*ストック / Stock
 肩に当てることで射撃の体勢(照準のぶれ)を安定させ、発砲時の反動や跳ね上がりを抑える部品。日本語では銃床(じゅうしょう)とも表記する。
 古くは木製で、添え手で握るフォアエンド部分から、グリップ後方の肩に当てるバットストック(Buttstock)部までが一体となっていたが、現代軍用ライフルは[[狙撃銃]]を除いて、ほぼこのバットストック部が独立している。普通、このストックを備えるものを[[ライフル>小銃]](もしくは[[カービン>騎兵銃]])と呼ぶが、[[拳銃]]に装着するカービンストックと呼ばれるものも存在する。精密射撃が求められる狙撃銃では調節可能なチークピースを備えている物も多い。素材はクルミなどの木材の他、スチールやアルミ合金などの金属素材、またはプラスチックなどのシンセティック素材が用いられる。

 ストックの歴史は曲銃床から始まった。曲銃床タイプのストックは、遠くの敵を正確に狙い撃つため、目線と銃身の高さがうまく一直線になるように適度な角度がついており、自然に射撃体勢をとることができる。
 ストックの歴史は曲銃床から始まった。曲銃床タイプのストックは、構えたさいに照準線と弾道とのズレが最小となるため、光学照準器抜きで考えれば、精密射撃には欠かせないレイアウトである。((頬骨が発達している東洋人(モンゴロイド)では、曲銃床の方が、構えた際に頬骨がストックに当たらなくて構えやすいという話もある。このためか、ソビエトの[[AK47>USSR AK47]]が直銃床化していく一方で、中国製コピーの[[56式小銃>USSR AK バリエーション]]は曲銃床を守り続けていた。))
 曲銃床の銃は発射の反動の方向とストックの角度がずれているため、射手への負担を軽減できる反面、撃った反動で銃身が跳ね上がってしまう特性を持っていた。しかし、[[ボルトアクション]]式のライフルが主流であった時代、戦闘はまだ「1発撃つ度に弾薬を再装填し、再び狙いなおす」というゆっくりしたものだったので、銃身の跳ね上がりもさほど問題にはならなかった。
 しかし、第二次世界大戦を経て、連発・連射が可能なライフルが登場すると、この跳ね上がりが問題になってくる。アメリカ軍が開発したオートマチック・ライフル[[M1 ガーランド>スプリングフィールド M1]]を[[フルオート]]射撃可能にした「M2」や「[[M14>スプリングフィールド M14]]」といったライフルは、ガーランドと同じ曲銃床を採用していたため連射時の跳ね上がりがひどく、ほとんど[[セミオート]]でしか使い物にならなった。

 本来の役割以外としては、銃を前後逆向きに持ってストック部を打撃武器として使ったり、物を破壊する場合に利用することもある(特に映画などでは、相手を気絶させるシーンに用いられることが多い)。
 本来の役割以外としては、銃を前後逆向きに持ってストック部を打撃武器として使ったり、物を破壊する場合に利用することもある。映画などでは、相手を気絶させるシーンに用いられるケースが多いが、現代の[[自衛隊]]の「自衛隊銃剣格闘術」でも、マガジンなどとともに、ストックによる打撃が採り入れられ、実際に訓練が行われている。
 ただし、現代のプラスチックや軽合金製の銃床は強度面で不安があり、打撃には不向きとされている。

***ストックの種類
''・ストレートストック、フィクスドストック(固定式ストック)''
 [[M16>コルト AR15]]や[[AK47>USSR AK47]]に見られるような、バットストック部が機関部に固定されているタイプのもの。銃身とストックが一直線となっている直床と、旧タイプの小銃のように、ストック部がやや下に下がっている曲床がある(それぞれの違いや利点などについては、上記説明参照)。現代の[[突撃銃]]において、曲床のものは既に旧式になりつつあり、[[AK47>USSR AK47]]系統やその派生、コピー系統以外にはほとんど見られない。
 しかしながら、ストックを直床にする必要がないボルトアクションライフル、特に狩猟用の大口径のものなどは、直床にすると肩にまともに反動を受けるというデメリットもあって、曲床のものが多数存在する。
 下記に挙げた名称は、外観もしくは機能からつけられた名称だが、ほとんどのストックは下記のうち2、3種の特徴を併せ持つのがふつうである。例えばドイツの[[G36>HK G36]]の場合、フォールデング・スケルトン・ストレートの3タイプに当て嵌まる。 

''・ストレートストック''
 [[M16>コルト AR15]]に見られるような、銃身から肩当までが一直線となっているデザインのストックのこと。発砲時の跳ね上がりの抑制に優れるため、[[突撃銃]]などの現代フルオートマチックライフルのほとんどがこのデザインのストックを備える。直銃床とも。
 軍用アサルトライフルでは、旧タイプの小銃のようにストック部がやや下に下がっている曲床は既に旧式になりつつあり、[[AK47>USSR AK47]]系統やその派生、コピー系統以外にはほとんど見られない。

''・フォールディングストック(折り畳み式ストック)''
 運搬のさいに取り回しが良いよう、折り畳むことが可能となっているストック。横に折り畳めるタイプや前方に倒すタイプが多いが、[[ウージー>IMI ウージー]]のように機関部の下に折り畳むタイプもある。横に折り畳むタイプの場合は、排莢口を塞がないよう、左サイドに折り畳むか、畳む角度を若干下げるような工夫が施されている。
 また[[M93R>ベレッタ M93R]]や[[グロック 18]]などの[[マシンピストル>機関拳銃]]用フォールディングストックもある。

''・テレスコピックストック(伸縮式ストック)''
 使用者の体格や装備状況([[ボディアーマー]]など厚みのある服装を着用している場合)に合わせて、ストックの長さが調節可能となっている。スライドストック(引き出し式ストック)ともいう。上記のフォールディングストックともども、リトラクタブルストック(収納式ストック)とも呼ばれる。
 ストックの長さが調節可能なストック。スライドストック(引き出し式ストック)、または上記のフォールディングストックともども、リトラクタブルストック(収納式ストック)とも呼ばれる。運搬のさいに取り回しが良いよう設計された点はフォールディングストックと同様だが、数段階に調節可能なタイプは、使用者の体格や装備状況([[ボディアーマー]]など厚みのある服装を着用している場合)に合わせることができる利点をもつ。
 全長の短縮という面ではフォールディングストックに劣るので、両者を組み合わせたタイプも登場し始めている。

''・フィクスドストック(固定式ストック)''
 バットストック部が機関部に固定され、上記のリトラクタブルタイプのような、収納や伸縮機能を持たないストックのこと。上記2種と区別するための用語である。ただし狙撃用ライフルや競技用精密射撃ライフルに見られるような、肩当やチークピースが調節可能なタイプでもフィクスドストックと呼ばれる場合もある。
 全長が長くなるため取り回しでは不利となるが、「ガタ」が少ないため、精密な射撃を要求される特殊部隊の装備([[MP5>HK MP5]]など)にもよく用いられている。

''・スケルトンストック''
 肉抜き加工([[SIG550>シグ SG550]]等)が施されていたり、金属のワイヤーやパイプを組み合わせて([[スコーピオン>CZE Vz61]]等)作られていたりと、最低限の骨組みのみで構成されたストック。このタイプが採用されるのは、軽量化が主な理由だが、折り畳んだ状態で排莢口を塞いでしまわないため、スケルトンストックを採用している銃もある。
 肉抜き加工([[SIG550>シグ SG550]]等)が施されていたり、ワイヤー(金属線)やパイプを組み合わせて作られていたりと、最低限の骨組みのみで構成されたストック。なお、ワイヤーを折り曲げて作られたものはワイヤーストックという([[スコーピオン>CZE Vz61]]等)。
 このタイプが採用されるのは、軽量化が主な理由だが、折り畳んだ状態で排莢口を塞いでしまわないため、スケルトンストックを採用している銃もある。
 普通はライフル系の銃に備わっているが、[[リボルバー>回転式拳銃]]([[SAA>コルト SAA]]など)に装着するストックも存在する。これはリボルバーカービンのような固定式ではなく、簡単に着脱することが可能となっている。

''・サムホールストック''
 ストレートストックとピストルグリップを組み合わせたような形状をしている。ピストルグリップ風に握るため、親指を通すための穴が開いている。狙撃銃や競技用銃でみられるが、ピストルグリップを有する民間転用アサルトライフルが規制されている地域で、法的に合致するようこのタイプに改修したものも少なくない。

''・ホルスターストック''
 [[自動拳銃]]の[[ホルスター]]としても使用が可能なストック。フルオート機構を備えた[[スチェッキン>USSR スチェッキン]]や[[M712>マウザー C96]]の他、ストックを装着することでバースト射撃が可能となる[[VP70>HK VP70]]が有名。
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