弾帯 / Bandolier & Ammunition belt

 日本語としての呼称は弾帯であるが、実際にはまったく性質の異なる2つの物品を意味している。
 英語では以下のようにそれぞれ区別して呼称されているので、区別して呼称する必要がある場合はこちらを用いた方が判別し易い。

1.弾薬を携行するための帯 。バンダリア(Bandolier)。

2.機関銃などの自動火器へ弾薬を続けざまに供給するために、弾薬を帯状に纏めたもの。アムニッションベルト (Ammunition belt)。

1.バンダリア(Bandolier)について

 弾薬やマガジンを差すスロットやポケットを設けたベルト。それを腰に巻いたり襷掛け、あるいはサスペンダーと併せて前掛けのように着装することで弾薬を携行する。
 かつてはベルトのスロットに1発ずつ弾薬を格納したものを弾帯(Bandolier)としていたが、弾薬をマガジンに装填して携行するようになると、マガジンを格納するスロットやポケット、ポーチを備えたものも含めるようになった。
 腰巻タイプではホルスターや鞘をベルトに設けて拳銃やナイフなど多様に携行する場合もあり、こちらは「ピストルベルト」「ガンベルト」「ウェポンベルト」などと呼ばれることがある。

 材料としては皮革や綿の帆布が主流であったが、湿気によるカビや型崩れ、収縮といった問題があった。近年ではこういった心配の少ないナイロンなど合成繊維で作られたものが広く用いられている。

 歴史は古く、マスケット銃時代には革製ベルトに一発分の火薬と弾を収めた筒を吊り下げ、襷掛けして運ぶものが存在していた。
 弾薬の発明直後の単発ないし固定マガジンが主流の時代には一発ごとの弾を素早く取り出せ、かつ大量に持ち運ぶ手段として弾帯が使われるようになる。クリップを収めるためにポーチ状の弾帯も存在していた。
 珍しい例としては、プトー砲として知られている1916年式37mm歩兵砲では、弾薬箱の底に末端が固定された布製ベルトに37mm砲弾が連なって収納されていた。
 現代では脱着マガジンの銃を使う場合、原義的な弾を1発ずつ格納するような弾帯を使うことはほどんどないが、単発式・固定マガジン式が多いショットガンや手動式ライフルグレネードランチャーを用いる際には共に使われている事がある。

2.アムニッションベルト(Ammunition belt)について

 ベルトリンク(Belt link)など、あるいは単にベルト(Belt)リンク(Link)とも呼ばれる。
 機関銃や機関砲、自動擲弾発射器などの自動火器へ弾薬を続けざまに供給するために、弾薬を帯状に纏めたもの。あるいは、その為に弾薬を帯状に纏める為の部材そのものを指す。

 自動火器に大量の弾薬を供給する方式としてドラムマガジンなどの大容量マガジンと比較され易い。
 一般的にはベルトリンクはマガジンよりも大容量化し易いという大きなメリットがある。ベルト同士を繋げられるものであれば容積や重量などを許容出来る範囲に限りいくらでも増やす事ができる。一方で、銃と弾薬箱の間で弾薬が露出している事に加え、装填時や動作不良への対処時に手で弾薬やベルトリンクに触れる必要がある*1ため汚れによる動作不良が発生し易い。ベルトリンク給弾機構の分だけ操作や整備の手順が複雑かつ一般的な小銃などと共通化出来ないといったデメリットがある。
 例外は多々あるが、分隊支援火器や第二次世界大戦頃までの軽機関銃ではマガジンが、重機関銃汎用機関銃、第二次世界大戦以降の軽機関銃ではベルトリンクの採用例が多い。機関砲の場合は20mm口径など比較的小口径であればベルトリンクの採用例が多いが、それ以上の口径になると弾自体の重さもあって多量の弾が連なるベルトリンクが忌避され、マガジンやクリップが採用される例が多い。また機関砲から離れた位置にあるマガジンの中からベルトリンクを使用せずガイドレールを通して弾薬を供給するリンクレスフィード(Linkless feed)という方式もある。

 材料としては帆布などの布製と金属製の2種類があるが、バンダリアと同様に帆布は湿気の影響を受けやすく、また銃の内部へと帯が繰り出されて弾薬を供給する為に、湿気で収縮したり、カビや虫食いなどで欠損すると動作不良の原因なるため、現代では金属製が主流となっている。
 また、金属製に比べて布製の方が製造が容易と思われがちだが、実際には布製でも頑丈な生地を精密に縫製する必要があり、機関銃の製造は出来たのに布製ベルトリンクの製造が出来ずに輸入に頼った事例もある*2

 ベルトリンクから弾を分離する仕組みにも違いがあり、「引き抜き式」と「押し込み式」の2種類がある。
 引き抜き式はベルトリンクから弾薬を後方へ引き抜いてから薬室のある前方へと押し込む方式。近代機関銃の始祖的な存在であるマキシム機関銃をはじめ、現役のブローニングM2重機関銃でも見られる方式である。
 後退するボルトによってリンクから引き抜かれた弾薬は、カムの働きでボルトフェイスの下方へスライドしたのち前進するボルトによって薬室に装填される。発砲するとそのエネルギーによってボルトは再び後退を始め、上部のリンクからフレッシュな弾薬と下部の薬室から空薬莢を同時に引き抜く。つまりボルトは上下二つの薬莢を同時に掴むサイズが必要となるため、機関部は複雑で大きく重量もかさむこととなる。ベルトリンク給弾がMG34以前には重機関銃でしか見られなかった所以である。
 押し込み式はリムレス弾薬を前提とし、ベルトリンクの弾薬を薬室へ直接押し込んで給弾する方式。MG34では非分離式のΩ型金属リンクを用い、前進するボルトがリンクから弾薬を引き剥がして薬室へ押し込む形で実現した。ボルトに弾薬をスライドさせる機構や薬莢を2つ保持させるサイズが必要無く機関部をより小さくまとめやすい構造であることから、『ベルトリンク給弾の軽機関銃』が可能となった*3

 ベルトリンクは絡まったり捻じれたりすると給弾不良を起こすため、機関銃の装填手が捻じれないよう補佐することもある。またベルトリンクを収めるための箱やキャンバスバッグのような容器を設えることでこういったトラブルを防ぐ事ができる。これらはあくまでベルトリンクを収めておくだけのもので、マガジンのように弾を送り出すための動力は無い。また対空射撃や市街戦、山岳戦など、高所に対して高い仰角をとって射撃をする事があるため、このさいベルトリンクが捻じれてしまわないよう、容器は直接固定するか銃架のマウントを介すなどして銃本体の動きに追従する設計が一般的である。また軽機関銃では単純に携行性を向上させるため、銃へベルトリンクの容器を固定する事が求められるが、FN MAGのように容器の固定が困難な場合もある。そのため、機関銃手がバンダリアのようにベルトリンクを体に巻き付けて運んでいる例がしばしば見られる。

 ベルトリンクを組み上げる方法としては道具を使わず手作業によっても可能だが、基本的に数百発もの量を組む必要があるため「リンカー(Linker)」と呼ばれる器具を用いる事が多い。リンカーは大型だが連続的に組み込みが出来る回転ハンドルタイプと一定弾数ずつしか装填が出来ない代わりに小型なスライドタイプが存在している。

 ベルトリンクの構造によっても非分離式半分離式全分離式といった3つの分類があり、以下にそれぞれの特徴を挙げる。

非分離式

 非分離式は初弾から最終弾までのベルトリンクが一つながりで途切れないようになっている。ベルトリンク発明時からある形式。
 ベルトリンクの全ての弾を撃ち切るまで、銃から空のベルトリンクがぶら下がって取り回しを悪くしてしまう欠点があるが、ベルトの再利用が容易に出来、また逆にベルトリンクから弾を抜いてもベルトリンクが切れる事がない。
 布製ベルトリンクや初期の金属製ベルトリンクに見られた構造である。

半分離式

 半分離式は非分離式のベルトを数発分ずつ分離するようにして、数発分だけ射撃するごとにベルトが外れていくようになっている。非分離式として扱われる事が多い。
 この為、非分離式のメリットをほぼそのまま残しつつ、射撃後のベルトがぶら下がって取り回しが悪いという欠点をある程度改善している。また後述の全分離式にある欠点もある程度軽減している。
 MG34のスタータータブから250発全てまでが非分離式で嵩張ったGurt33ベルトリンクを、スタータータブを別体としてベルトリンク自体も25発ごとに分離するようにしたGurt34ベルトリンクがその端緒となる。
 MG34とベルトリンクを共用するMG42や、このアイデアに影響を受けたRPDPKなど東側の金属製ベルトリンクに見られる構造である。

全分離式

 全分離式は弾薬の1発1発ごとにベルトリンクが分離するようになっており、射撃の度に1発分のベルトリンクが銃から排出されるようになっている。
 この為、非分離式の射撃後のベルトリンクがぶら下がって取り回しが悪いという欠点を完全に克服しているが、その一方で、使用済みベルトリンクの再利用、徹甲弾曳光弾などの弾種を入れ替えもしくは比率替えなど再び弾薬をベルトリンクに組み込むには、バラバラなベルトリンクを組みながら弾薬を挿していかなければならないという欠点がある*4
 またベルトリンクの1つ1つが空薬莢よりも小さな金属片のようなもので、射撃によってこれが周囲に飛散してしまうため、再利用の為の回収の手間が増えたり、小さなベルトリンクが銃の機関部や他の機器の隙間に入り込んで動作に支障を発生させる危険性がある。
 M60ミニミなど西側の金属製ベルトリンクに見られる構造である。

補足・保弾板

 ベルトリンクに似たものとして、保弾板、フィードストリップ(Feed strip)式と呼ばれる給弾方式がある。
 これは金属板に弾薬が嵌まるスロットを設けたもので、基本的には板であるために銃から突出して嵩張り易く、ベルトリンクと比べて多弾数化が難しい、マガジンと違い弾薬が露出しており汚れに弱いという、ベルトリンクとマガジンの両方の欠点を併せ持っていたため廃れた方式となっている。数少ない長所としては、金属板に弾薬が嵌まるスロットをプレス加工するだけで製造できるためマガジンやベルトリンクに比べて生産性に優れていた事、当時主流だった布製ベルトリンクと比べて湿気に強い点が挙げられる。
 とはいえホチキス機関銃で3発ごとに屈曲するようにした、金属製ベルトリンクの始祖ともいえる形式も作られており、欠点が目立って廃れたとはいえ歴史的には重要な給弾方式である。


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 記述が物足りなかったので色々追加しました。半分離式のお初はGurt34よりも前例があるかもですが、そこまで掘り切れてないので詳しい方の修正をお願いします。 -- 2022-02-20 (日) 02:31:04
  • ダミーカートとM27ベルトリンクを手作業で繋げてる人のブログがあったので、全分離式でもモノによっては一応手組は可能では?ttps://shinchanfareast.militaryblog.jp/e953194.html -- 2022-02-24 (木) 00:30:14
  • 情報ありがとうございます。非分離式より手間が掛かる、というような記述に修正します。 -- 2022-02-24 (木) 04:04:54
  • 1つ目のバンダリアは「ガンベルト」という呼称というか名称もありませんでしたか? 昔見た西部劇映画でガンベルトと登場キャラが言っていたのを覚えています。それと最近読んだ「ようこそ女たちの王国へ」(年代的に南北戦争頃を舞台としたウェン・スペンサー著作の全年齢貞操逆転商業小説)でガンベルトという表現がありました -- 2022-02-25 (金) 19:58:43
  • ↑その『ガンベルト』は「銃器を運ぶベルト」(「ピストルベルト」「ウェポンベルト」)とは全く違うような表現でしたか?純粋に弾を運ぶベルトとしての意味でしたか? -- 2022-02-25 (金) 23:06:18
お名前:

*1 スタータータブのあるベルトリンクであれば装填時に弾薬やベルトリンクをあまり触れずに済む。
*2 日中戦争での中国はMG08をライセンス生産していたが、布製ベルトリンクを国産できずにドイツとアメリカから輸入していた。
*3 この点において引き抜き式のままのPK軽機関銃はかなり画期的である。
*4 前述のリンカーを用いれば解決できる欠点ではある

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