*ローラーロッキング
#author("2024-05-09T18:43:44+09:00","default:user","user")
*ローラーロッキング / Roller-locking [#o8269983]

 ローラーロッキングは薬室の閉鎖機構の一種。厳密には[[ショートリコイル]]型と[[ディレードブローバック>ブローバック]]型の2種類に分けられる。
 [[ショートリコイル]]型は[[グロスフス MG42]]に採用された閉鎖機構で、バレル(銃身)とボルト(遊底)はローラーによって完全にロックされており、バレルが一定量後退するまでロックは外れない。このため、「フルロック型ローラーロッキング」の通称もある。
 このMG42の開発過程で、バレルが後退しきる前にロックが外れてしまう現象が見られ、これをヒントとしてより簡便な機構としてディレードブローバック型(別名、ハーフロック式)ローラーロッキングが開発された。
 ローラーロッキングは銃器の自動装填機構に用いられる薬室の閉鎖方式の一つ。[[ショートリコイル]]もしくは[[ディレードブローバック>ブローバック]]の作動機構と組み合わされる。
 ドイツの[[MG42>グロスフス MG42]]に採用された閉鎖機構で、ボルト(遊底)の左右にせり出したローラーによって、バレル(銃身)とボルトは完全にロックされており、発砲の反動によってバレルが一定量後退(ショートリコイル)すると、ローラーがボルトに押し込まれ、ロックが開放される。
 このMG42の開発過程で、バレルが後退しきる前にロックが外れてしまう現象が見られ、これをヒントに、より簡便な機構としてローラーロックを利用したディレードブローバックが開発された((この機構、慣例的に「ローラーロッキングによるディレードブローバック」と紹介されることがほとんどだが、実質的には"ロック(閉鎖)"していないことから、ロック機構の一種としてではなく、作動機構として単に「ローラーディレードブローバック」とも呼ばれる。))。ちなみに、MG42のショートリコイル・ローラーロッキングの機構は、旧チェコスロバキアのCZ社が[[自動拳銃]]の[[CZ52>CZE CZ52]]でよく似た機構を採用している。

 ディレードブローバック型では、バレルとボルトは完全には結合されておらず、ローラーによって緩やかに結合されているのみである。弾薬の発射後、圧力によってボルトは後退を始めるが、ローラーによって圧力は分散され、薬室はすぐには開放されない。銃口から弾丸が飛び出し、発射ガスと圧力が十分に逃げたところでローラーがボルト内に押し込められ、ボルトが完全に後退して薬莢が排出される。
 ディレードブローバック式は第2次大戦中からドイツで開発が進められていたが、実用となったのは戦後、スペインの[[セトメ モデロA>自動小銃/セトメ モデロA]]からである。後に[[H&K>ヘックラー ウント コッホ]]社の多くの[[突撃銃]]や[[短機関銃]]で採用・発展され、現在ではローラーロッキングと言えば、狭義にはこのディレードブロック型を示している。
 ディレードブローバック型では、バレルとボルトは完全にはロックされておらず、ローラーによって緩やかに結合されているのみである。弾薬の発射後、圧力によってボルトは後退を始めるが、ローラーの摩擦抵抗によって薬室はすぐには開放されない。銃口から弾丸が飛び出し、発射ガスと圧力が十分に逃げたところでローラーがボルト内に押し込められ、ボルトが完全に後退して薬莢が排出される。
 ディレードブローバック型は第2次大戦中からドイツで開発が進められていたが、実用となったのは戦後、スペインの[[セトメ モデロA>自動小銃/セトメ モデロA]]からである。後にセトメライフルの発展型である[[G3>HK G3]]を始めとして、長らく[[H&K>ヘックラー ウント コッホ]]社製銃器の基幹設計となり、同社は自動拳銃の[[P9S>HK P9S]]にも採用している。

 ディレードブローバック型ローラーロッキングは反動が少なく、バレルが固定されている上に作動がすべて直線上(弾丸の発射方向)で行われるため、ボルトが回転するローラーロッキングのように銃や弾丸に別方向の力が加わらない。そのため、連射による射撃でも高い命中精度を保つことができるとされている。加えて、H&K社の各製品については人間工学的に優れたデザインと照準器の優秀さも相まって、練度の低い兵士でも短期間の訓練で命中率を向上できるとされている。
 一方で、構造が複雑で高い工作精度を必要とする分、製造コストは高くなり、繊細な整備を必要とする。また弾薬を選ぶ傾向があり、火薬量が多く、高いガス圧が出る弾薬を使用する銃に適するとされている(([[5.56mm x45弾]]のような小口径高速弾との相性が悪いとの説もあるが、諸説があり真偽は不明である。))。同種類でも、強装弾などの火薬量の異なる弾薬では[[作動不良>ジャム]]を生じる恐れもある(H&Kではローラーと噛み合うロッキングピースの傾斜面を調整することで威力の異なる弾薬にも対応できるとしているが、弾薬選択の「幅」が限られる点には変わりない)。
 ローラーディレードブローバックは、広く採用されている[[ガスオペレーション]]機構と異なり、ボルトを駆動させる長く重いロッドやバレルと平行するガスチューブが不要なため、フロント回りをシンプルかつ重量を低減できる。これにより[[フリーフローティングバレル]]とした際のバレル負荷は比較的小さく、またローラーと噛み合うロッキングピースの傾斜面を調整することで、拳銃弾からライフル弾まで対応できる。
 一方で、ディレードブローバック型では実質ロックを行っていないため、薬室の開放スピードがガスオペレーションよりも速い。ボルトの後退が始まったとき、ガス圧が充分に下がっていないと、空薬莢が薬室内に張り付いたままであるため、ボルトが薬莢を無理矢理引き抜こうとして引きちぎってしまう、いわゆる「薬莢切れ」が起きる。装薬量の違いやメーカー差異、炸薬の劣化といった腔圧(発射薬燃焼圧力)のバラつきに対して、使用者がガスオペレーション機構のようにレギュレーター(調整子)でガス圧をそのつど調整して対応することもできない。
 G3系ではこの薬莢切れを防ぐため、薬室内に接触面を減らして張り付きを抑えるフルートが設けられているが、それでも、[[5.56mmNATO>5.56mm x45弾]]弾は、より装薬量や口径の大きい7.62mmNATO弾よりも腔圧のピークが高いため((5.56mm弾・・・3,580 kg/cm2&br;7.62mm弾・・・3,240 kg/cm2))、[[FN>ファブリク ナショナル]]社が開発した新型5.56mm弾(SS109)に対応するさいは、[[HK33>HK HK33]]の改修((後にHK33Eとして完成。))に苦慮したという。こうしたことから、燃焼速度の速い高圧カートリッジに、ディレードブローバック型のローラーロッキングは向かないとされる。
 
 上記のような欠点もあってか、H&K社の最近の製品でもローラーロッキングの採用例が途絶えている。スイスの[[シグ]]社も、過去に[[SG510>シグ SG510]]で同様のローラー・ディレードブローバックを採用して一定の評価を得ていたが、ガスオペレーションにローラーロックを併用した[[SG530>シグ SG540]]で失敗して以降は採用していない。
 
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***自動拳銃(ショートリコイル型) [#z06a0360]
-[[CZ52>CZE CZ52]]

 上記のような欠点もあってか、H&K社の最近の製品でもローラーロッキングの採用例が途絶えているが、命中精度の高さには定評があり、高い精度を求められる特殊部隊用の装備や[[狙撃銃]]では根強い支持と需要がある。
 [[自動拳銃]]では、[[CZ52>CZE CZ52]]でショートリコイル型、[[H&K P9S>HK P9S]]でディレードブローバック型が採用されているが、近年では採用例は見られない。
***自動拳銃(ディレードブローバック型) [#b3f692ce]
-[[H&K P9S>HK P9S]]

***短機関銃(ディレードブローバック型) [#mbaffec2]
-[[H&K MP5シリーズ>短機関銃/HK MP5]]
-[[キャリコ M900A>短機関銃/キャリコ M900]]

***自動小銃 / 突撃銃 (ディレードブローバック型) [#w8426b53]
-[[H&K G3>HK G3]]
-[[H&K G41>HK G41]]
-[[H&K HK33>HK HK33]]
-[[H&K HK53>HK HK33]]
-[[シグ SG510]]
-[[セトメ モデロA>自動小銃/セトメ モデロA]]
-[[セトメ モデロL>突撃銃/セトメ モデロL]]

***狙撃銃(ディレードブローバック型) [#d546cafa]
-[[H&K PSG1>HK PSG1]]
-[[H&K MSG90>HK MSG90]]

***散弾銃(ディレードブローバック型) [#x54b05ee]
-[[SRMアームズ 1216>散弾銃/SRM 1216]]

***機関銃(ショートリコイル型) [#eaffb302]
-[[MG42>グロスフス MG42]]

***機関銃(ディレードブローバック型) [#d7e79f28]
-[[H&K HK21シリーズ>HK HK21]]
-[[セトメ アメリ>グロスフス MG42]]

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