1983年*1に、スウェーデンのFFV ノーマ(ノルマ)社で開発された自動拳銃用実包。9mmパラベラム弾と.45ACP弾の中間、約1センチ*2の直径を持ち、「9mmパラベラム弾よりも威力があり、.45ACP弾よりも扱いやすい、理想のカートリッジ」との売り込みでデビューした。
10mmオート弾は、もともとトーマスF.ドーナウスとマイケルW.ディクソンが設立したドーナウス&ディクソン(D&D)社の要請で、新型自動拳銃・ブレンテンのために開発されたカートリッジである。開発に当たってD&Dは、コンバットシューティングの提唱者であるジェフ・クーパーに助言を仰ぎ、奇しくも同様の構想を温めていたクーパーのアイデアも取り込む形で完成した。
鳴り物入りでデビューした10mmオートだったが、肝心のブレンテンがマガジンの生産トラブルなどで販売が伸びず、道連れになる格好で10mmオート弾も出鼻をくじかれた。その後、S&WのM610リボルバーやオートマチックのM1076。デルタエリートやオメガなど、1911をベースとした10mm口径の銃もちらほらと登場し始めるが、デルタエリートやオメガは品質面に問題があり、作動不良を起こすことも多かった。
10mmオート弾自体も、実際に使用してみると威力過大で、「9mmよりも銃が大型化し、.45ACPなみに反動が強く扱いづらい」と、当初の目論見とは裏腹にデメリットばかり目立つカートリッジとなってしまった。発射の度に銃に高い負荷をかけてしまうため、他の口径からのコンバート(改設計)も難しかった。
ジェフ・クーパーの肝煎りとあって一部に熱心な支持者も得たものの、長い間ノーマ社以外から実包が供給されなかったこともあり、民間市場になかなか浸透しないまま、10mmオートは暫く「ニッチ(すき間)・カートリッジ」としてくすぶり続けることになる。
公的機関では、1988年、FBIが「FBIロード」と呼ばれる10mmオートの減装弾を採用する。これは1986年のマイアミ銃撃事件をきっかけに、FBIが9mmパラベラム弾の威力に不信感を抱いたためだ。
しかし「炸薬を減らすのであれば、薬莢も小さくした方が、弾薬も銃のサイズもよりコンパクトにまとめられる」として、S&W社が新たに薬莢を短縮した.40S&W(10mmショート)弾を提案する。9mmパラベラム弾にサイズも近く威力もそこそこあり、9mm仕様の銃からより簡単にコンバートできるとあって、.40S&Wは、本来10mmオートが目指したニーズに見事マッチしてしまい、より広く支持を集めるようになった。
その後、テロリストなどの武装犯がボディアーマーを着用するケースが増えたことで、H&K MP5?などの短機関銃に、一時期10mmオート仕様がラインナップされたが、これも9mmパラベラムの強装弾や、ライフル弾を使用するカービンに取って代わられ、公的機関からも10mmオートは次第に姿を消していった。
こうして対人用としては不成功に終わった10mmオートだったが、捨てる神あれば拾う神あり。今度は対野生動物(ハンティング)用として支持を集め始める。人間相手では過大、あるいは中途半端だった威力が、中・大型の野生動物相手となると、.45ACPや.357マグナム弾よりも強力で頼もしく、.44マグナム弾には威力で劣るものの、大型リボルバー用の.44マグナムよりも携帯性や装弾数で遙かに有利と、むしろメリットの方が大きくなった。
このため、ハンターのバックアップ用として需要が伸び始めたほか、一時は駆逐された法執行機関でも、アラスカ州警察やノルウェーの国境警備隊が野生動物(特にヘラジカやホッキョクグマ)対策の一環として採用を決定し、復活の兆しを見せている。
とはいえ、拳銃用実包としては未だに「ニッチ・カートリッジ」の域を出ず、一発当たりの単価がまだまだ高いのが難点とされる。
弾丸直径 | 弾薬全長 /薬莢全長 | リム形状 | 弾頭重量 | 銃口初速 | 初活力 | 有効射程 | 代表的な銃 |
10.16mm(0.400in) | 32.00mm (1.260in) /25.20mm(0.992in) | リムレス | 135gr(8.7g) | 1600ft/s | 767ft-lbs | − | D&D ブレンテン コルト デルタエリート AMT ジャベリナ スプリングフィールド オメガ STI EDGE グロック 20 H&K MP5/10? |
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