#author("2023-05-07T20:48:58+09:00","default:user","user") *散弾銃の弾薬 / Shotgun shell [#reae8b57] [[散弾銃]]の[[弾薬]]は散弾を扱う特性から拳銃弾や小銃弾とはかなり異なったものとなっており、英語ではShot Shell(ショットシェル)と呼ばれる((拳銃弾や小銃弾はCase(ケース)))。また散弾銃には[[ライフリング]]がない、[[口径]]が大きいなどの理由から、様々な弾頭を用いることが出来るため、一つの銃でも弾を変える事で用途を使い分ける事が出来る。 特に狩猟や特殊事件においては、様々な獲物や状況にも対応するため、複数の種類の弾薬を携行することが慣習となっている。 //ショットガン自体に全ての獲物や状況に対応する性能があるとは思われないため、表現を変更いたしました。 シェルの長さで最も主流なのは70mm(2-3/4インチ)だが、これも用途や製造メーカーによって65mm(2-1/2インチ)〜89mm(3-1/2インチ)と様々なものがある。 3インチ以上の薬莢は、より多くの散弾や火薬が装填でき、マグナムシェル(Magnum shell)とも呼ばれる。 なお散弾銃の口径については[[ゲージ]]の項参照。 ***ショットシェル独自の構造 [#kf00081c] --''シェルとロンデル'' 現代の一般的なショットシェルではシェル部分の大半がプラスチックで構成されている。これは通常の弾薬と比較して発砲時に発生する圧力が小さいためである。 プライマーのある底部はショットシェルでも高い圧力を受け、またエキストラクターと嚙み合わせる部分のため、変形を避ける為に強度を求めて真鍮や鉄などの金属が用いられる。この底部の金属部は''ロンデル''と呼ばれる。 プラスチック材料が普及するまでのシェルには厚紙が用いられていたが、湿気による悪影響を受けやすいため軍など一部ではシェルからロンデルまでをワンピースとして全て真鍮で作られたショットシェルが用いられていた。 現代でも愛好家向けに紙製シェルのショットシェルや、シェルからロンデルまで全て真鍮で作られたショットシェルが製造販売されている他、中国の軍や武装警察が運用している[[QBS-09>散弾銃/PRC QBS-09]]には全てアルミ合金で作られたショットシェルの弾薬が供給されている。 --''ワッズ(ワッド)'' 弾丸と発射薬の間に挟まり、弾丸を押し出すもの。 散弾を用いる都合上、弾丸だけでは燃焼ガスを封じ込めることができない。このため燃焼ガスを逃がさないようガスシールとなるワッズが必要となる。 初期のワッズはフェルトなどを単純に詰めただけであったが、現代のワッズはプラスチック製かつ弾丸を包み込む椀状になっており、''ワッズカップ''と呼ばれる。カップ状になっているのは鉛の弾丸の接触による銃身の汚損を防ぐためである。カップ部分には切れ込みがあり、銃身から射出された後は空気抵抗により切り込みからカップが広がり、弾の散らばりに影響が出ないようになっている。またワッズカップには伸び縮みする「脚」の部分があり、火薬の燃焼圧力のショック・熱を緩和する目的と、粒数・粒径が異なる弾丸を一定サイズのシェルに隙間なく収める目的がある。急激に圧力や熱が加わると弾丸同士がぶつかり合い変形したり固着したりして弾道やパターン(散布界)に影響が出るためである。 --''クリンプ'' ショットシェル先端の封印。 弾頭がケースの蓋代わりになる通常の弾薬と異なり、バラバラの散弾がこぼれないようショットシェルでは先端を閉じる必要がある。 「スタークリンプ」と呼ばれるシェルを機械で折りたたんで蓋をする方式が一般的。なお、スタークリンプでは蓋をしたとき口がカットしたピザのような星型に見える。「ロールクリンプ」はシェル口に沿ってシェルを内側に折り返す(ロールする)方法である。先端が開いていても良いスラグ弾(一粒弾)で使用される他、シェルとは別体の蓋を用いて散弾でも使用される場合がある。 ***一般的な実包 [#v5d7c703] 狩猟などで一般的に使用される実包。 |銃弾名|説明|h |バードショット(Birdshot)|鳥狩りに使われる小ペレット(pellet)弾。&br;日本の散弾規格で言うと12〜2,BBのサイズ。装弾量数十〜数百。弾の密度が高いため敏捷な獲物に向く。| //どちらかといえば拡散が広いのは事実ですが、範囲自体はチョークで変えるものであり密度の方が要点であるため変更。 |バックショット(Buckshot)|鹿狩り・対人用に使われる大ペレット弾。&br;日本の散弾規格で言うと4〜0,00,000のサイズ。装弾量十数粒〜数粒。| |スラッグ(スラグ)弾(Slugshot)|熊撃ち用や散弾銃での遠距離射撃に使われる単弾(一粒弾)。&br;[[ライフル>小銃]]のように弾道を安定させるために、回転する鞘(サボット)の中にスラッグ弾を収めたもの(サボテッドスラッグ)が主流。| #br ***特殊な実包 [#jeadbea5] 法執行機関などで使用される特殊用途の実包。 |銃弾名|説明|h |フレシェット(Flechette)|ペレットの代わりにフレシェット(小型のダーツ状の弾)を打ち出す弾。&br();貫通力・初速共に高いが、サボテッドスラッグに比すると、弾道の安定性には欠ける。スラッグのような一本だけのタイプ、対[[防弾チョッキ>ボディアーマー]]用の複数の小型フレシェットを装填したものなどが存在する。| |ガス弾(Gas)|暴動鎮圧部隊によって使用される[[殺傷能力の低い弾>非致死性兵器]]。&br;ペッパーガスや催涙ガスが多い。| |ビーンバッグ弾(Bean bag round)|ゴムや鉛のペレットなど小さな玉で満たされたナイロンバッグを打ち出す。&br;殺傷能力が低いので、野生生物保護団体や暴徒鎮圧で使用する。| |染色弾(Paint round)|暴徒鎮圧などで用いられる、染色剤を撃ち出す弾。&br;簡単には洗い落とせない染料が使用されており、暴動に参加していた人物がその場から逃走したとしても特定しやすくなっている。| |岩塩弾(Rock salt shell)|暴徒鎮圧などで用いられる、岩塩粒の詰まった弾。&br();貫通力がきわめて低く環境にも優しい。鳥や小型獣であれば衝撃で殺傷・撃退可能なので農園の害獣駆除にも用いられる| |水包弾(Water filled shell)|水を充填した弾。&br();爆発物除去の現場において、爆発物周辺の障害物・もしくは爆発物そのものを、遠隔から移動・除去する際に、不要な事態を招かないよう用いられる。| |ブリーチング弾(Breaching round)|ドアなどの障害物破砕用として[[SWAT]]等によって使われるスラグ弾の一種。&br();金属を粉末化して固めたもので、初回の衝突衝撃で弾体が粉末状に砕け散ることから安全に錠だけを破壊し、内部の人質に二次被害をもたらさずに済む((二次被害を避ける目的という点では、『[[フランジブル弾]]』と呼ばれているものとほぼ同等。))| |フレア(Flare)|安全や救助目的に使われる照明弾。| |バードボム(Bird bombs)|鳥を追い払うために空港などで使われる爆竹弾。| |フラッシュバン(Flash Bang)|暴徒鎮圧やホームディフェンスを目的として銃口から閃光と大音響を発生させる弾| |テイザーXREP(Taser XREP)|電源内蔵・投射式の[[スタンガン]]。| |フラグ12(Frag12)|[[AA12>MPS AA-12]]用に開発された小型成形炸薬弾。&br();ロケット弾のように発射後展開する尾翼によって安定した軌道を確保する。通常のショットガンでも使用可能だが、サイズの関係で威力が限定されるため、大量に連射可能なAA12以外では実用性は低い。| #br ***その他のマイナーな実包 [#z3fee881] 主に娯楽用途で販売されている変わった設計の実包。 |銃弾名|説明|h |ボーロー弾(Bolo shell)|2・3個のスラッグ弾をワイヤーで繋いだ実包。&br;ほとんど趣味の域を出ない実験的な製品であるが、商品によるが次のような効果があるとされる。&br;''・ワイヤーによりスラッグ弾が大きく拡散しないため、高い集弾性と適度な拡散性を実現''&br;''・スラッグ間に張られたワイヤーが大きな損傷面を作り大きなダメージを与える''&br;&br;しかし散弾実包は強力なためワイヤー自体が切れてしまう事も多く、有効ではない。&br;ゾンビ映画などでは''スラッグ間に張られた長大なワイヤーが人体を両断する''といった誇張されたギミックに使用されることがある。| |火炎放射(flamethrower)|アルミやジルコニウムなどの発火性粉末を着火して発砲する娯楽用の実包。&br;成分的には花火などに近いもので、危険な爆発物であるため規制対象となっている地域が多い。&br;マグネシウムのペレットを使用するドラゴンブレス(Dragon's breath)と呼ばれる12ゲージ散弾の場合、燃焼に酸素を必要としないため、水中や土中に放り込んでも燃え続けることから、&br;一般的な酸素供給を断つ類の消火手段では鎮火できず、燃え尽きるのを待つしかない。| |ミニシェル(Mini shell)|アメリカのアギーラ(Aguila)社から供給されている小型実包。&br;一般的な2 3/4インチ長に対して1 3/4インチとほぼ半分の長さのため、[[チューブラーマガジン>マガジン]]に倍の量を装填できるという特徴がある。&br;エネルギーや散弾量も約半分になるが、一つのショットガンで低威力の弾が扱えるという利点もあり汎用性が高い。&br;しかし、銃の種類によっては給弾信頼性は低い。&br;また、その寸法上ボックスマガジンを使用する散弾銃では使用不可能である。| ***日本の散弾規格 [#oa9dccd5] |号数|直径(mm)|一粒の重さ(g)|対象|h |X|8.75|3.750|シカ、イノシシ| |SSSG|7.75|2.600|~| |SSG|7.00|1.960|~| |SG|6.50|1.490|~| |AAA|6.00|1.280|キツネ、タヌキ、ガンの遠射| |AA|5.50|0.950|~| |A|5.00|0.750|~| |BBB|4.75|0.590|~| |BB|4.50|0.520|キツネ、タヌキ、ガン| |B|4.25|0.460|~| |1|4.00|0.370|ガン、カモの遠射| |2|3.75|0.320|~| |3|3.50|0.250|カモ、ノウサギ、キジ、ヤマドリの遠射| |4|3.25|0.200|~| |5|3.00|0.150|カラス、キジ、ノウサギ| |6|2.75|0.110|~| |7|2.50|0.090|ノウサギの近射| |8|2.25|0.070|~| |9|2.00|0.050|タシギ、ウズラ、リス| |10|1.75|0.030|~| |11|1.50|0.021|ムクドリ、ヒヨドリ、スズメ| |12|1.25|0.013|~| ---- #pcomment