部品。英語では「Grip(グリップ)」と呼ばれる。
 日本語では銃に限らず刀剣や工具などあらゆる道具の持ち手の部分を示す単語として「握把」と呼称される場合があり、[[自衛隊]]などではこちらの呼称が用いられている。
 添え手で支える銃の前方の持ち手部分は[[ハンドガード]]、あるいは[[フォアグリップ]]と呼ばれる。

 握り易さを向上させるため、グリップパネルと呼ばれる木材や樹脂材料などで作られた部品を側面に取付する事が多い。また[[Px4>ベレッタ Px4]]など近年の[[ポリマーフレーム]]を採用している[[拳銃]]の一部ではグリップの側面にはフレームと別部品のグリップパネルを採用せず((実際には外観上フレームに見える部品が、インナーシャーシに取付されているグリップとも言える。))、グリップの後面を交換式のバックストラップとする事で、個々人の手の大きさの差異に対応できるようにしているものがある。
 また[[フィンガーグルーブ]]と呼ばれる指掛けの突起を設けたり、チェッカリングと呼ばれる多数の溝を交差させるように削って菱目の滑り止めを設ける事がある。

 銃器の種類により多様な形状のグリップが用いられており、また使用者の体格や手の大きさにより扱い易さが大きく変わるため、銃器を選ぶ要素の一つとしてグリップの握り易さが重視される事も多い。
 [[AK>USSR AK47]]や[[AR15>コルト AR15]]のように広く普及した銃器では、アメリカの[[マグプル>マグプル・インダストリーズ]]社などのサードパーティメーカーがカスタムパーツとして各種のグリップを製造販売しており、これらに交換する事で握り心地を変化させる事ができる。

 グリップの種類としては以下のようなものがある。

''・ストレートグリップ''
 [[銃床]]と一体化しているグリップ。マスケットや20世紀初め頃までの[[小銃]]に採用例が多い。
 銃床の下部分に盛り上がりや突出部分が一切無く、上部分に親指を載せるためのくびれが備わっているだけとなっている。
 後述のピストルグリップ登場以前の設計であり、銃を構えた時は、トリガーハンドの手の握りを前傾させるように手首を捻らればならず、安定して肩へと引き付けるにはグリップを強く握りこむ必要があり、長時間の保持がし難い。

''・ピストルグリップ''
 直訳では「拳銃の持ち手」となるが、意味としては「小銃や[[機関銃]]を拳銃のように握れるようにした持ち手」である。
 ストレートグリップの銃床の下部分に盛り上がりや突出部分を設け、トリガーハンドの手の握りを拳銃のように、前傾させない垂直に近い角度で握れるようにしたもの。これにより手や手首にあまり負担を掛けず銃を肩に引き付け易くなっている。
 盛り上がりが小さいものは「セミピストルグリップ」と呼ばれ、前後に利き手をずらす必要があるダブルトリガー式の銃で採用されることがある。
 現代の小銃ではあえてクラシカルな外観を再現している場合などを除きほぼ間違いなくピストルグリップが採用されている。

''・独立グリップ''
 ピストルグリップの内、銃床とは別に取付された持ち手部分。ただし旧来のピストルグリップと分けて扱う為の便宜上の呼称であり、銃器メーカーや使用者である軍などが作成するマニュアルなどの文書や、実際の運用における呼称は区別せずに「ピストルグリップ」あるいは単に「グリップ」となっている場合が殆どである。
 グリップ部分が銃床とは完全に別離した事で、銃床の強度に関係なく人間工学により配慮した持ち手の形状を決められるようになった。また親指を銃床の下に回せるようになった事で、銃を肩へ引き付けるのみならず前へ押す方向にも力を掛ける易くなり、単に銃の重さを支えるだけでなく、発砲時の反動を肩だけでなくトリガーハンドでも抑え付けられるようになっている。
 第一次世界大戦以降の[[自動小銃]]や[[軽機関銃]]といった自動火器に多く採用されており、第二次世界大戦以降に各国で普及した[[突撃銃]]ではほぼ全てがこの形式を採用した。軍用銃と法的に判別する上での特徴の一つとされ、規制の対象になることもある。
 しかしながら手の位置が安定しないため射撃精度に若干の悪影響があり、射撃精度が優先される用途では避けられることもある。
//鳥撃ちの分野でもすでにストレートグリップは絶滅状態です。大迎角でも結局ピストルグリップの方が引き付けやすいので美的こだわりがない限り選ばれません。
//セミ、フルという呼び分けも市民権を得てはいませんし、呼び分け方がないからと言って新たなやり方を提案するのはこのサイトの趣旨ではありません。

''・スペードグリップ''
 土木作業や農作業で地面を掘るのに用いる「鋤・Spade(スペード)」の持ち手に似た形状をした持ち手。左右の両手で1本ずつ握るために持ち手が2つ並べて付いている事が多い。
 [[重機関銃]]や[[擲弾発射器]]など銃架に載せて運用する火器で採用される事が多い。銃器の重量や反動のほぼ全てを銃架に負担させているため、グリップの役割を目標に向けて銃を指向させる事、トリガーの近くにトリガーハンドを置けるようにする事の2つだけとしている。
 銃床を兼ね備えていない事が殆どであり、脇と肘を閉じたコンパクトな姿勢で構える事が出来るため、ヘリコプターに搭載されるドアガンや装甲戦闘車両のピントルマウントに搭載する機関銃などといった、射撃姿勢に制約のある環境で運用する銃器に向いている。

 また、特別に形式を示す呼称が無いが特異な銃の持ち手としては以下のような例がある。

''・水平タイプ''
 [[ブローニング M2>重機関銃/ブローニング M2]]のM63対空銃架やAGS-17のような、自転車のハンドルのように左右へ水平に伸びた形状の持ち手。
 仰角の変化に関わらず持ち手を握る角度が変わらないため、射撃目標の距離や高度により大きく仰角を変化させて射撃する対空機銃や[[擲弾発射器]]、あるいはその銃架に採用される事がある。
 AGS-17では発砲時の反動による跳ね上がりを押さえつけるため、水平に伸びたグリップを利用して射手が腕立て伏せのような姿勢で持ち手に体重を掛けて運用する事がある。

''・角度可変タイプ''
 [[九二式重機関銃>日立工機 九二式重機関銃]]や[[96式自動てき弾銃>豊和工業 96式自動てき弾銃]]のように持ち手を水平ないしハの字のよう折り下げた任意の角度で握れる形式。

''・チャージングハンドル兼用タイプ''
 ZB-60や85式高射機槍のように、持ち手に[[チャージングハンドル>コッキングハンドル]]の機能を持たせて、持ち手を前後させる事で初弾の装填を行う形式。

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