クラッグ・ヨルゲンセン銃 / Krag-Jørgensen Rifle 【小銃】

クラッグ・ヨルゲンセン M1892 試作型
モデル全長重量口径装弾数製造国
M1889 (ライフル)1328mm4.27kg8mm×58R5デンマーク
M1889 (カービン)1100mm3.96kg
M1892 (ライフル)1244mm4.22kg.30-40 Krag5アメリカ
M1892 (カービン)1046mm3.73kg
M18941267mm4.22kg6.5mm×555ノルウェー
M1895, M18971016mm3.37kg
M1904, M19071016mm3.78kg

 クラッグ・ヨルゲンセン銃は、19世紀後半にノルウェーで開発されたボルトアクションライフルである。1886年、オーレ・ヘルマン・ヨハネス・クラッグとエリック・ヨルゲンセンの2人により設計された。

 クラッグ・ヨルゲンセン銃は、弾倉の右側面が開き戸になっており、横から1発ずつ弾薬を入れる仕組みになっている。これはボルトを後退させずに給弾できるという利点がある。
 様々な国で採用されたが、同時期に登場したマウザー式のライフルはクリップ装填が可能という当時としては画期的な特徴があり、以後こちらを模倣した銃の方が増えて行った。
 スイスやアメリカでは、軍用に試験的な「チャージャー」と呼ばれるクリップのように一度に給弾可能な給弾ケースも製作されたが、採用はされなかった。

 デンマークでは1889年に「Gevær M/89」の名称で採用され、1940年まで制式小銃として使用された。このモデルは開き戸が下方向ではなく前方向に開く点が特徴となっている。

 アメリカでは1892年から1904年までスプリングフィールド造兵廠により約50万挺がライセンス生産されており、1899年から1902年の「フィリピン・アメリカ(米比)戦争」に投入されている。
 その後フィリピンを植民地化したアメリカが創立した「フィリピン警察隊」でも採用例がある。
 フィリピン警察隊は元々、その当時すでに旧式化していたスプリングフィールド M1873を配備していたが、全長131cmを超えるこの銃では見通しの悪い密林がほとんどを占めるフィリピンの地形ではとっさの伏兵に対応することができず、特に集団に襲撃された場合は再装填が絶望的だったために、急きょ取り回しのよい騎兵銃が代替として求められた。
 その結果、同隊専用にバレルが短縮化されたクラッグ・ヨルゲンセンが1906年に制式化されることとなったが、クラッグ・ヨルゲンセン自体も当時から50年以上前に設計された旧式ライフルであったため、1910年には早くもスプリングフィールド M1903の配備が始まった。
 しかし最終的には1917年ごろまで現役で使用されていたようだ。

 本国ノルウェーでの採用が最も遅く、ステアーマウザー式のライフルとのトライアルの末1894年に「M1894」として採用された。様々なバリエーションが作られ、特に当時ノルウェーでは、学校において射撃が必修であったため.22LRを使用する授業用のカービンモデルも作られた。
 採用歴は本国が一番長く、第二次世界大戦の終戦後に大量に接収されたドイツ軍のKar98Kで置換される1959年まで使用された。
 これらのモデルは狩猟や競技用としても払い下げられて広く流通しており、現在でも使用されている。

各種バリエーション

モデル特徴製造国
M1889フルサイズ。カービン及びショート(ライフルとカービンの中間サイズ)モデルもあり
軍用として製造された最初のクラッグ・ヨルゲンセン銃
デンマーク
M1889 スナイパーヘビーバレルの狙撃銃モデル。狙撃用リアサイト装備
M1892フルサイズ。カービンモデルもありアメリカ
M1896マガジンカットオフ機構追加。カービンモデルもあり
M1898M1896の改良型。カービンモデルもあり
M1899M1898の改良型。カービンモデルもあり
M1894フルサイズノルウェー
M1895 キャバルリーカービン
M1897 マウンテン・アーティラリーカービン
M1897 エンジニアカービン
1898〜1906年に製造されたカービンモデル
M1904 エンジニアカービン
M1907 フィールド・アーティラリーカービン
1906〜1908年に製造されたカービンモデル
M1912 カービン
M1912/16 カービン
M1912/18 カービン
1913〜1926年に製造されたショートモデル
M1923, M1925, M1930狙撃銃モデル
 
登場作品ジャンル使用者備考
0012/捕虜収容所ドラマロバート・E・ホーガン
ヴィルヘルム・クリンク
ハンス・ゲオルグ・シュッツ
マルコ
暁の討伐隊映画アメリカ軍兵士
アラバマ物語映画アティカス・フィンチ
風とライオン映画アメリカ軍兵士アメリカ製
銃剣装着モデルもあり
キングコング項目参照
三ばか大将ドラマカーリー・ハワード
ターザンの黄金映画メドフォード
ファンデルメール
黄昏に燃えて映画アメリカ軍兵士
デス・ハント映画エドガー・ミレン
レッド・デッド・リデンプション項目参照

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最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • この銃って精度はどのぐらいなんでしょう? -- 2016-09-17 (土) 18:22:04
  • 9. April(エイプリル・ソルジャーズ)にて確認。 -- 2017-05-22 (月) 13:23:30
  • 『ニルスの不思議な旅』原作第1話では、M―1889ライフルと思われる銃が、デンマークの王室の肖像と並んで、壁に掛かっている描写があります。 -- 2017-10-31 (火) 10:50:40
  • 米西戦争(1898)を扱った米国TV映画「ラフ・ライダース」に出てくるカービンもM1899カービンではないでしょうか。 -- GOGH? 2018-05-11 (金) 13:33:55
  • 『ニルスの不思議な旅』アニメ版第1話では、ニルスがM-1889ライフルらしき銃を弄るシーンがある(発砲は無し!)。 -- 2018-05-24 (木) 23:06:50
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