*ボディアーマー / Body armor [#cfc16bb2]

 防弾ベストあるいは防弾チョッキの名前でも知られる、銃弾や爆弾の破片からの防護を目的とした衣服。第二次大戦後からアメリカを主とした各先進国のあいだで普及し始め、その材質も鉄板からより軽量かつ高性能を求めてケブラーやスペクトラ、最近ではザイロンといった繊維を束ねたもの(俗に云うソフトアーマー)や、セラミックなど用いた防弾板との組み合わせへと進化している。

 国際規格(NIJ規格0101.03)で決まっているボディアーマーの防弾性能は下表参照。

|防御クラス|ストップ可能な銃弾レベル|h
|~I|[[.22LR>口径]]|
|~II-A|[[9mm、.40S&W、.45ACP>口径#PistolAmmo]]|
|~II|[[9mm、.357Magnum>口径#PistolAmmo]]|
|~III-A|[[.357SIG、.44Magnum>口径#PistolAmmo]]|
|~III|[[ライフル弾>口径#RifleAmmo]]|
|~IV|[[.30-06>口径]][[徹甲弾>アーマーピアシング弾]]|

 
 繊維素材を用いたソフトアーマーは多くはベスト状に形成されており、比較的軽装で上衣の下に重ね着可能な単体のものと、防弾板や各種ポーチ類を組み合わせられるプレートポケット等を備えた、衣服の上に着るものの2種類がある。フィクションの中では、上衣なしでシャツの下に着込んでいても、外見から全く分からないものも登場するが、実際にはソフトアーマーだけでも相応の厚みと重量があり、はっきりとした着膨れが見て取れる。
 ソフトアーマー単体であれば、比較的軽量で身動きを取りやすいが、それだけでは弾が貫通しないだけで衝撃はそのまま伝わるため、被弾すれば重篤な打撲や骨折に繋がる可能性が高い。
 防弾板は現在ではセラミックタイプのものが最も防弾性能が高いが、柔軟性は皆無であるため衝撃を緩和する能力は低い。そのため、柔軟性のある金属やプラスチック、高分子材料のプレートやパッドで代替するか、併用することが多い。特に衝撃緩和に特化したプレートは「トラウマプレート」と呼ばれる。最新の防弾板を用いたボディアーマーは、ライフル弾のゼロ距離射撃の貫通だけでなく衝撃すら無効化するほどの性能に達しているが、重量は最大で十数kgにも達するため、重くかさばる点は依然として変わらない。
 防弾性能と機動力のどちらを重視したボディアーマーを用いるかは組織の方針や部隊・作戦の特性によって異なる。このため、ソフトアーマーと、防弾板を仕込んだプレートキャリアをそれぞれ用意し、状況に応じて重ね着するかいずれかを単体で着用するかを使い分けているケースも多く見られる。
 またボディアーマーはその性格上、通気性は皆無に等しく長時間の着用は訓練された者でも大きな負担となる。このため、イラク戦争のころからボディアーマー下の着用を前提としたコンバットシャツと呼ばれる衣服が登場している。これはBDUの着用部衣のみを薄手のTシャツのような生地に置き換えたもので、通気性をある程度向上させ負担を軽減することから、アメリカ軍をはじめ導入が各国で行われている。

 かつて日本を含め犯罪組織によく使用された[[トカレフ>USSR トカレフ]]等に使われる7.62mmトカレフ弾(特にロシア製)には、鉛でなく安価な軟鉄を弾頭にした貫通力の高いものが多く、各国警察機関でソフトアーマーを無効化する弾丸として恐れられた。
 アメリカでは拳銃弾の新製品が「コップ・キラー(警官殺し)」と呼ばれる、ボディアーマーを無効化する弾薬だとする都市伝説が頻繁に発生しており、中にはメディアによるバッシングや銃規制運動などの社会現象にまで発展した事例もある。
 例えば「銃身の磨耗を減らす」目的で施された弾頭のテフロン樹脂コーティングが高い貫通力を持つとされたKTW社の拳銃弾は、後の検証で実際は貫通力はむしろ低下すると示されたにもかかわらず、メディアバッシング時に適用された法令により現在でも幾つかの州で規制対象となっている。

 現在主流のボディアーマーは、上述したベストと防弾板によるシンプルなものであるが、柔軟性や軽量性と高い防弾性能を両立させる為の研究も進められている。
 例えば、「ドラゴンスキン」と呼ばれるボディアーマーは、ベスト全体に無数の小型鱗状プレートを配置した中世のスケイル・メイルのような構造をしており、着弾したプレートの下にあるプレートに衝撃を次々伝播させる事で、薄く軽量な金属板に衝撃緩和能力を持たせている。また、衝撃によって硬化するダイラタンシー流体などを用いた液状防弾素材のボディアーマーも登場している。
 いずれも従来のプレートタイプと異なり防弾部が柔軟なので身動きが取りやすいだけでなく、プレートの隙間や関節部などの、今まで守るのが困難だった位置もカバー可能という点で優れている。


 余談ながら、戦国時代の武将の鎧は火縄銃の弾を受けても貫通しないように作られたものも多く、一種のボディアーマーともいえよう。

----
#pcomment

トップ   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS