*ダットサイト / Dot sight [#o16ca016]

 ハーフミラー上に投影した光点(もしくは図像)で照準を行う小火器用光学照準器の一種。近中距離用の照準機器で、[[スコープ]]と違い等倍のものが普通である。[[アイアンサイト>オープンサイト]]に比べて格段に早い照準動作が可能なので、軍民問わず欠かせないアイテムとして広く普及している。リフレックス・サイト、レッド・ドット・サイト、リフレックス・ドット・サイトなどの名称も使われる。ちなみにダットサイト(ドットサイト)の「ダット」とはもちろん「dot(点)」のこと。

#ref(dotsight.jpg,around,right,nolink,ダットサイト)
 ダットサイトのハーフミラーは僅かに湾曲しており、投影像が無限遠で結像する仕組みとなっている。投影像はどの角度から覗き込んでも必ず狙点に投影される((これをパララックス・フリー(視差無し)という。ただし、ダットサイトの場合およそ40m以上の距離でないとパララックス・フリーとならない。))ため、実際にサイトを覗いてみると、あたかも遥か彼方の宙空に、光点がポツンと浮かんでいるかのように見える。投影像は様々な変化を加えることが可能であり、光点の色・大きさ・強さを調整して見やすくしたり、モデルによってはスコープのようなレティクル像を表示することも可能である。
 従来のアイアンサイトが、照星(フロントサイト)と照門(リアサイト)とを一直線に目標と結ぶ必要がある一方、ダットサイトは光点ひとつを目標に重ねるだけで正確な照準が可能だ。また、薄暮時に暗く霞んでしまうことが無く、肉眼の焦点をサイトから目標に移す手順が不要なことも、アイアンサイトより優れている。モデルによっては双眼鏡やスコープ同様に偏光レンズを使用しており、肉眼よりも風景に紛れた標的を発見しやすい効果もある。
 ただ、ダットサイトの多くは電源を必要とし、故障の可能性もゼロではないことから、不意に使用不能に陥る危険性がある。また、大気の状態などから[[零点規正(ゼロイン)>ゼロイン]]が僅かにズレることがあり、アイアンサイトとの併用は欠かせないものとなっている。なお、併用のさいにダットサイトと照準点を一致させて、アイアンサイトで同じ距離を狙えるよう調整しておく事をCo-Witness((今のところ一貫した和訳が存在しないが、共通視点ないし共通照準とでも言うべきか))((銃の種類によってはこれは非常に困難で、レールやアイアンサイトのカスタムが必要となる。特に標準では非常に低い位置に設置されている[[AK>USSR AK47]]タイプのアイアンサイトでは顕著。))と呼ぶ。
 ただ、ダットサイトの多くは電源を必要とし、故障の可能性もゼロではないことから、不意に使用不能に陥る危険性がある。また、大気の状態などから[[零点規正(ゼロイン)>ゼロイン]]が僅かにズレることがあり、アイアンサイトとの併用は欠かせないものとなっている。なお、併用のさいにダットサイトと照準点を一致させて、アイアンサイトで同じ距離を狙えるよう調整しておく事をCo-Witness((今のところ一貫した和訳が存在しないが、共通視点ないし共通照準とでも言うべきか。))と呼ぶ((銃の種類によってはこれは非常に困難で、レールやアイアンサイトのカスタムが必要となる。特に標準では非常に低い位置に設置されている[[AK>USSR AK47]]タイプのアイアンサイトでは顕著。))。

 ダットサイトにはチューブレス(オープン)タイプとチューブタイプの二種があり、用途や使用状況に応じて使い分けられている。前者は軽量コンパクトな一方、外力によって破損しやすく、剥き出しの光源部に埃やゴミなどが詰まって使用不能となる場合がある。後者は、光源やグラス部分が頑丈なチューブで守られるため外力や汚れに強いが、価格を抑えにくく、重くなりがちである。
 チューブレスタイプは、スピードシューティングなどの競技用としてよく見られるが、軍用でもスコープのバックアップ用サイトとしてごく小型のモデルが普及している。一方チューブタイプは、主に軍用主力ライフルの標準サイトとして普及しているが、それらとほぼ同サイズのものがピストル競技で使用される例も少なくない。2000年代後半には、非常に小型軽量なチューブタイプダットサイトも登場しており、特質上ニーズを棲み分けているようで、両者が互いに競合するケースもある。
 
 光源は主にLEDだが、トリチウムや自然光を取り込んで光源とする、電源不要なものも存在する。アメリカのEOTech(イオテック)社などが供給する「ホログラフィック・サイト(ホロサイト)」なども、ダットサイトと同様の効果を発揮する照準機器だが、レーザーホログラムを利用しているため原理・構造は異なる((ダットサイトは、パララックス・フリーとなる距離は決まっているが、ホログラムは光像に位相情報が含まれている3次元像であり、距離によって狙点とレティクルがずれるといったことはない。))。
 ダットサイトはスコープと異なり等倍が基本の照準器であるが、遠距離にも対応できるよう接眼部手前に付けるマグニファイアーもしくはブースターと呼ばれる簡易の固定倍率拡大鏡のオプションも存在する。マウントによってはフリップ機能がついており、脱着することなく倍率を切り替えることができる。また、軍・法執行機関向けのダットサイトの中には、パッシブ式の[[暗視装置]]と組み合わせ可能なモードを持つモデルや、レーザーサイトと統合された小型モジュールモデルなどの上位モデルも存在する。

 ダットサイトの元となった、ハーフミラーを利用したリフレックス・サイトの特許はかなり古く、1900年のイギリスで取得されている。しかし当時の技術力や信頼性の問題で、小火器用のものが普及するのは大きく後の事となる((同様の技術は第1次・第2次世界大戦中は兵器用として各国で研究・開発され、ドイツやフランスなどのヨーロッパ諸国が先駆けとなり、戦闘機用の照準として広く採用された。))。第2次大戦後の1947年には、ダットサイトの元祖とも言うべき"Nydar reflector sights Model 47" と "Giese Electric Gunsight" が登場している。いずれも狩猟を目的とした、[[散弾銃]]用の光学サイトであった。前者はチューブレスタイプで、太陽光などをプリズムを通して採光しレティクルを投影するもので、暗いところでは使えなかった。一方、後者はチューブタイプでサイズも握りこぶしほど。バッテリー式で電気的にレティクルを投影する仕組みを採用していた。

 LEDによって赤い光点を投影する、いわゆる小火器用のレッド・ドット・サイトが登場したのは、1975年のこと。スウェーデンのエイムポイント社(Aimpoint AB)で開発された『エイムポイント・エレクトロニック』がそれである。LEDを光源とし水銀電池を電源としたことで1500時間から3000時間という長寿命を実現し、実用性の高い、ヘビーデューティなダットサイトの先鞭を付けた。
 こうしたエイムポイント社の電子照準器は冷戦時代、試験的に導入された特殊部隊などで高い評価を受け、21世紀現在では『コンプM2』などのモデルが欧米各国軍の一般部隊でも標準照準器として広く採用されている。さらにM2の寿命を7倍に伸ばし、入手しやすい単三電池を使用した『コンプM4』、チューブ型ながら非常にコンパクトで頑丈で人気の高い『Micro』シリーズなど多彩なバリエーションを持つ。
 
 大変便利な道具なのだが、実際に使ってみるまではその性能が実感しにくく、取り付けると銃器のフォルムを崩してしまうせいか、日本の作品では登場頻度は低かった。最近はサバイバルゲームやFPSゲームの普及に伴って登場の機会も増えつつある。一方、アメリカを始めとした欧米のガンアクション映画やFPSゲームなどでは古くから定番のアイテムとなっているが、時折前後逆に誤って装着されているなど、如何な銃器大国であっても全員が全員「ミリタリーオタク」ではないことを教えてくれるアイテムでもある。
 ちなみにFPSゲームでは(ゲームのシステムとして組み込まれていない限り)故障のリスクを考慮する必要がないことから、モニターの情景を視認しやすいチューブレスタイプのダットサイトが比較的好まれ、著名なFPSゲームでは、チューブタイプと並んでメインのダットサイトとして用意されていることが普通となっている。
 
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