ダットサイト / Dot Sight

 1970年代初めに開発された、ハーフミラー上に投影した光点(もしくは図像)で照準を行う小火器用光学照準器の一種。近中距離用の照準機器で、スコープと違い等倍のものが普通である。アイアンサイトに比べて格段に早い照準動作が可能なので、軍民問わず欠かせないアイテムとして広く普及している。リフレックス・サイト、レッド・ドット・サイト、リフレックス・ドット・サイトなどの名称も使われる。ちなみにダットサイト(ドットサイト)の「ダット」とはもちろん「dot(点)」のこと。

ダットサイト

 ダットサイトのハーフミラーは僅かに湾曲しており、投影像が無限遠で結像する仕組みとなっている。実際にサイトを覗いてみると、あたかも遥か彼方の宙空に、光点がポツンと浮かんでいるかのように見える。
 従来のアイアンサイトが、照星(フロントサイト)と照門(リアサイト)とを一直線に目標と結ぶ必要がある一方、ダットサイトは光点ひとつを目標に重ねるだけで正確な照準が可能だ。また、薄暮時に暗く霞んでしまうことが無い点でも、アイアンサイトより優れている。
 ただ、ダットサイトの多くは電源を必要とし、故障の可能性もゼロではないことから、不意に使用不能に陥る危険性がある。また、大気の状態などから零点規正(ゼロイン)が僅かにズレることがあり、アイアンサイトとの併用は欠かせないものとなっている。(バックアップ)アイアンサイトと照準点を一致させておき、ダットサイトが故障した場合でもアイアンサイトで同じ距離を狙えるよう調整しておく事をCo-Witness*1*2と呼ぶ。
 ダットサイトにはチューブレス(オープン)タイプとチューブタイプの二種があり、用途や使用状況に応じて使い分けられている。前者は軽量コンパクトな一方、外力によって破損しやすく、剥き出しの光源部に埃やゴミなどが詰まって使用不能となる場合がある。後者は、光源やグラス部分が頑丈なチューブで守られるため外力や汚れに強いが、価格を抑えにくく、重くなりがちである。近年のゲームではオープンタイプのものが多く登場しているが、実際にはオープンタイプのものの軍事的な使用例は少ない*3。これはゲームでは枠が丈夫で太いチューブタイプのものは視野が悪く、プレイヤーにとって不便である為と思われる。
 
 光源は主にLEDだが、トリチウムや自然光を取り込んで光源とする、電源不要なものも存在する。「ホログラフィック・サイト(ホロサイト)」なども、ダットサイトと同様の効果を発揮する照準機器だが、レーザーホログラフを利用しているため原理・構造は異なる。
 また、軍・法執行機関向けのダットサイトの中には、パッシブ式の暗視装置と組み合わせ可能なモードを持つ、上位モデルがある。
 大変便利な道具なのだが、実際に使ってみるまではその性能が実感しにくく、取り付けると銃器のフォルムを崩してしまうせいか、日本の作品で登場する頻度はいまのところ低い。いっぽう海外の、主にハリウッド映画などでは定番のアイテムとなりつつある。 

 ダットサイトはその多くが等倍ではあるが、像を拡大するテレスコーピック機能を付加するテレコンバージョンアダプター等と呼ばれるものがある。主にチューブ型のダットサイトやホロサイトに対応している。マウントによってはフリップ機能がついており、使用の度に脱着することなく使用できる。
 またその逆で、近年ではスコープのバックアップサイトとしてダットサイトが用いられるケースが増えつつある。この用途としては、あくまでバックアップ・緊急用である事から信頼性に関わらず徹底した小型化が可能なオープン型のダットサイトが多く用いられている。

 ダットサイトの製造メーカーは、米軍の標準ダットサイトを供給しているスウェーデンのAimpoint(エイムポイント)社や、ホロサイトを製造しているアメリカのEOtech(イオテック)社が、軍用モデルを広く供給していることから日本国内でもよく知られている。


このページの画像は東京マルイから転載しています。
転載に関しては、転載元の転載規約に従って行ってください。


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • T1の後継のT2が候補に挙がってませんでしたっけ? -- 三流陸曹? 2015-12-12 (土) 13:27:57
  • ↑そうです。T2が候補に入っていたのと、「T1は小型で近年人気のダットサイト」と聞いていたので、T1が軍に採用されていない事に驚いたという次第です。 -- 2015-12-12 (土) 14:56:14
  • どうもaimpointとしてはT2に切り替えて行く方針のようですね。正式装備かはわかりませんがMEUがT1を使用している画像があったハズですね。 -- 三流陸曹? 2015-12-12 (土) 17:01:01
  • ロシア製のダットサイト、というかリフレックスサイトになりますがOKP-7というサイトにはレンズの周りに囲うように曲がった鉄板でレンズを保護していますが、下側だけレンズの囲いが切れているのはAKのようなタンジェントサイトが見えるようにするため、という認識でよろしいのでしょうか? -- 2017-06-21 (水) 00:18:29
  • どちらかと言うと、下げるだけ下げる為にAKのトップカバーと干渉する部分を切っているんじゃないかな。下のページでAKS-74U系のリアサイトに視点合わせてる画像あるけど、レンズ範囲内に見えるし。
    ttp://russianoptics.net/okp7.html -- 2017-06-21 (水) 02:18:35
  • まぁどっちにしろ、cowitnessを取るための設計であるのは間違いないでしょうね。(何故かASの画像だとかなり上に付いてるので意味なさそうですが…) -- 2017-06-21 (水) 05:10:13
  • ライフルに斜めにダットサイトなりアイアンサイトつけるカスタムって、競技射撃でしかみないカスタムなんですかね?それとも軍なんかでもあるカスタムなんでしょうか? -- 2017-12-27 (水) 22:06:40
  • とりあえず米軍だとNSNの付いたオフセットサイトとかはないっぽいから、正規のアクセサリ限定で考えると無理かも? -- 2017-12-27 (水) 22:28:14
  • 実際の使用例は知らんけど米軍のCSASSトライアルではバックアップサイトは45度角という条件だった。
    まるっきり趣味の世界の話というわけではないだろう。 -- 2017-12-27 (水) 22:31:00
  • なるほど、ありがとうございます。 -- 2017-12-27 (水) 22:38:57
お名前:

*1 今のところ一貫した和訳が存在しないが、共通視点ないし共通照準とでも言うべきか
*2 銃の種類によってはこれは非常に困難で、レールやアイアンサイトのカスタムが必要となる。特に標準では非常に低い位置に設置されているAKタイプのアイアンサイトでは顕著。
*3 ただし競技用途では普通に用いられており、照準性能に劣る訳ではない

トップ   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS