*レーガン大統領暗殺未遂事件 [#y938d9d9]
 1981年、当時の第40代アメリカ合衆国大統領ロナルド・ウィルソン・レーガンが銃撃された事件。現在のところ、アメリカの現職大統領に直接危害が加えられた最後のケースである。
 3月30日(大統領就任から69日後)ワシントンD.C.、レーガン大統領はヒルトンホテルでの演説後、同ホテルを引き払おうとした所で、突如接近してきた暴漢ジョン・ワーノック・ヒンクリーJr.の銃撃を受けた。凶器はいわゆる『[[サタデーナイトスペシャル]]』と呼ばれる粗末な[[.22LR>口径]]の[[リボルバー>回転式拳銃]]、ローム RG14(シリアルナンバー;L731332)。弾薬には[[エキスプロッシブ カートリッジ]]が用いられたといわれる。
 弾丸は6発全てが発射され、一発が大統領の胸部に命中。他、ジェームズ・ブレイディ報道官が頭部に被弾、コロンビア特別区の警官トマス・デラハンティ、シークレットサービスのティモシー・マッカーシーも軽い怪我を負った(エキスプロシッブ・カートリッジが作動・爆発したかどうかは不明)。
 大統領は直ちにジョージ・ワシントン大学病院に搬送され、弾丸の摘出手術を受けた。当時既に70歳と高齢だったため安否が気づかわれたが、大統領は驚異的とも言える体力と回復力を見せ、一命を取り留めた。しかし、脳に損傷を受けたブレイディ報道官は、全身麻痺の重篤な後遺症が残ってしまった。
 犯人ヒンクリーは犯行後、逃亡も抵抗もせず、その場であっさりと身柄を拘束された。彼は映画『[[タクシードライバー]]』にのめり込み、同作の主人公トラヴィスをなぞるような行動を見せていた。同作で少女娼婦を演じたジョディ・フォスターに偏執的なラブレターを出し続けたあげく、彼女に無視されると、今度は映画と同じく大統領の暗殺に走ったのである(映画では大統領『候補』暗殺だったが)。
 レーガン大統領襲撃前には、前任のジミー・カーター大統領をつけ回し、テネシー州ナッシュビルで重火器不法所持で逮捕されている。

 この事件は、各方面に大きな波紋・影響を広げた。
 レーガン大統領は当時、高齢故の体力面への不安や、保守的・タカ派的な政治姿勢に対する反発などから支持が伸び悩んでいたが、重傷を負いながらも(時にはジョークさえ交えて)気丈に振る舞う姿が人々の共感を呼び、大きく支持を拡大した。そしてその後、2期8年の任期を勤め上げ、一時代を築くこととなる。
 一方、銃禍によるもっとも著名な被害者の一人となったブレイディ元報道官は、この事件を契機に銃規制運動のシンボル的存在となった。やがて彼を中心とした運動が実り、1993年、時限立法ながら連邦法としては初めての銃規制法、通称『ブレイディ法』が成立することとなる。
 これは[[AWB(連邦攻撃武器規制)>AWB]]とは別物で、民間人の銃器購入に際し、5日間の待機期間を設けて購入者の適正を確認するものだった(1998年には一部修正の上で延長されたものの、NRA(全米ライフル協会)を筆頭とする銃規制反対派の圧力で、2005年に失効している)。

 銃器では、[[ウージー>短機関銃/IMI ウージー]]が知名度を上げた。
 事件発生当時、護衛のシークレットサービス要員が、即座にスーツの下からウージーを取り出し身構える姿が多くのメディアで報じられ、人々に鮮烈な印象を残した。後日、「ショルダーストックを伸ばし切れていない」、「ボルトが[[コッキング]]されていない」といった批判もあったようだが、ともあれ事件と共に、ウージーは『大統領の守護神』として大いに名を上げたのである(なお、当時シークレットサービスが装備していたのは小型化されていないフルサイズのウージーであり、大きく重いウージーを常に携帯しなければならないシークレットサービスの苦労を気づかう声もあったとか)。

 そして、もっとも数奇な『その後』をたどったのが、暗殺犯ジョン・ヒンクリーJr.だった。
 彼は13もの罪で起訴されながら、1982年6月21日、なんと精神異常による心神喪失で無罪となったのである。皮肉にもヒンクリーは、最後まで『タクシードライバー』を地でいく運命をたどったのである。

 ただし、映画と全く同じとは行かず、ヒンクリーはワシントンD.C.のセントエリザベス病院に収容・拘束されることになる。その後もジョディ・フォスターの資料をひそかに院内に持ち込むなど問題を起こしていたようだが、近年、仮退院が認められたとの情報も伝わっている。
 なお、このヒンクリーの無罪判決は、連邦下院議会と全米の多くの州で、精神異常者の犯罪に関する法律改正のきっかけとなった。

***組織別装備 [#bb519b62]
|組織|短機関銃|拳銃|h
|シークレットサービス|[[IMI ウージー>短機関銃/IMI ウージー]]|(不明)|

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