消音効果のある回転式拳銃

 減音器回転式拳銃の項目でも述べられているが、メディアにおいてはたびたびサプレッサーが装着された回転式拳銃が登場するが、リボルバーギャップからのガス漏れの問題があり本来は意味がなく、視覚的な奇抜さ以外には特別な意味はないと思われる。
 しかし現在では自動拳銃においてもサプレッサーの使用は一般的であるが、以下のような問題から、本来シリンダーギャップが存在するためサプレッサーの仕様に適さない回転式拳銃でも、サプレッサーを使用可能としたものが実際に幾つか作られている。
 
 1.信頼性
 自動拳銃ではサプレッサーがバレルに装着されることにより、ティルトバレルの動作に影響したり、ボルトやスライドに強い負荷が掛かり、装填不良を起こすケースがある。回転式拳銃であれば、サプレッサーの有無に関わらず、安定した動作が可能となる。

 2.作動音
 自動拳銃では自動的に排莢が行われてしまうため、スライドの動作を停止して逐一手動で装填する方式にしなければ、空薬莢が地面に落ちる音を防ぐことができないため、室内などの環境で極限まで音を減らそうとすると自動式の利点が失われてしまう。回転式拳銃であれば、排莢は手動でコントロールされた状態で行われるため、連射能力を維持しつつ高い消音効果を発揮できる。回転式拳銃であればスライドの動作音も無いため、連射時に生じる音も最小限に留められる。

 こうした利点から過去にはサプレッサーに対応した回転式拳銃は少なからず作られた。現代でも、広い使用例は見られないものの、一部では未だに製造されている。

 

モデル名製造国備考
ナガンM1895ロシア消音用途で開発されたモデルではないが、消音効果のある回転式拳銃としては最も有名である。
弾薬は7.62x38R弾。
ハンマーをコックするとシリンダーが前進してシリンダーギャップを狭めるほか、薬莢が弾頭まで伸びた弾薬を使用しており、これがシリンダーギャップに挟まる事でガス漏れを防いでいる。
本来この機能は、誤って噴出ガスで怪我をしないよう工夫された機能であったがが、実際に赤軍ではサプレッサーを装着して隠密任務にこの拳銃を用いていた。
この消音機能は年代を隔ててベトナム戦争などでもゲリラによって活用されており、鹵獲されたモデルがCIA博物館に保管されている。
AAI QSPRアメリカQuiet Special Purpose Revolver(静音特殊拳銃)の略。ベトナム戦争中に陸軍向けに開発されたモデル。
S&W M29リボルバーをベースとし、バレルは.40口径のスムースボアで、シリンダーは.528口径となっている。
非常に特殊な弾を用いる拳銃で、この弾には2つの特徴がある。
まず、弾頭前にピストンが内蔵されており、これによって弾頭の進行を遅らせることでシリンダーギャップを塞ぐ。
また、弾頭はサボットに覆われた小さな散弾となっており、近距離での命中率を高めている。
更にフレームには光学照準器やウェポンライトを取り付けられるよう固定位置が設けられている。
当時、主にトンネル戦では消音式の連発式拳銃として.22LRのハイスタンダードHDMを使用していたが、これより火力の高い連発式拳銃を目指して設計された。
11挺が試作されたが広く採用はされなかった。アメリカ本土でも警察に一部売りこまれたようである。
ジョー・ピータース PSDR3ドイツドイツSEK(SWAT)用に開発されたカスタムモデル。
S&W M625をベースとしており、通常の.45ACP弾を使用する。
特異なのはバレルに固定されたサプレッサー兼シリンダーカバーで、この左右に開閉するカバーでシリンダー自体を覆ってしまうことでシリンダーからのガス漏れを防いでいる。
ナイツ リボルバーライフルアメリカナイツ・アーマメント・カンパニー(KAC)で製作された回転式小銃。
スタームルガー スーパーレッドホークをベースとしており、回転式拳銃であるが長銃身とスコープを搭載した狙撃用モデルである。
QSPRに類似したピストン式消音機構の弾を使用する。弾丸は.30口径で、.44マグナムの薬莢を使用する。100mの射程があるとされる。
RSh-12.7ロシアVKSASh-12.7ライフルと同じ12.7x55mm弾を使用する回転式拳銃。
全長35cm、重量2.2kgと非常に巨大なものとなっている。
マテバ 6 Unicaのようなバレルがシリンダー下にある構造となっており、ナガンM1895同様の前進式ガスシールを有する。
アクセサリーレールや、グリップ部に装着するストックも用意されており、上記リボルバーライフルのような消音狙撃銃としての運用を想定していると思われる。

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