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*ローラーロッキング / Roller-locking
ローラーロッキングは銃器の自動装填機構に用いられる薬室の閉鎖方式の一つ。[[ショートリコイル]]もしくは[[ディレードブローバック>ブローバック]]の作動機構と組み合わされる。
ドイツの[[MG42>グロスフス MG42]]に採用された閉鎖機構で、ボルト(遊底)の左右にせり出したローラーによって、バレル(銃身)とボルトは完全にロックされており、発砲の反動によってバレルが一定量後退(ショートリコイル)すると、ローラーがボルトに押し込まれ、ロックが開放される。
このMG42の開発過程で、バレルが後退しきる前にロックが外れてしまう現象が見られ、これをヒントに、より簡便な機構としてローラーロックを利用したディレードブローバックが開発された((この機構、慣例的に「ローラーロッキングによるディレードブローバック」と紹介されることがほとんどだが、実質的には"ロック(閉鎖)"していないことから、ロック機構の一種としてではなく、単に「ローラーディレードブローバック」とも呼ばれる。))。
ディレードブローバック型では、バレルとボルトは完全にはロックされておらず、ローラーによって緩やかに結合されているのみである。弾薬の発射後、圧力によってボルトは後退を始めるが、ローラーの摩擦抵抗によって薬室はすぐには開放されない。銃口から弾丸が飛び出し、発射ガスと圧力が十分に逃げたところでローラーがボルト内に押し込められ、ボルトが完全に後退して薬莢が排出される。
ディレードブローバック型は第2次大戦中からドイツで開発が進められていたが、実用となったのは戦後、スペインの[[セトメ モデロA>自動小銃/セトメ モデロA]]からである。後にセトメライフルの発展型である[[G3>HK G3]]を始めとして、長らく[[H&K>ヘックラー ウント コッホ]]社製銃器の基幹設計となった。現在ではローラーロッキングと言えば、狭義にはこのディレードブローバック型を示している。
ディレードブローバック型ローラーロッキングは、ローラーによってボルトの運動を減速させるため、[[ガスオペレーション]]のようなボルトの初動での強いトルクを低減させ、反動を抑える働きがある。加えてショートリコイル型と異なりバレルが固定されている上に、発砲による運動がほぼー直線上で行われるため、ボルトが回転するローテティング・ロックのように余計なベクトルが加わらない。これにより、[[セミオート]]、[[フルオート]]射撃ともに、高い命中精度を保つことができるとされている。
一方で、構造が複雑で高い工作精度を必要とする分、日々のメンテナンスはともかく、製造・修理コストが高い。ブローバックの性質ゆえ、燃焼速度の速い高圧カートリッジに向かず、弾薬を選ぶ傾向がある。ガスオペレーションのように、使用者がレギュレーター（調整子）でガスの流量をそのつど調整することはできないため、最悪、薬莢切れ((空薬莢が千切れてしまう現象。バレル内の腔圧が下がる前にボルトの後退が始まるため、空薬莢が、薬室に張り付いた状態で引っ張り出される力が加わってしまい、引きちぎられてしまう。))などの[[作動不良>ジャム]]が生じる((H&K社ではローラーと噛み合うロッキングピースの傾斜面を調整することで威力の異なる弾薬にも対応できるとしているが、使用者が簡単・即座に調整できるものではなく、弾薬選択の「幅」が限られる点には変わりない))。H&K社では、[[FN>ファブリク ナショナル]]社が開発した新型5.56mmNATO(SS109)に対応した[[HK33>HK HK33]]の改修に苦慮したとされ(後にHK33Eとして完成)、フランスでは、形式は異なるが同様のディレードブローバック構造を備えた[[FAMAS>GIAT ファマス]]において、近年採用した新型弾薬の薬莢が破損する問題が起き、対処が困難となったことから、改修を諦め代替を決定している。
一方で、構造が複雑で高い工作精度を必要とする分、日々のメンテナンスはともかく、製造・修理コストが高い。ブローバックの性質ゆえ、装薬量の多いカートリッジに向かず、弾薬を選ぶ傾向がある。ガスオペレーションのように、使用者がレギュレーター（調整子）でガスの流量をそのつど調整することはできないため、最悪、薬莢切れ((空薬莢が千切れてしまう現象。バレル内の腔圧が下がる前にボルトの後退が始まるため、空薬莢が、薬室に張り付いた状態で引っ張り出される力が加わってしまい、引きちぎられてしまう。))などの[[作動不良>ジャム]]が生じる((H&K社ではローラーと噛み合うロッキングピースの傾斜面を調整することで威力の異なる弾薬にも対応できるとしているが、使用者が簡単・即座に調整できるものではなく、弾薬選択の「幅」が限られる点には変わりない))。H&K社では、[[FN>ファブリク ナショナル]]社が開発した新型5.56mmNATO(SS109)に対応した[[HK33>HK HK33]]の改修に苦慮したとされ(後にHK33Eとして完成)、フランスでは、形式は異なるが同様のディレードブローバック構造を備えた[[FAMAS>GIAT ファマス]]において、近年採用した新型弾薬の薬莢が破損する問題が起き、対処が困難となったことから、改修を諦め代替を決定している。
こうした複雑な機構で高い性能を発揮しているのは、H&K社の優れた工作精度とインターフェイス設計あってのものという側面もあり、パキスタン製など他国製のコピーは必ずしも高性能な銃とはなっていない。
上記のような欠点もあってか、H&K社の最近の製品でもローラーロッキングの採用例が途絶えているが、同社が製造するG3ファミリーの命中精度の高さには定評がある。[[PSG1>HK PSG1]]や[[MSG90>HK MSG90]]、[[MP5>短機関銃/HK MP5]]などの派生型が、[[GSG9]]や[[SEAL]]などの名高い特殊部隊で使用されている。ドイツ軍でも[[G28>自動小銃/HK HK417]]が採用されるまで、旧主力歩兵銃であったG3が[[マークスマン>選抜射手]]ライフルとして転用されていた((ただし長距離狙撃銃としては[[ボルトアクション]]の[[AWM(G22)>小銃/AI アークティクウォーフェア]]が、以前から使用されている。))。MP5は、それまで「安価で軽便な携行自動火器」という位置づけを超えた短機関銃として、非常に高価ながら、取り回しのよい「簡易狙撃銃」として軍・法執行機関で広く使用されている。
[[自動拳銃]]では、[[CZ52>CZE CZ52]]でショートリコイル型、[[H&K P9S>HK P9S]]でディレードブローバック型が採用されているが、近年では採用例は見られない。
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#contents
***自動拳銃（ショートリコイル型）
-[[CZE CZ52]]
***自動拳銃（ディレードブローバック型）
-[[H&K P9S>HK P9S]]
***短機関銃（ディレードブローバック型）
-[[H&K MP5シリーズ>短機関銃/HK MP5]]
-[[キャリコ M900A>短機関銃/キャリコ M900]]
***自動小銃 （ディレードブローバック型）
-[[H&K G3シリーズ>HK G3]]
-[[H&K PSG1>HK PSG1]]
-[[H&K MSG90>HK MSG90]]
-[[セトメ モデロA>自動小銃/セトメ モデロA]]
***突撃銃（ディレードブローバック型） [#kg43423k]
-[[H&K HK33シリーズ>HK HK33]]
-[[H&K G41>HK G41]]
-[[セトメ モデロL>突撃銃/セトメ モデロL]]
***機関銃（ショートリコイル型）
-[[グロスフス MG42]]
***機関銃（ディレードブローバック型）
-[[H&K HK21シリーズ>HK HK21]]
-[[セトメ アメリ>グロスフス MG42]]
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#pcomment
