1905年に、銃器設計家の、ジョン・ブローニングが設計した、大口径の自動拳銃用実包。ACPとは「Automatic Colt Pistol」の略。英語では「ポイント・フォーティ・ファイブ(point forty-five)」などと称される。
.45ACP開発のきっかけは、19世紀末に勃発した米比戦争だった。19世紀末から20世紀初頭、アメリカ軍は他国同様.38口径(.38ロングコルト)の拳銃を採用していたが、1898年、フィリピンの原住民族・モロ族の蜂起の際に威力不足が露呈した。モロ族の戦士達は、.38口径弾を受けても倒れることなく戦い続け、アメリカ軍の兵士達に衝撃を与えた。戦争という極限状態と薬物で、極度の興奮状態にあったモロ族は、被弾しても痛みをほとんど感じていなかったのだ。結果、事件後には旧採用銃であるコルト SAAを引っ張り出し、再採用する事態にまで至った。
この時の戦訓から、アメリカ陸軍はストッピングパワーに優れた新たな弾薬と拳銃を求めるようになる。この要求に応えたのがコルト社とブローニングで、リボルバー用の.45ロングコルト弾を、自動拳銃用に短縮するとともにリムレス化した「.45ACP」弾を考案。これを使用する自動拳銃も設計し、1911年に『M1911』としてアメリカ陸軍に制式採用。これが現在まで続く、『M1911』と、.45ACPの歴史の始まりである。
このような歴史的経緯もあって、以降もアメリカはストッピングパワーの高い.45ACPに対して盲目的とも云える信仰を持ち続けており、アメリカ国内では現在も根強い支持を保っている。近年では、AWBや各州法などでマガジンの装弾数が制限された関係で、「同じ弾数ならより大きな威力の弾薬を」と、.45ACPが再評価されることにもなった。
反面、反動が大きく扱いにくい一面もあり、ヨーロッパなどではさほど支持・使用されていない。第二次大戦後、日本の自衛隊や警察にも、コルト・ガバメントとともに大量に供給されたが、やはり小柄な日本人には不向きで、以後は.45ACP仕様の拳銃は採用されていない。
自慢のストッピングパワーにしても多分に「盲信」されている部分がある。複数の.45ACP弾(FMJ)を受けた男が、4時間後に自ら車を運転して病院を受診した、あるいは.45ACPで撃たれた犯罪者が3日後まで生存していた上、発見された際に激しく抵抗したといったエピソードもある。
その一方、開発当初は意識されていなかったが、弾頭重量とエネルギーが大きい一方で、弾速が比較的遅いため、サプレッサーとの相性が良いという大きな長所がある。9mmパラベラム弾などでは、そのままでは弾頭が音速を超えて衝撃波を発生してしまうため、完全な減音効果を得るためには減装弾を使用しなければならないが、最初から亜音速の.45ACPでは減装弾を使用する必要がない。
このため、.45ACPが普及していないヨーロッパでも、特殊部隊などを主に.45ACP仕様の銃火器を限定的に採用する例も見られる。
.45ACPを現在主流の9x19mmや.40S&Wと比べた場合、反動が大きくコントロールが難しい、サイズが大きいため装弾数が低下する、複列弾倉化が難しいなど、難点も少なくない。しかし後発の10mmオート、.357SIGなどといった高エネルギー弾の登場に存在を脅かされつつも、.45ACP自身も技術の改良によって同様に性能を上げつづけている。そのため長年の実績と、数多くのメーカから多彩なカスタムパーツや実包が供給されている.45ACPの牙城を崩すには至っていない。
弾丸直径 | 弾丸全長 /薬莢全長 | リム形状 | 弾頭重量 | 銃口初速 | 初活力 | 有効射程 | 代表的な銃 |
11.5mm(0.451in) | 32.0mm(1.260 in) /22.8mm(0.898in) | リムレス | 230gr(15g) | 900ft/s | 414ft-lbs | − | コルト ガバメント H&K Mk23 US M1917 H&K UMP AAI M10 |
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