*散弾銃(Shotgun) [#rec28c68]
 筒状の薬莢内に直径数mmの弾丸(鉛玉)が数個〜数百個納められた「散弾」を使う銃の総称。
 発射と同時に散弾から発射された弾丸は広範囲に拡散する(拡散しない物も有るが)ため射程こそ短いが射角、命中率、破壊力のいずれも拳銃弾/小銃弾と比べて桁外れに高い。
 第一次大戦では塹壕内で頻繁に行われた。近接戦闘で散弾銃は威力を発揮し、その残虐性(被弾すると治療の施しようがない)からジュネーブ条約([[ハーグ条約>ハーグ陸戦条約]]?)で、戦争での使用が禁止されたほどである。もっともアメリカは、有効性ゆえにその後も第二次大戦やベトナム戦争でもこっそり使ってた様だが。
#author("2023-06-10T16:42:44+09:00","default:user","user")
*散弾銃 / Shotgun [#rec28c68]
 16世紀に野鳥撃ち(ファウリング)用の[[猟銃]]として誕生した、筒状の薬莢(ショットシェル)内に弾丸(ペレット)が数個〜数百個納められた「散弾」を使う銃の総称。対象や目的に応じた[[さまざまな弾種>散弾銃の弾薬]]がある。
 散弾を使う特性上、銃身はスムースボア(滑腔銃身)である((スラッグ(一粒弾)用に[[ライフリング]]が付いているものもある。))。またバレルに[[チョーク]](絞り)を付けることで散布界と射程を調整することが出来る。口径は主に[[ゲージ]]と呼ばれる単位を使用する(詳細は項目参照)。
//↑ゲージは本来滑空銃身時代の小銃の口径単位なので、特に独自というわけではないためコメントアウト。
 
 散弾銃は、[[二連式散弾銃]]のように[[狩猟用>猟銃]]や競技用としてポピュラーである。
 アメリカでは特にその歴史を通じて象徴的な武器であり、狩猟・対人戦の双方で大いに使われた。アメリカ英語では助手席のことを「ショットガン」と呼ぶことがあるが、これは開拓時代、銀行の現金輸送馬車が常に助手席に散弾銃を持った警備員を乗せていたことに由来する((ただし、この慣習自体はイギリスが発祥である))。
 こうした国民的な慣習から米比戦争以来、戦場に散弾銃を持ち込んできたのもアメリカである。第一次世界大戦が始まると、アメリカ軍によって制式火器として持ち込まれた散弾銃が、狭い塹壕内の近接戦闘で威力を発揮した。
 通常、発射された散弾は拡散するため、多少の目見当でも命中させることできる。初速が低くペレット一発一発の威力は大きくはないため、ペレットの小さなバードショットは暴徒鎮圧にも使われてきた。いっぽう至近距離で命中すると、拡散し切らないうちに大量の弾丸を集中して浴びせることになるため、対象は激しい破壊痕、または凄惨な[[銃創]]を残すことになる。その為被弾すると治療が難しく、激しい苦痛を伴う残虐性から、第一次・第二次世界大戦では兵士たちに恐れられた。
 特に第一次世界大戦の塹壕戦においてはその面制圧力は非常に有効であり、ドイツ軍は「トレンチガン(散弾銃)を持った敵兵を捕虜にしたらその場で射殺しても構わない」、「散弾銃は[[ハーグ陸戦条約]]に違反している」などといったプロパガンダで散弾銃を禁止させようと試みたほどであった。もっともこれは多くの俗説に反して、そもそもハーグ条約には特定の銃火器を禁止する項目はない((弾丸については存在する))ため、この訴えは審議された事はない。
 第一次世界大戦における有効性から、第二次世界大戦前後では多くの国で使用された。英国が冷戦時代、内紛や植民地における戦闘で各種銃火器を使用して得られたデータによると、[[アサルトライフル>突撃銃]]は11発に1回、[[5点射>バースト]]で用いた[[短機関銃]]は8発に1回という命中率であったが、散弾銃はおよそ5発に1回と非常に高い命中率を示したという。

 現在でもその制圧力から世界各国の軍や警察などの治安組織が装備し、命中率の高さから狩猟やクレー射撃用として民間にも広く普及している。
 特にアメリカのアクション映画、特に警察をモチーフとした作品ではごく当然のようにに登場し、銃撃戦のシーンで大暴れするが実際には、室内に突入する際に第一の障害となるドアのヒンジや鍵を破壊するために使われることが多く(実際にヒンジを破壊されたドアは、たとえ精巧な鍵を掛けていても大きな木の板か鉄板に同じである)、余程の事でない限り、撃ち合いで使用されることはないに等しく、警察車輌に搭載される高威力武器の座をM16のような自動火器に明け渡す機会が多くなっているようだ。
 映画やゲームなどではまるで大砲のような火力を持つように誇張され描かれる事も多いが、実際にはどれほど[[バレルを切り詰めたショットガン>ソードオフ]]でも弾の拡散する範囲は20m先で50cm四方程度が限界であり、また装薬のエネルギー自体も12ゲージでは強力なもので[[7.62mm×51 NATO弾>7.62mm×51弾]]と同等、一般的な8粒入り00-バックショット弾では一つ一つのペレットの威力は[[自動拳銃]]用の[[9mmパラベラム弾]]程度である。無論対人用途としては十分に強力であるが、一発で何人もの人間を吹き飛ばすような威力は無い。
 また鉛など比較的柔らかい金属で製造された弾を発射するために弾の貫通能力も低く、[[ノースハリウッド銀行強盗事件]]のように[[防弾チョッキ>ボディアーマー]]で身を固めた相手にはダメージを与えられなかった事例もある((NIJレベルで言うとバックショットの場合はII-A、スラグ弾はIII-Aで停弾可能))。これに関連して有効射程も[[ライフル>小銃]]に比べれば短く、散弾であれば70m程度、スラッグ弾でも100m程度でエネルギーが半減する。ただしそれでも[[拳銃]]よりは有効射程は長い。
 以上のような特性から、ボディアーマーの普及したベトナム戦争以降は軍用の武器としてはやや目劣りするものとなった。散弾の命中率に目を付けた米軍が歩兵の主力武器として研究していた事例([[CAWS計画>SPIW]])もあるが、上記のような射程や貫通力の問題はクリア出来ず計画は中止されている。

 こういった性質から現代戦の対人戦闘用としては向かず軍で運用される事が稀となった散弾銃であるが、2022年に勃発した[[ロシアによるウクライナ侵攻]]では、高度100m程の低空を飛ぶドローンに対しては散弾の命中させ易さと威力が両立しており有効である事から注目され運用されている。
 
 ショットシェルの材料としてプラスチック((かつては紙製のショットシェルが主流であり、前述の第一次世界大戦からしばらくは塹壕の泥濘など悪環境に耐える真鍮製のショットシェルが用いられていた。))が主流であるため動作の速い自動給弾では変形し給弾不良を起こしやすい、[[さまざまな弾種>散弾銃の弾薬]]によってエネルギーが様々である、といった理由から、従来は散弾銃における[[反動利用>ショートリコイル]]・[[ガス圧作動>ガスオペレーション]]などを利用した自動装填方式は信頼性が低く、中折れ式や[[ポンプアクション]]といった手動の装填方式が主流であったが、近年では製造技術の向上により、[[セミオート]]式や[[マガジン]]給弾式の散弾銃も多数製造されている。煩わしい操作をしなくてよい使い勝手の良さから、クレー射撃やハンティング用途向けに一定の需要があるため、近年も改良モデルが開発され続けている。

 散弾銃は、他の銃器と比べ弾丸のサイズが大きいために威力や使い勝手の異なるさまざまな弾種が扱えることから、アメリカを始めとする各国の警察組織でも採用されている。対象の制圧(殺傷)よりも、威圧効果や、暴徒鎮圧用に[[非致死性(ノンリーサル)ゴム弾>非致死性兵器]]を使用したり、ドアブリーチ(屋内突入時にドアのヒンジやロックを破壊すること)を行うためである。また弾丸が障害物を貫通しにくく、流れ弾を予防するためという理由もある。

 銃の所持規制の一つとして日本やロシアなどでは、[[ライフル銃>小銃]]を所持するためには規定年数を違反なく散弾銃を所有した経歴を求めており、こういった国では初めて所有する銃が散弾銃となる事が多い。
 この内、ロシアではこの規制と銃身がスムースボアであれば散弾銃に分類される銃器区分を逆手に取って、ロシアではスムースボアの扱いとなるランカスター方式((19世紀にイギリスのチャールズ・W・ランカスターが発明した銃身断面の内径側が楕円形となるライフリング。))のライフリングを[[SVD>USSR ドラグノフ]]や[[モシンナガン>小銃/ロシア帝国 モシンナガンM1891]]といったライフル銃に採用したTG3(([[カラシニコフ>イズマッシュ]]社が製造販売しているSVDにランカスター方式ライフリングを採用したロシアの銃器区分では散弾銃となるライフル銃。))やVPO-220((モロト社が製造販売しているモシンナガンにランカスター方式ライフリングを採用したロシアの銃器区分では散弾銃となるライフル銃。))などという、性質はライフル銃と同等ながらもに銃器区分上は散弾銃として扱われる銃器が製造販売されている。

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