#author("2024-01-09T09:36:22+09:00","default:user","user") #author("2024-01-10T10:03:16+09:00","default:user","user") *手榴弾 / Hand grenade [#w1b2f723] 手榴弾((「てりゅうだん」ないし「しゅりゅうだん」と読まれる。読み方としては「しゅりゅうだん」が一般的であるが、日本の過去の軍隊や現在の[[自衛隊]]では、騒音下などでの聞き取りやすさを重視するため「てりゅうだん」と呼称するのが通例である。))とは、手で投げる小型の爆弾である。grenade(グレネード)の名称は「榴弾」の訳語のとおり、果物の石榴(ざくろ/pomegranate)に由来する。炸薬や金属片を球殻内に充填した構造が、種を含んだ多量の小さな果肉を内包する石榴の実を連想させることから、こう呼ばれるようになったという。 中国など東洋では10世紀頃から「震天雷」などが使用されていたとの記録があり、西洋で登場したのはそれより遅い15世紀後半だった。日本では戦国時代に焙烙火矢と呼ばれる陶器製の手榴弾のようなものが使用されていた。 最初期のものは、中空の球体に火薬を詰めたもので、投げるさい火種で導火線に着火するもの((いわゆるダイナマイトや、漫画やゲーム「ボンバーマン」に出てくる爆弾を想像するとわかりやすい。))だった。歩兵全員に支給されることは無く、専門の訓練を受けた擲弾兵と呼ばれる兵士が使用していた。18世紀には時限信管が登場しているが、導火線式のものは即製で作り易いことから、日露戦争でも布袋や空き缶を使ったものが使用されている。 また、直接手で投げる他に紐状の投石器を使って投げることもあった。アメリカ南北戦争ではケチューム手榴弾と呼ばれる投げやすいようダーツ型にしたものが作られている。 また、直接手で投げるよりも遠くへ飛ばすべく、紐状の投石器が使われることもあった。アメリカ南北戦争ではケチューム手榴弾と呼ばれる投げやすいようダーツ型にしたものが作られている。こうした射程延伸の工夫は、のちに[[擲弾発射器]]として発展していくことになる。 第一次世界大戦では、比較的扱い易いように[[安全装置]]を取り付けた手榴弾が登場し、これがほぼ現代の手榴弾の基本形となって、以後さまざまな形態のものが各国で試された。 現代では発射装置を用いない安価な飛び道具として歩兵の基本的装備となっている。対象やその周辺に直接投げつける以外にも、車両や塹壕、トーチカなどの建物に肉迫して内部に投げ込んだり、水中に落として潜水兵相手に使用することもある。トリップワイヤーなどの発火用の仕掛けを介してブービートラップとして使用されることもある。 大まかに爆発手榴弾(エクスプローシブ・グレネード)、化学手榴弾(ケミカル・グレネード)、ガス手榴弾(ガス・グレネード)の三種類に大別される。催涙ガス弾や発煙弾などの化学・ガス手榴弾は、[[低致死性もしくは非殺傷>非致死性兵器]]手榴弾とも呼ばれるもので、暴徒鎮圧や逃走用の煙幕、信号用に使用される。 また、爆発手榴弾には下記の2種がある。 -1.爆発の衝撃のみで対象を殺傷する「衝撃手榴弾(コンカッション)」 -2.爆発の衝撃と、それによって飛散する破片で対象を殺傷する「破片手榴弾(フラグメンテーション)」 爆発手榴弾は、その加害半径と投擲距離から「攻撃手榴弾(オフェンシブ・グレネード)」と「防御手榴弾(ディフェンシブ・グレネード)」の二種にも大別される。「攻撃手榴弾」は加害半径が比較的狭く、使用者が別途攻撃を行いながらの投擲が行い易いものを差し、「防御手榴弾」は、加害半径が広く投擲距離をしばしば上回り、使用者は遮蔽物ごしの防御を必須とすることからこう呼ばれる。 爆轟効果のみで加害半径が狭い衝撃手榴弾は、基本的に攻撃手榴弾として分類されるが、破片効果により加害半径が比較的広い破片手榴弾は、一般に防御手榴弾とされる。破片手榴弾の破片は非常に強力なもので、その初速はライフル弾などを遥かに超えマッハ6(約2km/s)以上に達する。破片一つ一つの質量はごく小さいため厚い物体を貫通することは無いが、加害半径内であれば[[ヘルメット]]や[[ソフトアーマー>ボディアーマー]]などの薄い遮蔽物はたやすく貫通してしまう程である。 メディア作品ではしばしば爆発手榴弾によって対象が炎上する描写が見られるが、こういった現象は実際にはアメリカのM34焼夷手榴弾など専用の焼夷手榴弾を用いなければ起こるものではない。ただし、現在主流の閃光弾は至近距離では非常に強い火炎を一瞬生じるもので、これにより「無傷」で無力化される筈の犯罪者や、その場に居合わせただけの周囲の人間が大火傷を負い、法執行機関が提訴される事例も少なからず発生している。 敵への殺傷を目的としない特殊な手榴弾もある。最たる例が煙幕生成を目的とした発煙手榴弾で、目くらましや信号などに利用される。また閃光手榴弾(スタングレネード、フラッシュバン)のような標的を一時的に無力化することを目的とした[[非致死性兵器]]もある。 以下著名なものを記載する。 ***第二次世界大戦以前〜終戦まで [#o1d518c9] |モデル|種類|製造国|備考|h |F1手榴弾|破片手榴弾|フランス|下記Mk2手榴弾の元となった| |P1型手榴弾|破片手榴弾|フランス|洋梨や電球のような形状| |ミルズ手榴弾|破片手榴弾|イギリス|No.5/No.23/No.36の三種類| |No.84ギャモン(ごまかし)手榴弾|衝撃手榴弾|イギリス|プラスチック爆弾を布袋に入れた即製手榴弾| |[[Mk2手榴弾>US MkII手榴弾]]|破片手榴弾|アメリカ|通称"パイナップル"| |T-13"ビーノ"手榴弾|破壊工作用手榴弾|アメリカ|OSS用にコダック社が開発した手榴弾で名前通りグリーンピースのような形をしている| |[[M24柄付手榴弾>DE M24柄付手榴弾]]|攻撃・防御両用手榴弾|ドイツ|柄付手榴弾&br;通称"ポテトマッシャー"| |[[M39卵型手榴弾>DE M39卵型手榴弾]]|攻撃手榴弾|ドイツ|−| |[[九七式手榴弾>陸軍造兵廠 九七式手榴弾]]|破片手榴弾|日本|−| |[[RGD-33柄付手榴弾>USSR RGD-33柄付手榴弾]]|攻撃・防御両用手榴弾|[[ソ連>USSR]]|柄付手榴弾| |F1手榴弾|破片手榴弾|ソ連|−| ***第二次世界大戦後 [#bc41b1e2] |モデル|種類|製造国|備考|h |[[M26/M61破片手榴弾>US M61破片手榴弾]]|破片手榴弾|アメリカ|通称"レモン"| |[[M67破片手榴弾>US M67破片手榴弾]]|破片手榴弾|アメリカ|通称"アップル"あるいは"ベースボール"| |[[MK3手榴弾>US MK3手榴弾]]|攻撃手榴弾|アメリカ|−| |[[M84閃光手榴弾>US M84スタングレネード]]|低致死性手榴弾|アメリカ|[[非致死性兵器]]| |[[M18発煙手榴弾>US M18発煙手榴弾]]|非殺傷手榴弾|アメリカ|発煙弾| |[[DM51手榴弾>DE DM51手榴弾]]|攻撃・防御両用手榴弾|ドイツ|−| |RKG-3対戦車手榴弾|攻撃手榴弾|ソ連|柄付手榴弾| |[[RGD-5破片手榴弾>USSR RGD-5破片手榴弾]]|破片手榴弾|ソ連&br;ロシア|−| |[[RGN破片手榴弾&br;RGO破片手榴弾>USSR RGN/RGO破片手榴弾]]|破片手榴弾|ソ連&br;ロシア|−| |G60スタングレネード|低致死性手榴弾|イギリス|[[非致死性兵器]]| 余談になるが、防寒具として定番のトレンチコートは軍用だったなごりとしてDリングという手榴弾を括り付ける紐がついている。 ---- #pcomment