*フラグメンテーション / Fragmentation

 直訳すれば『断片化』。[[弾丸>口径]]が人体内で有効なダメージを与える時に起こる現象。
 一般には弾丸は貫通して穴を空けることによってダメージを与えると考えられがちであるが、大抵の弾丸の直径というのはせいぜい大きくても1.27cm(.50口径)を超えないものであり、この程度の「穴」を人体に空けるだけではよほど重要な血管や臓器にうまく命中しない限り、致命傷を与える事は無い。実際には弾丸は正しく着弾した場合、体内で爆発のような損傷を引き起こす事により、肉体に対してダメージを与えるのである。
 弾丸がこの爆発のようなダメージを与える際に、まさに爆発する爆弾自体のように粉々になってしまう現象を『フラグメンテーション』という。以下にどのようにしてそのような現象が起こるのかを説明する。

 弾丸は超音速の凄まじい速度で空気中を前進するが、これが水分の多い物体(即ち人体。人体の約70%は水分である)に突入すると、速度は同じであるにも関わらず、水中では空気中の20倍近くも抵抗があるため、弾丸に突如巨大な抵抗が発生し、弾丸は停止してしまう。
 しかし、弾丸が停止しても弾丸の運動エネルギー自体が消えるわけではない為、弾丸はより抵抗の小さい状態、すなわちバラバラの破片になって、運動エネルギーを発散しようとする。この働きにより、弾丸は前進をやめて超音速で全方向へバラバラと砕け散り、その衝撃で人体に爆発のような激しい損傷を与える。これが『フラグメンテーション』と呼ばれる現象である。

 ただし実際には、[[フルメタルジャケット弾]]のような強固な金属で弾丸が覆われている場合には、ジャケットが弾丸がバラバラになるのを抑えてしまうため、弾丸が停止せず人体を突き抜けてしまう事が多い。このため、拳銃弾ではJHP([[ジャケテッド・ホローポイント>ホローポイント弾]])、ライフル弾ではセミジャケット弾など、対人用途では弾頭の一部を露出させるような形状にすることで、フラグメンテーションを起こしやすく工夫している。
 拳銃弾の場合は、弾速が低く、また弾頭の質量が大きい事から、先端の一部が膨れ上がるような『マッシュルーミング』や『エキスパンション』と呼ばれる変形現象を起こすが、これはエネルギーが低いため弾丸が砕け散るに至らず、膨らんだり、ヒトデのような先鋭化した形状に変形するに留まっているだけで、原理は同じものである。
 弾薬大手のフェデラルなどでは、法執行機関向けの対人弾の性能表において、弾丸が体内(を模したジェル)に突入した際に、どの程度弾丸が消滅してしまうか(即ち、粉々に爆発してしまうか)を示す事で、その弾丸のフラグメンテーションの度合いを示している。

 こうしたフラグメンテーションの原理はたびたび誤解され、『弾丸の破片が体内を切り裂くことで大きなダメージを与える』現象とも言われて来た。この誤解によってG2 RIP弾のような、『最初から弾がバラバラの破片を繋げたもの』のようになっているような弾丸も登場したが、『普通の弾丸がバラバラになるような爆発的現象が生じること』こそがフラグメンテーションの有効性であり、バラバラになりやすい弾丸は単に体内で別々の破片として貫通するのみで、爆発的なダメージを与える事は無い。
 こうしたフラグメンテーションの原理はたびたび誤解され、『弾丸の破片が体内を切り裂くことで大きなダメージを与える』現象とも言われて来た。この誤解によってG2 RIP弾のような、『最初から弾がバラバラの破片を繋げたもの』のようになっている弾丸も登場したが、『普通の弾丸がバラバラになるような爆発的現象が生じること』こそがフラグメンテーションの有効性であり、バラバラになりやすい弾丸は単に体内で別々の破片として貫通するのみで、爆発的なダメージを与える事は無い。

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