*傭兵たちの挽歌
RIGHT:1978年、日本、ハードボイルド・アクション小説
RIGHT:著：大藪春彦
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&size(15){''・ストーリー''};
かつて、[[アメリカ陸軍特殊部隊>グリーンベレー]]の精鋭としてベトナム戦争で数々の勲功を挙げた生粋の戦士・片山健一。モザンビークでの秘密作戦の途上で出会った美しい女性・影山晶子と結ばれた片山は、軍を除隊し、アフリカで狩猟ガイドとしての新たな人生をスタートさせた。二人の可愛らしい子どもにも恵まれ、片山はこの上ない幸せの中にいた。
しかし、平和な暮らしは長く続かなかった。ある年のクリスマス・イブ、家族と共にパリの高級デパート・フォルチンで買い物をしていた片山は、未曾有の無差別爆弾テロに巻き込まれたのである！――延々と続く死者のリストの中には、片山の妻子の名も含まれていた。どす黒い狂気に駆られ、テロの実行犯を追い求める片山だったが、敵の姿すらつかめぬままに時は過ぎ、失意のうちに彼は隠遁してしまう。
しかし、そんな片山に思いがけず転機が訪れる。謎めいたテロ組織・世界赤軍極東部隊を追う日本の特務機関が、片山の優れた戦士としての才能に目をつけたのだ。機関の指示で、アフリカの小国・ガメリアに飛んだ片山は、軍隊仕込みの荒っぽいやり方で世界赤軍極東部隊を追い詰めていく。
そして、その捜索行の過程で、片山は恐ろしい事実を知ることになる。世界赤軍極東部隊の背後には巨大な国際テロ組織『赤い軍団』が控えていたのだ。『赤い軍団』は世界各地で様々なテロ組織の名を騙り、破壊活動を繰り広げていた。そして、彼らの魔の手にかかり、廃墟と化した目標の中に、あのフォルチン・デパートも含まれていた……！
片山は決意する。もはやこの身がどうなろうと構わない。なにがなんでも『赤い軍団』の喉元に食らいつき、その息の根を止めてやる――。
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CENTER:&size(15){''孤独な戦士・片山健一に明日という日はない……。''};
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&size(15){''・解説''};
文芸雑誌『野生時代』1978年10月号に一挙掲載された、大藪春彦の《復讐もの》路線の一つの到達点とでも言うべき壮絶なバイオレンス・アクション巨編。
ストーリーは「いつもの大藪春彦」だが、灼熱のアフリカからヨーロッパ、そして北米の原野で繰り広げられる殺戮戦の凄まじさは圧巻の一言。銃火器のみならず、武装ヘリコプターやミサイルといった近代兵器までもが繰り出される白熱の戦闘シーンは本作品の見所のひとつだ。また、大藪名物とでも言うべき拷問シーンもその凶悪さを格段に増し、目を覆いたくなるような凄惨な人体破壊描写のオンパレードである。もちろん、「いつもの大藪春彦」なので、あの方も手抜かりない（"あの方"の意味は、……大藪ファンならばお分かりだろう）。
しかし、何といってもこの作品で一番印象に残るものといえば、大藪小説史上空前の規模を誇る巨大テロ組織『赤い軍団』だろう。世界各国にテロ・ネットワークを張り巡らせ、世界中で発生するテロの『元締め』として暗躍するこの怪物の最終目的の途方もなさには唖然とするほかないが、そんな恐るべきモンスターも大藪ヒーローの前にはカタなし……という御都合主義的設定に異議を唱えるのは、「なぜ[[セガール>沈黙シリーズ]]は無敵なのか」とセガールファンに問うにも等しい無意味な行為である。笑って不問に付していただきたい。
また、時折挿入される片山と家族との幸せな日々の回想シーンは、ベタではあるが思いがけず読者の涙を誘うものがあり、大藪春彦が意外にもメロドラマの書ける作家であることを認識させられる作品でもある（余談ながら、初期の傑作『血の罠』も優れたメロドラマである。できれば一読することをお勧めする）。
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&size(15){''・プッシュ・ロッディングについて''};
物語の後半、危機的な状況に追い詰められた片山が用いる独特の射撃テクニックが、プッシュ・ロッディングである。
これはコルトガバメント系列の自動拳銃のほとんどに見られる固有の特徴を利用して行われる緊急装填術である。具体的に説明すると、コルトの銃口下部、バレル・プッシングに覆われたあたりを何か硬いもの（机の角、石ころなど何でもよい）に押しつけ、スライドを後退させて装填するというものだ。[[セガール>沈黙シリーズ]]映画をよく観られている方は、セガールが愛用のコルトの銃口下部に指を押し当てて、スライドを後退させる芸当を見たことがあると思うが、あれも変則的なプッシュ・ロッディングである（ただし、コルトのリコイルスプリングはかなり強力なので、指で押し込む程度で後退するかは疑問だが……）。米軍在籍時代からコルトガバメントに親しみ、その性能を知り尽くした片山だからこそとっさになしえた技であり、またこういうニクい演出を思いつく大藪氏も、なかなかの巧者である。
ちなみに、作中で片山がコルトをキャリーするために用いる革細工メーカー・ローレンス製の特製ホルスターの前側には鉄板が内蔵され、とっさにプッシュ・ロッディングができるように工夫されていた。
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|使用者|銃器名|備考|h
|片山 健一|[[コルト ガバメント]]|M1911A1&br;射撃競技にも使える高精度カスタムモデル|
|~|[[S&W M49>SW M49]]|日本で所持&br;左のブーツに隠し持つ|
|~|[[ウージー>短機関銃/IMI ウージー]]|[[フォールディングストック>ストック]]装備&br;40連弾倉に38発装填|
|~|[[ウィンチェスター M70>小銃/ウィンチェスター M70]]|7ミリ・レミントン・マグナム仕様&br;ウィーヴァーV7[[スコープ]]装備&br;[[フリーフローティングバレル]]|
|~|[[リー・エンフィールド MkIII>小銃/RSAF リー・エンフィールド]]|マットの私物&br;ニュージーランド時代に使用|
|~|シュルツ・アンド・ラーセン ハンティングライフル|7ミリ×61弾使用&br;ニュージーランド時代に使用|
|~|[[M16>コルト AR15]]カービン|[[XM177>コルト XM177]]?&br;ベトナム時代に使用|
|~|XM174 [[グレネードランチャー>擲弾発射器]]|自動装填式&br;40ミリ口径、12連弾倉&br;ベトナム時代に使用|
|~|[[モーゼル ハンティングライフル >マウザー Kar98K]]|.458ウィンチェスターマグナム使用&br;狩猟ガイド時代に使用|
|~|[[スプリングフィールド M14]]|直銃床のE2タイプ&br;モザンビークで使用|
|~|[[アーマライト AR10]]|モザンビークで使用|
|~|[[M16A1>コルト AR15]]|トルノから奪う|
|~|[[レミントン M700]]|モデルBDL&br;8ミリ・レミントン・マグナム仕様&br;ウィーヴァーV7[[スコープ]]装備|
|核ジャック犯|[[ウージー>短機関銃/IMI ウージー]]|-|
|~|[[ガリル>IMI ガリル]]|-|
|マット・マクドゥーガル|[[リー・エンフィールド MkIII>小銃/RSAF リー・エンフィールド]]|軍放出品|
|北ベトナム軍兵士|[[USSR AK47]]|-|
|~|[[ブルーノ機関銃>ブルーノ ZB26]]|-|
|グエン・チュー|[[S&W チーフス・スペッシャル>SW M36]]|-|
|アルバート・リー|[[マウザー HSc]]|-|
|ルサンゴ・セントラル・エロス・センターのガードマン|[[ワルサー PPK>ワルサー PP]]|口径7.65ミリモデル|
|フランシスコ・エルトリル|[[ワルサー P38]]|-|
|ジム・ゴールドリッチ|ジェフリー ダブルライフル|.600ニトロ・エクスプレス使用|
|~|.505ギッブス・マグナム ボルトアクションライフル|[[エングレーブ]]モデル|
|ガメリア軍兵士|[[マウザー Kar98K]]|-|
|~|[[ワルサー P38]]|-|
|(ルサンゴ・シー・サーヴィス ビル屋上)|ヴィッカース重機関銃|水冷式|
|三田村|[[M16>コルト AR15]]|-|
|~|[[FN ハイパワー]]|-|
|(武装ヘリ)|[[サコー M60]]|-|
|~|[[GE M61]]|-|
|(検問所のランドクルーザー)|[[サコー M60]]|-|
|検問所のガメリア軍兵士|[[スプリングフィールド M1903]]|A3モデル|
|セイヤッド|[[水平二連散弾銃>二連式散弾銃]]|ハンマー露出式&br;黒色火薬装弾|
|谷崎正一|[[サコー M60]]|-|
|海兵隊員|[[スプリングフィールド M14]]|直銃床のE2タイプ&br;モザンビークで使用|
|ウンベルト・ラザーニの屋敷の門番|ベレッタ自動拳銃|[[M1951>ベレッタ M1951]]?&br;9ミリ口径|
|ジャコモ・リッツォ|[[ベレッタ M1935>ベレッタ M1934]]|口径7.65ミリモデル|
|パオロ・トルノ|[[M16A1>コルト AR15]]|-|
|カーレン・リヒテル|[[ブラウニング.380>FN M1910]]|-|
|~|[[マウザー HSc]]|ウェルナーのものを使用|
|ハンス・ウェルナー|[[マウザー HSc]]|-|
|赤い軍団フランクフルト支部の戦闘部隊員|[[H&K G3>HK G3]]|A3モデル|
|~|[[サコー M60]]|-|
|クラウス・ベルネッケル|[[ブラウニング.380>FN M1910]]|-|
|クロード|[[FN ハイパワー]]|-|
|NYPD SWAT狙撃手|[[M16>コルト AR15]]|-|
|FBI捜査官|[[S&W M29>SW M29]]|-|
|ブライアン・マーフィ("コヨーテ")|[[S&W M29>SW M29]]|-|
|マーフィの手下|S&W .41マグナム|S&W M57かM58|
|ドン・マクレーガー|S&W .357マグナム|モデル名不明|
|ジム・サンダース|S&W 38口径|モデル名不明|
|チャーリー・ストーンヘッド|ハーター ボルトアクションライフル|.246ウィンチェスター・マグナム使用|
|エレーン・ブライトン|[[ウージー>短機関銃/IMI ウージー]]|片山のもの&br;発砲なし|
|~|ハーター ボルトアクションライフル|ストーンヘッドのもの&br;発砲なし|
|赤い軍団の偵察員|[[スプリングフィールド M14]]|狙撃用マッチ・グレードモデル|
|(赤い軍団本部の武装ヘリ)|[[GE M134]]|-|
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