*二連式散弾銃 / Double-barreled shotgun
 二連式散弾銃は、銃の連発化の為に考え出された中で、最も歴史の古い設計の[[散弾銃]]である。
 水平二連式(Side by side)とよりモダンな上下二連式(Over & under)のふたつがあり、文字通り左右か上下に銃身が2本並んでいるのが特徴。現在作られるニ連式散弾銃のほとんどは、上下二連式である。[[弾薬>散弾銃の弾薬]]の装填と排莢は、中折れ式(Break action)としたものが一般的で、狩猟用やスポーツ射撃用として、現在もポピュラーな銃器である。
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*二連式散弾銃 / Double-barreled shotgun [#e194784a]
 二連式散弾銃は、最も古くシンプルな連発機構である多銃身設計の[[散弾銃]]である。狩猟用やクレー射撃などのスポーツ射撃用として、ポピュラーな銃器である。
 18世紀後半に登場した水平二連式(Side by side, SxS)と20世紀前半に登場したよりモダンな上下二連式(Over & under, O/U)の二種類があり、文字通り左右か上下に銃身が2本並んでいるのが特徴である。 
 [[弾薬>散弾銃の弾薬]]の装填と排莢は、中折れ式(Break action)と呼ばれる方式が一般的で、名前の通り銃身を根元で折って開くことで排莢・[[コッキング]]を行うシンプルかつ洗練された設計である。折り開く際は銃身根元のトップレバーを動かすことで固定がリリースされる仕組みだ。
 旧来の水平二連式は、銃口から炸薬と弾を装填する前装式かつ撃発機構を外装式のハンマーとして左右に配置していた時代には合理的な設計だった。しかし、後述のボックスロックが発明され、薬莢式弾薬の時代となり、上下二連式が登場すると、水平配置の銃身では発射のさい照準が左右にブレやすく射手には熟練が必要なことが欠点としてクローズアップされるようになった。こうした理由から、現代のスポーツ用二連式散弾銃は大抵上下二連式となっている。
 二連式散弾銃に用いられている撃発機構は「ボックスロック」と呼ばれるものの一種で、それ以前の外装式のものに対して、内装式とした撃発機構のことである。とくに二連式散弾銃用のボックスロックは、1875年にイギリスの銃器設計者、ウィリアム・アンソンとジョン・ディーリーによって発明された。二本の銃身の撃発を単一の機構で行え、ハンマーレス・アクションとしては最もシンプルで信頼性の高い機構として、現代でも用いられている。
 
 二つの銃身には様々な使い道がある。一般的な二連式ではそれぞれの銃身は同じ距離に着弾するよう調整してあるが、射的競技や鳥撃ちなどでは二発目を使って狙う的は必ず一発目より遠くに移動しているので、二発目の銃身は一発目の銃身より遠くに着弾するよう設定しておく、といった具合である。初弾で仕留められなかった場合に初弾の照準のまま素早く二発目を発射してリカバーすることが出来る。二つの銃身に別々の弾薬を(例えば散弾とスラッグ)を詰めておくことも可能である。また、着弾距離や弾種ではなく、[[チョーク]](絞り)を変えることで、二発目の拡散パターンを一発目より広く/狭くするという事も可能である。
 現代では二連式散弾銃のトリガーは他の銃同様1つだけで、2回引くことで2つの銃身を順番に発砲するタイプのものが大半であるが、古い二連式がそうであったように、両引きと呼ばれる2つのトリガー((上下二連であれば前後、左右二連であれば左右に))が付いていて手動で撃ち分け・ないし両方の銃身を一度に発砲できるモデルも存在する。またトリガーが1つのモデルでも発砲順を逆にできるセレクターが付いたモデルもあり、好みや状況に応じて使い分けられる。その他に空ケースを自動選択する「セレクティブ・エジェクター」が付いているモデルもあり、銃身を折ったときに未発射の弾はそのままに「空になったケース」のみを吐き出してくれる。
 [[セミオート]]や[[ポンプアクション]]式の散弾銃に比べ構造や操作がシンプルで信頼性が高く、散弾銃を用いる射撃競技((3つのクレーを同時に撃つトリプルトラップ射撃は除く。))では通常、この二連式が用いられる。また、薬莢を遠くに飛ばしたり、あたりに散らかすことがなく、弾を抜いて折った状態で持ち運べば見た目にも安全とわかりやすいことから、初心者向けとしても好まれる銃種である。

 二つの銃身は同じところを狙うのではなく、たとえば右の銃身は近い目標を、左の銃身は遠い目標をという具合に照準をずらしてある。現在の二連式散弾銃は引き金が右(上下二連式の場合は下)の弾を発射し、2回目の引きで残りの側を発射する((古い二連式散弾銃は[[シングルショット]]の銃を連結しただけの構造であったため、引き金も二つ付けられていた。))。
 発砲順を逆にできるセレクターが付いたモデルもあり、好みや状況に応じて使い分けることができる。こうしたモデルには空ケースを自動選択する「セレクティブ・エジェクター」が付いているものが多く、銃身を折ったとき未発射の弾はそのままに「空になったケース」のみを吐き出してくれる。
 アメリカでは西部開拓時代やアメリカ独立戦争、アメリカ南北戦争の南軍兵士が自前の[[猟銃]]を持ち出していたこともあり、この頃を題材としたフィクションにおいてしばしば登場する。現実でも伝説のガンマン、ビリー・ザ・キッドが悪徳保安官ボブ・オリンジャーを始末する際に、彼から奪い取った10ゲージの水平二連式散弾銃を同時発射した等の逸話は有名である。そのため西部劇では[[コルト SAA]]や[[ウィンチェスター M1873>小銃/ウィンチェスター M1873]]と並んで水平二連式散弾銃が常連の銃器である。
 また、映画『[[マッドマックス]]』シリーズをはじめ、[[ソードオフ]]された水平二連式散弾銃もフィクションの中でよく見られる((詳しくは[[ソードオフ]]の項目を参照))。

 [[セミオート]]や[[ポンプアクション]]式の散弾銃に比べ構造的にシンプルで、機械的なトラブルのリスクが少ないことから、散弾銃を用いる射撃競技((3つのクレーを同時に撃つトリプルトラップ射撃は除く。))では普通、この(上下)二連式が用いられる。また、薬莢を遠くに飛ばしたりすることもなく、弾を抜いて、折った状態で持ち運べば、見た目にも安全とわかりやすいことから、スポーツ射撃の初心者向けとしても好まれる銃種である。ただし、銃床に用いられる高価な木材や精緻な彫刻、熟練工による加工などにより、どちらかといえば高価な部類に属する銃器となっている。

 上下二連式が構造的に頑丈で重いうえ、弾薬を装填する際に水平式よりも深く銃を折り込まなければならないため、狩猟には不向きな一方、水平二連式は、スポーツ用としてはほとんど見られなくなってしまったが、軽くて持ちやすいために現在も狩猟に用いられる。

 西部開拓時代やアメリカ独立戦争の際に自前の猟銃を持ち出していたこともあり、この頃を題材としたフィクションにおいて、しばしば登場する。自前の銃の持込が許可されている軍では、使い慣れた銃でなおかつ信頼性が高い武器として持ち込む兵士も多い。また、映画『[[マッドマックス]]』シリーズをはじめ、[[ソードオフ]]された水平二連式散弾銃もフィクションの中でよく見られる((詳しくは[[ソードオフ]]の項目を参照))。

 これらの二連式の銃は、散弾銃以外にも[[ライフル>小銃]]やごく初期の[[拳銃]]などにも存在する。
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 以下著名なものを記載する。
 主なモデル例
|モデル|形状|ゲージ|全長|銃身長|重量|製造国|h
|~レミントン スパルタン|水平二連式|12ゲージ|44.5〜39インチ|19.5〜24インチ|6.5ポンド|ロシア((バイカル(イジェメック)社製))|
|~イサカ オートバーグラー|水平二連式|20ゲージ|16インチ|12.5〜10.1インチ|4.5ポンド|アメリカ|
|~レミントン スパルタン|水平二連式|12ゲージ|39〜44.5インチ|19.5〜24インチ|6.5ポンド|ロシア|
|~イサカ オートバーグラー|水平二連式|20ゲージ|16インチ|10.1〜12.5インチ|4.5ポンド|アメリカ|
|~ミロク 5000T|上下二連式|12ゲージ|46インチ|30インチ|7.7〜8ポンド|日本|
|~ベレッタ M686E|上下二連式|12ゲージ|45〜47インチ|30インチ|8〜8.2ポンド|イタリア|
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