*暗視装置 / Night vision

 肉眼で見通せない暗所を、光像を増幅して視覚化する光学装置。個人携行型のものは、「暗視鏡」「暗視眼鏡」「暗視スコープ」などとも呼ばれるが、現在は兵士の目に直接装着するゴーグルタイプなど、様々な形態のものが実用化されている。ちなみに、[[自衛隊]]では「暗視装置」の名称で装備化されている。

 第1、第2、第3世代に分類され、第1世代が最も古い形式の暗視装置ではあるものの、第2世代のものと並び、今も民生用として現役である。市販されているとはいっても、いずれも軍事目的で効果を発揮するため、輸出入や販売には様々な制限が存在し、もっとも新しい第3世代には特に強い規制が敷かれている。

 現在、軍用ライフルに装備されるものは、暗視機能のみのものと、照準機能や望遠機能を有するハイブリッドタイプの2種がある。後者はかなり大型でかさばるため、必要なときだけ従来の[[スコープ]]や[[ダットサイト]]を組み合わせて使える暗視機能のみの軽便なタイプと、ニッチを棲み分けている。 
 
***第1世代
 アクティブ(能動)式赤外線暗視装置と呼ばれるたぐいのもので、赤外線投光機と、目に見えない赤外線を可視光線に偏光するフィルターを装着した光学機器がセットのもの。第二次大戦末期にドイツ軍が世界で初めて実用化したのもこのタイプ。当時は電源含めて10kgを超える大仰な装置だった。その後小型化が進み、旧ソビエトなどではゴーグルタイプのものも開発されたが、別に投光器を必要とする欠点は変わらなかった。
 相手がパッシブ(受動)な赤外線光学機器を持っていた場合、赤外線投光機がハッキリと視認されて秘匿性どころか優位性も失われてしまうことから、軍事用としては早期に廃れた。しかし、車載用としては陸上自衛隊の74式戦車などに残っている例もある。
 また、現在はさらに小型化が進み、旧式化して機密指定を解除されていることから、もっとも安価なナイトビジョンとして民間向けに市販もされている。

***第2世代
 光増幅タイプのパッシブ式暗視鏡で、星明りのような小さな光源を増幅して可視化するところから、スターライトスコープとも呼ばれる。主な欠点は光源のいっさい無い全くの暗闇では使用できないことと、強すぎる光源があると内部の増幅管がオーバーロードしてしまうことなど。
 フィクションでは、目潰しをくらって一網打尽にされたりするためのガジェットとしても古くからお馴染みだが、強烈な光を受けても、装置が故障するか、安全装置によって停止するだけで、使用者の視力が奪われる(失明する)ということはない((人間の眼(網膜)がダメージを受けるのは、直射日光を長時間、あるいはスコープを通して直視した場合、あるいは[[レーザーサイト]]などのレーザー光が直接、眼に入った場合などである。))。


***第3世代
 赤外線を増幅・可視化するという意味では第1世代と同様の、パッシブ式暗視装置である。第1世代との違いは、遠赤外線を利用している点。物体は多かれ少なかれ遠赤外線(つまりは熱)を放射しているため、その熱分布を視覚化することで光像を得ることができる。サーマルスコープ(熱暗視鏡)とも呼ばれるゆえんである。
 この原理ゆえ、赤外線投光機などの光源が不要なうえ、自然光源の無い全くの暗闇でも使用可能。また、照明弾や投光機などの強い光源が視界にあっても光像が損なわれない強みをもつ。
 一方で、かつては遠赤外線センサーを極低温に冷却しなければならず、冷却装置がかさばるため、小型化が困難だった。そのため、車載型やヘリ搭載型は比較的早く実用化されていた一方、歩兵携行型の小型の装置は、冷却の必要のない受光素子が開発されるまで待たなければならなかった。
 現在は小型化技術が普及し、各国で現役の軍用ナイトビジョンとして広く採用されているが、最新鋭の技術を応用した現用装備であるため、民間市場に流れることはほとんど無い。

 実物はともかく、存在と知識が広く知られるにつれて、現在では第3世代ナイトビジョンもメディア作品にも数多く登場している。ただし、中には映像的な『演出』が加えられているものもある。
 例えば、[[プレデター]]の生来的視覚としてもお馴染みだが、赤外線カメラの映像としてもよく紹介されるあの温度の低い部分が青、高い部分が赤となるイメージは、判りやすく熱分布ごとにあとから色づけされたもの。旧世代のそれと同様、本来の第3世代ナイトビジョンは(緑や白黒などの)モノトーンの濃淡で光像を投影する。
 また、一部のメディア作品(『[[ロボコップ]]』や『ブルーサンダー』など)では、建造物の壁越しにサーマルスコープで人影をとらえるシーンが見られるが、実際には人体から発せられる遠赤外線は微弱で、コンクリートの壁越しに捉えることは非常に困難とされている。

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