機関部を銃床のスペースに収めることで後方に下げ、銃身長を切り詰めることなく全体をコンパクトにした構造。従来と違い、グリップより後方に弾倉が配される独特のレイアウトが特徴である。その特異な外観は魅力的なもので、フィクションのなかで登場する未来銃の多くが、ブルパップスタイルでデザインされている。
軽便さの向上のため小銃を小型化しようする場合、カービンのように銃身を切り詰めるのが一般的である。だが銃身を縮めた場合、大幅なパワーロスや、騒音、発砲炎の増大、集弾性や命中精度の低下など、さまざまなデメリットを覚悟しなければならない。
そこで銃身長を維持したまま銃本体をコンパクトにすることが出来るブルパップ構造が古くから研究されてきた。銃身を切らずに、ストック長ぶんをまるまる全長からオミット出来るため、従来の小銃と同等の性能のままで、大幅な小型化が望めるという理屈だ。
しかし機関部が後方にあるブルパップ特有の問題もある。特に左利きの射手の場合、空薬莢が顔面に飛んでくるか、排莢口を頬で塞いでしまうため、排莢方向をスイッチできる機構を組み込むか、右利きに矯正する必要がある。近年は、ベルギー製のP90?のように弾倉を銃の上に装着して真下に排莢するものや、F2000のように空薬莢をチューブで前方に送ってから排莢するなど、工夫の施されたブルパップ銃も登場しているが、従来の銃ならば不要な仕掛けを施さなければならないということでもある。
また、全長が短いゆえに照門と照星の間隔が短く、アイアンサイトでの照準に不安がある。このため、ブルパップ銃の多くが低倍率望遠の光学照準器を、標準で装備している。
他にも、射撃姿勢のままの弾倉交換が難しい、機関部が顔の横に来るので難聴気味になることがある、各操作のレバーをすばやく操作しやすいようグリップハンド近くに配置するのも難しいなど、取り扱いに様々な難点がある。
80年代には、GIAT ファマス、ステアー AUG、エンフィールド L85などヨーロッパで多くのブルパップ突撃銃が開発されたが、上記のような使い勝手の悪さから大きな普及には至っていない。H&K G36のように、後発でありながらあえてブルパップ式を避けた銃*1や、中国のように一旦はブルパップ式(95式自動歩槍)を採用しながら、扱いにくさから従来式(03式)に立ち返った例もある。
一方、狙撃銃のような、大型の光学機器に加えて平均的な突撃銃の倍近い重量をもつライフルでは、多少の扱いにくさよりも軽量小型化、あるいは同重量とサイズでより長い銃身長を取れるメリットが注目され、ブルパップ式とされている新型ライフルが少なくない。重量級の大口径ライフルはとくにその恩恵が大きいため、バレットXM500やKSVKなど多くの最新対物ライフルがブルパップ式を選択している。
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