フルメタルジャケット弾 / Full Metal Jacket

 鉛や鉄などでできた弾芯(コア)を、銅やギルディング・メタル(真鍮の一種で、銅95%、亜鉛5%の合金)でできた(被甲)で包んだ弾丸。コアに、「メタル」を「ジャケットして(被せて)」いるので、『フルメタルジャケット』と呼ばれる。短縮して「FMJ弾」、俗称としては「ボール(Ball)」、あるいは「ハードボール(Hard Ball)」とも呼ばれる。日本訳では「被覆鋼弾」、「完全被甲弾」だが、一般にはあまり使われない。
 弾芯を金属で包む目的には複数あり、主なものは以下の通りである。

 ・鉛の残滓(かす)が銃腔や銃口にこびりつく(ファウニング、またはレディング)現象を防ぐため (特に、自動火器では作動不良を防ぐために重要である)
 ・弾丸の貫通力を高めるため
 ・弾丸の拡張や変形を防ぎ、被弾者に過剰な苦痛を与えないため
 ・弾芯の鉛が溶け出すのを防ぎ、土壌汚染や、被弾後の鉛中毒を極力減らすため*1

 弾薬としては一番基本的かつ「素直」な性格で、自動拳銃自動小銃など自動火器のほとんどは、フルメタルジャケット弾の使用を前提としている。またハーグ陸戦条約の禁止事項(不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用してはならない)に当たらないことから、軍用弾には基本的にフルメタルジャケット弾が推奨される。もっとも、これも近年では形骸化している内容である。
 ちなみに、映画『フルメタル・ジャケット』のタイトルも、このフルメタルジャケット弾にちなんでいる。

 なお、弾芯をすべて被甲で包むのではなく、先端のみ弾芯を露出させた『パーシャルジャケット弾』も存在する。ホローポイント弾の一種、ソフトポイント弾に類似した構造で、やはり柔らかい鉛が露出した先端が変形し、威力を増す。
 狩猟用などに使用されるが、前述のハーグ陸戦条約に抵触するとして、軍用としてはあまり使用されない。

 また、主に室内シューティングレンジ向けに使用されるTMJ(トータルメタルジャケット)*2と呼ばれる弾種もある。これはFMJよりも更に被覆範囲が広く、弾頭の底面まで完全に被覆したものである。弾芯の露出部がないため、鉛の飛散が大きく削減される利点がある。


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*1 近年では弾芯の鉛も代替素材になった弾=レッドフリー弾もある。
*2 ウィンチェスター社はBEB(ブラスエンクローズドベース)の名称で販売している

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