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*短機関銃 / Submachine gun [#pc650a5c]
 [[拳銃]]弾を使用する個人携行可能な大きさの[[機関銃]]の総称。

 「拳銃弾を用いた機関銃」という意味で云えば、最初に作られた物は19世紀の後半に作られたマキシム機関銃の拳銃弾バージョンである。といっても販促用に作られたもので、デモンストレーションの際に充分な広さの射撃場が得られなかった場合に使われた低威力バージョンであったようだ。
 初めて本格的に開発・量産されたのは、イタリアの「[[ビラール・ペロサ M1915>短機関銃/OVP M1915]]」である。第一次世界大戦当時のイタリア軍で、航空機に搭載可能な機銃として、あるいは山岳部隊で使用する支援火器として用いられたようだが、いずれにせよ大きく重い従来の機関銃((当時「機関銃」といえば、いわゆる「重機関銃」のことだった。))の代替となりうる比較的軽便な自動火器として発案されたのが始まりだった。 
 ビラール・ペロサ M1915は、左右に並べた二本の銃身にそれぞれ独立した機関部を持ち、いわゆる短機関銃とするにはかなり大仰な、むしろ[[軽機関銃]]に近いシロモノだった。イタリア軍から1万挺のオーダーを受けた((航空機用と陸戦用の2種が作られた))ほか、銃身の生産を請け負っていた[[ベレッタ]]社がSMGの開発・生産に乗り出すきっかけともなったが、所詮拳銃弾では長距離での威力に乏しく制圧力に欠け、「[[重機関銃]]の代替」にはとても成り得なかった。

 一方、20世紀初頭に帝政ドイツで開発された「[[MP18>短機関銃/ベルグマン MP18]]」は、全く異なるコンセプトをもっていた。
 第一次世界大戦で戦闘を膠着状態に陥れた「塹壕戦」は、長大な[[ボルトアクション]]式の[[小銃]]が用を成さない接近戦を兵士たちに強いた。そのため、塹壕という限られた狭所空間で取り回しが利く、長距離での火力を考慮する必要のない、軽便な接近戦用火器としてデザインされたのがMP18であった。MP18はその目論見通りの威力を発揮し、ドイツの大攻勢の原動力の一つとなったものの、結果的にはドイツが敗北したため、当時はあまり高く評価されることなく終わった。
 しかし、局所兵器としての短機関銃の有効性は各国に知れ渡ることとなり、MP18はのちの短機関銃のスタンダードを築いたことで、「世界最初の短機関銃」とされた。第一次大戦後に勃発したスペイン内乱では、MP18の改良型であるMP28を携えたドイツ義勇軍がその威力で以って活躍し、各国で短機関銃の開発・導入が進む契機となった。
 しかし、局所兵器としての短機関銃の有効性は各国に知れ渡ることとなり、MP18はのちの短機関銃のスタンダードを築いたことで、「世界最初の短機関銃」とされた。第一次大戦後の1936年に勃発したスペイン内乱では、MP18の改良型であるMP28を携えたドイツ義勇軍がその威力で以って活躍し、各国で短機関銃の開発・導入が進む契機となった。

 第二次世界大戦が始まると、ナチス政権下となったドイツの[[MP40>短機関銃/エルマベルケ MP40]]をはじめ、ロシアの[[PPSh41>短機関銃/USSR PPSh41]]、アメリカの[[グリースガン>短機関銃/GM M3]]といった代表的な短機関銃が次々と現れ、互いにその猛威を揮い合った。また、その軽便さゆえ、重い装備を持てない士官や戦車兵の護身用火器としても広く使われた。
 第二次世界大戦が始まると、ナチス政権下となったドイツの[[MP40>短機関銃/エルマベルケ MP40]]をはじめ、ソビエト連邦の[[PPSh41>短機関銃/USSR PPSh41]]、アメリカの[[グリースガン>短機関銃/GM M3]]といった代表的な短機関銃が次々と現れ、互いにその猛威を揮い合った。また[[オープンボルト]]式の当時の短機関銃は[[小銃]]や[[自動拳銃]]などと比べ簡素に作れため((小銃や自動拳銃では遊底と撃鉄/撃針が別部品となっているが、オープンボルト式の銃ではボルト先端に突起を設け撃針代わりとするため部品点数を削減できる。また大きさ・重量の制約が拳銃より緩く、弾薬も小銃より低威力な拳銃弾を使用するため、作動機構も最もシンプルな[[ストレートブローバック>ブローバック]]式にできた。))大量な武器が必要だったこの時代の短機関銃は生産性向上の工夫を凝らされながら大量生産された。またその軽便さゆえ、重い装備を持てない士官や狭い車内で活動する戦車兵の護身用火器としても広く使われた。
 第二次世界大戦以降は、より射程の長い[[突撃銃]]の登場により次第に戦場での価値は失われ、陸軍の主要な装備からは外されていくようになる。しかし一方で、スペックにこだわらなければ、乏しい資材や設備でも生産可能で、練度の低い兵でも扱えることから、資金・技術に乏しい発展途上国の軍の制式兵器として、或いは戦時下・準戦時下の緊急兵器として生産された。その背景には、先進国が突撃銃を主力火器として導入し始めた事によって生じた大量の「旧型主力火器」である短機関銃、その弾丸の余剰分が支援や横流しなどの形で流出していったという事情もある。最近では独立戦争時のクロアチアでこの種の短機関銃が多数生産され、中には建設用資材をそのままレシーバー(機関部)として流用した物さえあった。

 民間における短機関銃は、[[トンプソン>短機関銃/オートオードナンス トンプソン]]をはじめとしてダークな印象が強い。携帯性と取り回しが良いこと、銃に不慣れな人間でも広範囲を攻撃可能、弾薬を入手し易いことから、マフィアや強盗団、テロリストなどにも重用され、独立運動や国境紛争、麻薬犯罪、組織間抗争や要人の暗殺などにも用いられた。一方で、その携帯性・秘匿性ゆえ各国の要人警護を行う非制服系のガードマン(いわゆるシークレットサービス)でも採用例が多く、時には戦場を離れた市街地で短機関銃同士の銃撃戦に発展した例もある。
 拳銃弾を使用することから威力が高過ぎず不要な二次被害を招かない事、また弾速が低いため[[サプレッサー>減音器]]との相性が良く(特に[[.45ACP弾>.45ACP弾]]は亜音速のため、より相性が良い)室内戦などに有効である事から、警察特殊部隊や対テロ部隊でも短機関銃の導入は進み、そういった組織向けの新しい短機関銃も戦後多く作られた。初期には命中精度の低さが問題となったが、短機関銃の常識を覆す高精度短機関銃[[MP5>短機関銃/HK MP5]]の登場により問題は解決し、以後法執行機関と言えばMP5と言えるレベルにまで爆発的な普及を遂げた。21世紀現在でもMP5は世界中のほとんどの法執行機関で未だに使用され続けているロングセラーとなっている。
 拳銃弾を使用することから威力が高過ぎず不要な二次被害を抑えられる事、また弾速が低いため[[サプレッサー>減音器]]との相性が良く(特に[[.45ACP弾]]は亜音速のため、より相性が良い)室内戦などに有効である事から、警察特殊部隊や対テロ部隊でも短機関銃の導入は進み、そういった組織向けの新しい短機関銃も戦後多く作られた。初期には命中精度の低さが問題となったが、短機関銃の常識を覆す高精度短機関銃[[MP5>短機関銃/HK MP5]]の登場により問題は解決し、以後法執行機関と言えばMP5と言えるレベルにまで爆発的な普及を遂げた。21世紀現在でもMP5は世界中のほとんどの法執行機関で未だに使用され続けているロングセラーとなっている。
 政情が不安定な発展途上国では、突撃銃の導入後も並行して軍で短機関銃を採用している例も多い。こういった国では兵器や弾薬の数が必ずしも十分ではないこと、完全な警察機構が整っておらず軍警察が法執行機関として動く機会が多いなどの理由もあるが、最も大きなものとしてクーデターによる政権転覆を防ぐため、末端の組織にはあえて低火力の短機関銃を配備しているという事情もある。

 これらの経緯により、現在の短機関銃は「高精度だが高価な物」(MP5等)と、「低精度だが安価で作りやすい物」([[M11>短機関銃/MAC M11]]、[[ウージー>短機関銃/IMI ウージー]]等)の二分化が進んだ。
 また近年、ボディーアーマーの普及によって短機関銃の威力不足が問題となったことから、[[PDW]]という短機関銃と突撃銃の中間に位置するような、新たなカテゴリーも提唱されている。このPDWについて本サイトでは便宜上、短機関銃にカテゴライズしている((もっとも、これらのPDWとして製造された銃器もブームの終了後は、各メーカーでも公式に「短機関銃」として再カテゴライズされたものが多い))。

 また、アメリカ市場では2015年頃から、[[ライフル>自動小銃]]による乱射事件の増加を受けてライフルの新規購入を忌避する動きや、弾薬価格の向上の影響もあり、安価で低威力な拳銃弾を用いる民間向けのセミオート・長銃身の[[カービン>騎兵銃]]の人気が急上昇しており、「PCC(Pistol Caliber Carbine)」の名称でカテゴライズされ近年注目を集めている。
 このPCC製品の大半で、既存の拳銃ユーザ向けに[[グロック>グロック 17]][[マガジン]]を使用可能な製品が大量に登場し陳腐化したことから、アメリカでは銃の新製品に対してとりあえず「Does it take Glock mags?(それってグロックマガジン使えんの?)」と聞くジョークが生まれた。

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