#author("2020-03-05T05:45:13+09:00","default:user","user")
*銃床 (じゅうしょう) / (Butt)Stock [#o8271362]
 [[小銃]]、[[散弾銃]]、[[機関銃]]等、拳銃を除けば大抵の銃に存在する、銃の保持を補助するための部品。英語では「ストック」「バットストック」と表記する。
 ストック自体は銃の黎明期より存在するが、「ストック」という言葉は16世紀頃にドイツ語の「(木の)幹」を意味する単語から転用されるようになった。

 伝統的な銃床は銃のフレームであり、添え手で握る[[フォアエンド(先台)>ハンドガード]]から銃尾より後方のバットストック(元台)までが一体となっているが、現代の軍用銃器ではフォアエンドとバットストックが分割され、フレームとしては機能せず保持の補助に徹したものが多い。
 精密射撃用の競技銃や[[狙撃銃]]では調節可能なチークピースやリコイルパッドを備えるものもある。
 素材は耐衝撃性に優れ熱が伝わりにくく、経時変化による狂いの少ないものが用いられる。主にウォールナット(クルミ材)などの丈夫な木材、或いはプラスチックなどの[[シンセティック>ポリマーフレーム]]素材が用いられ、結合部や心材にスチールやアルミ合金(場合によっては真鍮や亜鉛合金)などの金属素材が用いられる。

 本来の役割以外としては、銃を前後逆向きに持ってストック部を打撃武器として使ったり、物を破壊する場合に利用することもある。
 映画などでは、相手を気絶させるシーンに用いられるケースが多いが、現代の[[自衛隊]]の「自衛隊銃剣格闘術」でも、[[マガジン]]などとともにストックによる打撃が採り入れられ、実際に訓練が行われている。
 軍用銃ではデッドスペースの有効活用として中にクリーニングキットが収納できるようになっていることも多い。

**銃床の部位 [#o3473748]
#ref(Gunstock_anatomy.jpg,center,nolink)
''1.バット(床尾)''
 銃床の後端部。基本的には強度向上や反動低減のためにバットプレート(床尾板)、リコイルパッドが貼られている。
 体格、体形、装備によって適切な長さが異なり、軍用狙撃銃ではその差異を吸収するために調節可能なものが多い。
''2.フォアエンド(先台)''
 添え手で支えたり、精密射撃時に脚やバッグに依託する部分。銃身上部までを覆うものはハンドガード(被筒)と呼ばれる。
 精度が要求される用途の銃では、先台が銃身に接触しないように作られていることが多い。
''3.コーム・チークピース・チークレスト''
 頬付けする部分。
 厳密にはコームは銃床の上面、チークピースは射手側の側面を指すが、英語圏でも頻繁に混用されているのでここにまとめる。
 照準器の高さや射手の顔つき、銃の用途により最適な形状が異なり、こちらも調節可能なものがある。
-
''・ストレートコーム''
 標準的な形状なのでコンベンショナルコームとも呼ばれる。頭部で銃を上から抑え込む形になりしっかりと銃を固定できるが、長時間の構えを維持するのは辛く、跳ね上がりによる頭部へのショックが大きい。
''・モンテカルロコーム''
 ヒールよりもコームが高くなっている。盛り上がりが側面まで続いているものを指すこともある。
 肩よりも顔の位置が高くなるので姿勢が楽になるが、銃の保持が甘くなるのでスキートのように銃を勢いよく振り回す用途では採用されない。
 「照準器のために使われる」という説明がされている場合もあるが、モンテカルロコームの定義はヒールよりも相対的に高いことである。アイアンサイトの使用を前提としたモンテカルロコームは少なくないし、逆に照準器の使用を想定したストレートストックもある。
''・ロールオーバーコーム''
 盛り上がりが射手の反対側にまで張り出しているタイプ。頬付け面積が広く安定性が増し、精密射撃に向いているが、重くなり取り回しは悪化する。
 画像の銃はロールオーバーコームになっている。

''4.ヒール''
 バットの上側の角。
''5.トゥ''
 バットの下側の角。
''6.グリップ(握把)''
 利き手で握る部分。その銃の用途により適切な形状が選択され、銃の使い勝手を決定的に左右する。
-
''・ストレートグリップ''
 下方に一切突出しておらず、最低限親指を通すために上側がくびれているだけのグリップ。
 古風な外観が好まれ現在でもユーザーは多い。
// 最も原始的で機能性に乏しい形状であり、他の形式と比較して利点はほぼないが、
//↑(他のものに明確な特性があるというだけで)特に劣っているという根拠はありませんので、下げる方向の表現についてはコメントアウト。
''・ピストルグリップ''
 グリップが下方へ盛り上がりピストルのように垂直に近い角度で握れるグリップ。
 銃を肩に強く引き付けることが可能であり、取り回しがよく安定性も高い。
 盛り上がりが少ないものはセミピストルグリップと呼ばれ、前後に利き手をずらす必要があるダブルトリガーの銃ではそちらが選択されることもある。
 第二次世界大戦以降の銃器は軍民問わず、所有者の美意識が反映されていない限りほぼまちがいなくセミorフルピストルグリップになっている。
''・独立グリップ''
 AR-15のように下方に突き出し、親指がバットストックの下をくぐるタイプ。
 ピストルグリップよりさらに下方の、人間工学的に理想的な位置にグリップが存在し、引き付けるのみならず押す方向にも力をかけることが可能で圧倒的に取り回しやすくなる。
 第一次世界大戦以降の自動火器に多く採用されており、第二次世界大戦以降はほとんどの軍用小火器がこの形式を採用した。
 あまりに機能性が高すぎるため法規制の対象になることもある。
 しかしながら手の位置が安定しないため射撃精度に若干の悪影響があり、射撃精度が優先される用途では避けられることもある。
//こちらもピストルグリップに含められるが、力学的に全く別物であるため区別して語られることも多い。一般的な用語がないため話者によって勝手に呼び分けているのが実情であり、独立グリップという呼称にも根拠はない。
//↑ここ私もかなり難しいと思いますがやはり単に猟銃タイプでは「ピストルグリップ」の意味は異なる、程度ではいいのではないでしょうか・・・?
//またショットガンでは「ピストルグリップ」というと一般的にバットストックなしを指すことが多いなどの用法もあるため、グリップについては独立記事でもいいように思います。

''7,サムホール''
 親指を通すための穴。これが設けられたストックをサムホールストックと呼ぶ。
 独立グリップ同様の理想的なグリップ配置を取りつつ、手の位置を確実に定めることで安定性が増す。
 精密射撃に最も向いているため狙撃銃や競技用銃で見られる。
//が、取り回しは最悪であり、親指をいちいち出し入れしなくてはならないので操作性も悪くなる。
//↑内容が口語的・断定的に過ぎるため取り回し関係についてはコメントアウト。
 独立グリップのオートライフルが規制されている地域で、法的に合致するようこのタイプに改修したものも多い。

**銃床の形式 [#q2e3c38d]
 下記に挙げる形式は、外観もしくは機能による区分だが、下記のうち2、3種の特徴を併せ持つ物も少なくない。
 例えばドイツの[[G36>HK G36]]の場合、フォールディング及びスケルトンのタイプに当て嵌まる。 
//''・イングリッシュストック''
//↑コメント通り、表現としてかなりマイナーなためコメントアウト(製品名でもほぼ見られませんし、そもそも英国発祥でもありません)
''・ストレートストック''
 ストレートコームにストレートグリップの最も一般的なライフルストック。
//↑「ストレート」の語が連続しすぎているため、最も一般的なものですので最後の部分のみ表現を変更。

//銃が槍としての使い勝手を求められていた時代の名残であり、強度が高く振り回しやすいものの、銃としての利点はほぼないが、古風な外観に惹かれるユーザーは現在でも多い。
//↑コメントの通り、銃剣の遥か以前より存在する形態であり不適であるためコメントアウト。

//ストレートストックという呼び方がされることもあるが、こちらは話者により使い方が全く異なる場合もあるので注意が必要。
//↑そもそもAR15的なストレートライン設計のストックを「ストレートストック」とすることは少ないためこれもコメントアウト。
//例えば、現代でもAR15を「ストレートストック」にする製品が登場していますが、これは無論いわゆるM4タイプストックではなくライフルストックを指しています。
//https://www.guns.com/news/2014/10/30/ares-scr-lower-now-sold-separately-by-popular-demand

''・ヴァーミント(orヴァーミンター)ストック''
 その名の通り、素早い害獣(ヴァーミント)を仕留めやすいよう、気づかれない距離から狙撃するための精密射撃仕様。
 先端が幅広の[[フォアエンド>ハンドガード]]により砂袋等への依託が容易になっており、コームはモンテカルロかロールオーバーで射撃精度に特化している。
 積極的に追いかける用途には使わないため軽さはあまり考慮されない。

''・マンリッヒャーストック''
 全体は比較的細めで、フォアエンドが銃身に近いほど長く伸びるのが特徴のストック。[[カービン>騎兵銃]]で持ち手を長く取る目的や、小口径のバレルが軽い銃で銃全体の重量バランスを良くするために使用される。名称通り[[マンリッヒャー>ステアー]]社の古いライフルに多く見られたスタイル。

''・ベンチレストストック''
 その名の通りベンチレスト競技に用いることに特化したストック。
 レストのためにフォアエンドは逆三角形になっており、重りとするためバットストックがかなり大きく作られている。
 競技の性質上頬付けはほとんどしないため、照準器に対して低めのストレートコームになっていることが多い。

''・スケルトンストック''
 肉抜き加工([[SG550>シグ SG550]]等)が施されていたり、ワイヤー(金属線)やパイプを組み合わせて作られていたりと、最低限の骨組みのみで構成されたストック。
 なお、ワイヤーを折り曲げて作られたものはワイヤーストックという([[スコーピオン>短機関銃/CZE Vz61]]等が代表例)。
 このタイプが採用されるのは軽量化が主な理由だが、折り畳んだ状態で排莢口を塞いでしまわないように採用している銃もある。
 普通はライフル系の銃に備わっているが、[[リボルバー>回転式拳銃]]([[SAA>コルト SAA]]など)に装着する物も存在する。これはリボルバーカービンのような固定式ではなく、簡単に着脱することが可能となっている。

''・フィクスドストック(固定式銃床)''
 バットストック部が機関部に固定され、収納や伸縮機能を持たないストックのこと。
 下記のような多機能銃床と区別するための用語である。ただし肩当やチークピースなど上下幅や若干のストック長が調節可能であってもフィクスドストックと呼ばれることもある。

''・フォールディングストック(折り畳み式、折り曲げ式銃床)''
 運搬のさいに取り回しが良いよう、折り畳むことが可能となっているストック。
 横に折り畳めるタイプや前方に倒すタイプが多いが、[[ウージー>短機関銃/IMI ウージー]]のように機関部の下に折り畳むタイプもある。横に折り畳むタイプの場合は、排莢口を塞がないように左サイドに折り畳むか、畳む角度を若干下げるような工夫が施されている。
 また[[M93R>ベレッタ M93R]]や[[グロック 18]]などの[[マシンピストル>機関拳銃]]用フォールディングストックもある。

''・テレスコピックストック(伸縮式銃床)''
 長さが調節可能なストック。スライドストック(引き出し式ストック)、または上記のフォールディングストックともども、リトラクタブルストック(収納式ストック)とも呼ばれる。
 運搬のさいに取り回しが良いよう設計された点はフォールディングストックと同様だが、数段階に調節可能なタイプは、使用者の体格や装備状況([[ボディアーマー]]など厚みのある服装の場合)に合わせることができる利点をもつ。
 [[AR-15>コルト AR15]]系の場合、バッファーチューブがストック内部にまで突き出している((ロッキーマウンテンアームズ社の[[パトリオットピストル>自動小銃/RMA パトリオット]]やM231ポートガンなど、ストックを取り外したモデルを見るとバッファーチューブが突き出しているのがわかる。))ため、フォールディング化が困難であったことから、その代用として使われた。
 全長の短縮という面ではフォールディングストックに劣るので、両者を組み合わせたタイプも登場している。

//''・カービンストック''
// 自動拳銃に装着し即席のカービンに仕立て上げる着脱式のバットストック。銃自体の性能が変わらずとも、銃床が追加されることで射撃精度は大きく向上する。
//[[ルガー P08]]の砲兵モデルなど、拳銃では心もとないが小銃を持つ余裕もない、というような職種に使われる。
//他には[[フルオート]]機構を備えた[[スチェッキン>USSR スチェッキン]]や[[M712>マウザー C96]]の他、装着することで[[バースト]]射撃が可能となる[[VP70>HK VP70]]が有名。
//近年ではバットストックだけでなくハンドガードや照準器まで追加して見た目を本格的なカービンにしてしまうものもあるが、そこまでやるぐらいなら小型の[[短機関銃]]を使えばいいので公的機関では採用されておらず、趣味性の高い製品となっている。
//↑内容として悪くはないですが、「カービンストック」は明らかに一般的な名称ではないです。
//また「そこまでやるぐらいなら」など口語的・断定的な表現が多く内容は改訂予定です(そもそも機能的に単に取り付けるだけの戦時のストックと、フレームを兼ねる現代的なものは機能も用途も別なので「カービンキット」などで分けるべきかと)

''・ホルスターストック''
 [[自動拳銃]]の[[ホルスター]]としても使用が可能なストック。
//カービンストック。
//↑「カービンストック」の項目同様一旦コメントアウト。
 ホルスターとしての機能性は低く、ホルスターとしての役割を与えることでストックと拳銃を一体化させて携行できることが利点となる。
 スチェッキン、M712、VP70のストックはホルスターストックでもある。

''・スライドファイアストック''
 [[AR-15>コルト AR15]]等のカスタムが盛んなアメリカで生まれた疑似フルオート用のストック。
 スライドとグリップを一体化し、銃本体をスライドさせ、指から放すことでトリガーが戻り連射を可能にする。詳細は[[ラピッドファイア]]のページを参照。

''・フィーチャーレスストック''
 アメリカのカリフォルニア州やニューヨーク州などの、より高度な銃規制に対応した構造のストック。
 固定ストックかつサムホール・または独立グリップとはならない形状のもので、いずれも片手で握って保持するのが困難になっている。
 銃規制に対応するためにはこのストックのみではなく、マガジンリリースの改造や[[フラッシュサプレッサー>フラッシュハイダー]]の装着不可(同等の機能を持たない[[コンペンセイター]]は可能)などを適用する必要がある。

''・スタビライジングブレイス(アームブレイス)''
 銃尾から伸びた棒状のパーツ先に腕輪がついており、前腕に固定することで銃の片手保持を容易にする……というのが表向きのだが、明らかにストックとして使えるようにデザインされているものが多い。
 アメリカにおいて短銃身の銃器にストックが付く場合、SBR(Short Barrel Rifle)として規制されるが、ストックレスの場合法律上ピストル扱いになり規制が緩いという点に着目して作られたアクセサリー。
 肩付け使用に関してATFの見解は合法・違法を二転三転((2014年時点では合法、2015年には違法としたが、現在はまた合法とされている。))している。

//クラシックスタイルのストックの種類
//いわゆる従来的な猟銃的なスタイルの製品のストックも、大量生産化が進んだことによって現在ではジャンル付けが確立されている。ほとんどはボルトアクション向けのため銃身を支える前部と後部の間が空いた「√」のような形状をしている。後部の頬付けする部位をコーム(とさか)と呼ぶのが特徴である。
//タクティカルストックほど明確な定義はないものの、多くのメーカやカスタムパーツショップでは一般的な呼称として以下のようなジャンル分けをすることが多い。タクティカルストック同様、複数のタイプを持つものもある。
//・ストレート・ストック
//最も一般的なスタイルのライフルストック。コームが銃身より低くまっすぐなため、立射時にアイアンサイトに顔をよく近付けることが可能で肩付けしやすい。
//・モンテカルロ・ストック
//高いコームを持つストック。頬をコームに置けるのでスコープとの併用に適している。他のスタイルでも高いコーム自体を「モンテカルロ・コーム」と呼ぶことが多い。
//・ロールオーバー・ストック
//モンテカルロより更に高く、中央が高い丸いコームを持つストック。頬かそれより上までコームが来るため、やや取り回しは悪いが頬にしっかりと固定できる。反動の強い大口径や散弾銃向けに多い。
//ヴァーミント(orヴァーミンター)・ストック
//先端が幅広のフォアエンドにモンテカルロかロールオーバーのコーム、更に幅や材料によって比較的重めに作られたストック。その名の通り、素早い害獣(ヴァーミント)を仕留めやすいよう、下向きに構えて操作しやすいスタイルとなっている。
//・ベンチレスト・ストック
//その名の通り、ベンチレストに置くことに特化したライフルストック。コームは銃身と同程度の高さで、固定した状態で左右に振りやすいよう上に向けて先細りになっており、天辺も底辺も地面に平行に近い角度となっている。  
//・サムホール(シルエット)・ストック
//コーム全体が高く、グリップを握るために親指を通す穴を空けたライフルストック。親指が根元まで入るため強いフィット感と操作性があるが、ほとんどは右利き向けに穴が彫られているため、左利きには使いにくい事が多い。
//この他にもマイナーなものやメーカ独自のスタイルを含むと、クラシックスタイルのライフルストックの種類は無数に存在する。
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CENTER:このページの画像は[[ウィキメディア・コモンズ>https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gunstock_anatomy.JPG]]から転載しています。
CENTER:転載に関しては、転載元の転載規約に従って行ってください。
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''「直銃床」「曲銃床」に関する項目・議論は明確な定義がないため、編集合戦の元となるためお控え願います''
//明確な定義がないことは事実であり、かつ説明がなければ控えていただく理由とならないため復文。
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