*銃剣 / Bayonet [#o18b111b]
 銃の先端に装着する刀剣。『バヨネット(Bayonette)』とはフランスのバイヨンヌ地方で生産される小型のナイフを指す言葉だったが、17世紀にこの地方の農民が反乱の際、弾薬の不足を補うため銃の先端にナイフを装着したのが切っ掛けでこのように呼ばれるようになったという。英語圏では『Bayonet(バヨネット、またはバイヨネット)』と呼ばれる。また、銃剣を銃に取り付ける行為は日本語では『着剣』と言う。
 マスケット銃などかつての銃(歩兵銃)は連射ができないため射撃の合間に隙があり、その間に懐に飛び込まれ白兵戦に持ち込まれる危険があった。そのため銃を装備した歩兵には、パイク(槍の一種)など旧来の刀剣類で武装した兵が護衛につき更に[[サイドアーム]]としてサーベルを所持していたが、銃剣はその接近戦での弱点をカバーするものだった。初期の銃剣は銃口に直接差し込んでいたが発射が困難なため、バレルに取り付けるソケット式銃剣が登場しその後、銃口下の着剣装置に装着する形が一般的になって現在に至っている(例外として[[H&K G3>HK G3]]や[[GIAT ファマス]]のように銃口の上に着剣する物や、[[イジェマッシ AN94]]のように銃口の側面に着剣する物もある)。
 歩兵銃が自動化されていない第二次大戦までは、歩兵の接近戦用の武器として欠かせない存在だった。銃剣を用いた戦闘技術は各国の軍隊で独自に体系化されており、日本でも旧日本軍は槍術を元にした『銃剣道』、[[自衛隊]]では『自衛隊銃剣格闘』が訓練に採り入れられている。

 やがて戦場での戦闘距離が短くなり、接近戦に強い[[短機関銃]]や[[突撃銃]]が主流になると銃剣の重要性も徐々に低下していったが、現在でも白兵戦での『最後の切り札』であり、ベトナム戦争や[[フォークランド戦争]]、そしてイラク戦争でも銃剣戦闘の記録がある。また訓練時の士気高揚、閲兵式などでの儀仗的な使用法など、副次的な意味も小さくない。
 視覚的な威圧効果も馬鹿にならず、着剣した銃をただ構えているだけで(実力行使を伴わなくとも)周囲を十分に威嚇・緊張させることができるため、パトロール・警備において着用されるケースも存在する。
//視覚的な威圧効果もばかにならず、例えば海外派遣された自衛隊でも、着剣した銃をただ構えているだけで(実力行使を伴わなくとも)周囲を十分に威嚇・緊張させることができるため、隊員から「一番頼りになった道具は銃剣でした」といったセリフまで飛び出したと言われている(真偽は不明)。
 この様な理由もあって、現在もほとんどの軍の歩兵銃で着剣機能は一般的になっており、[[ブルパップ]]式の突撃銃や、[[H&K G11>HK G11]]の様な未来的な銃にも着剣装置が備えられている。[[AK47>USSR AK47]]の様に一旦は銃剣を廃止しながら、改良型の[[AKM>USSR AKM]]で復活した例もある。
 一方で現在のほとんどの着剣形式は何らかの形でバレルに接触するものが大半を占めるため、着剣時にはバレルに負荷がかかり、使用時には精度の低下やバレルの変形をもたらす可能性がある。

 第二次世界大戦以降は連発式の銃が主力になったことから銃剣突撃が行われる機会は激減しており、米軍では1951年に行われたもの、英国軍では1982年に行われたものを最後に2000年代までは記録に存在しなかった。
 米海兵隊では2004年のイラク侵攻において、挟撃を受けた6名分隊が2時間に及ぶ銃剣戦闘を敢行、30名の敵兵士を打ち倒している。
 米陸軍では2010年から銃剣の使用訓練が中止されているが、その年に開始したIndividual Carbine計画では着剣能力が要求されており、今後完全に廃止するという方針ではないようだ。
 一方、英陸軍では2004年のイラク侵攻において、20名のスコティッシュ・ハイランダー部隊が総勢100名を超えるゲリラ集団を相手に銃剣突撃を敢行、35名の敵兵士を討ち取った。被害は軽傷者3名のみであった。また、2011年にはアフガニスタンで80m先からタリバンの奇襲を受けた一分隊が銃剣突撃で反撃し、これを無傷で撃退している。この分隊のリーダーは当時若干25歳であった。
 これらの英陸軍の突撃に用いられたのは制式小銃である[[L85>エンフィールド L85]]である。一般にブルパップ形式のライフルは、全長を短く設計されているため銃剣突撃には不向きであるとされるが、この定説を覆す形である。

 なお、第二次大戦までは『スパイク型(槍型)』、あるいは切っ先の長い『サーベル型』の銃剣がよく用いられたが、長い物は刺した後で相手から抜くのに手間取ることがあり、現在はアメリカ軍のM4銃剣のような全長30cm前後(刃の長さは15〜20cm)の『ナイフ型』が主流となっている。また戦闘の機会が減る一方で、銃剣にサバイパルナイフ的な様々な機能を持たせる例も増えている。
 例えば[[AKM>USSR AKM]]用の銃剣やアメリカ軍のM9銃剣は、ブレードの峰にノコギリとして使用できるよう[[セレーション]]が設けられ、鞘と組み合わせることで、鉄条網などを切るワイヤーカッターとしても用いることができる。昔の刺突用の銃剣と違って刃も鋭いので、包丁などとしても使用可能だ。

 変わったところでは、近年、[[CZ75 SP01>CZE Cz75]]のオプションとして銃剣が発表され、世間を驚かせた。[[拳銃]]用の銃剣が大々的にリリースされた初めてのケースである。もっとも拳銃も単発式が主流であった時代には刃物が装着されたものは珍しいものではなく、米海軍でも南北戦争付近まで接近戦用の刃物を備えた拳銃を採用していた。

 フィクションでは銃剣の名前通り着剣状態での使用が大半だが、中には漫画『[[力王]]』の雑賀力王や『仮面の忍者 赤影』の卍党下忍の様に銃剣をナイフとして使用する例もある。

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