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*スタンガン/Stun gun [#m6c7c9be]
 二本の電極から相手の体に直接電流を流すことで、一時的に行動不能にする非致死性の護身用の武器。「Stun(スタン)」とは英語で気絶を意味する。

 電流を近接武器に流して相手を牽制する試みは電気の発見以来続けられて来たが、現代的な携帯性が高く製品化されたものは、1935年にキューバのシリーロ・ディアスが警察用に開発したものが世界初と考えられている。これは腰ベルトなどに吊るす約200gのバッテリーにコード接続された手袋から1500Vの電圧を発するもので、パトロールにも携行できるよう軽量化されていた。
 またアメリカでは牧畜用に1950年代にいわゆる「牛追い棒」に電極を搭載したものが作られたのが始まりである。
 その後、1980年代に犯罪者の人権や女性・ビジネスマンなどの護身などが重要視されてきたことで、致命性の低い電気式のいわゆる「スタンガン」が民間製品として広く流通し始めた。

 主流はシェーバーのような寸法・形状の携帯機器型のものであるが、日常的に違和感なく携帯できるように携帯電話やペン、口紅、ステッキといった日用品に偽装されたものも多い。
 また精神病院や警察機構向けの、リーチや防護範囲が広い警棒型やシールド型のものも登場した。
 主流はシェーバーのような寸法・形状の携帯機器型のものであるが、日常的に違和感なく携帯できるように携帯電話やペン、口紅、ステッキといった日用品に偽装されたものも多い。中にはキーホルダーに取り付けることが可能な超小型サイズの製品も作られている。
 また精神病院や警察機構向けの、リーチや防護範囲が広い警棒型や[[シールド>ライオットシールド]]型のものも登場した。
 
 いずれも基本的に投射能力はなく直接接触させる必要がある点が問題であったため、1960年代から投射式のスタンガンの研究が始められたが、命中精度や安定した電圧の維持、また一般的な銃砲用火薬を用いて投射すると''銃器''とみなされ調達の容易さに影響するという重大な問題があり、一般化は困難を極めた。
 その中でも1969年にNASAの技術者ジャック・カバー氏が考案した、ワイヤーに繋がれたダーツ状の電極を投射するスタンガンは特に洗練されたものであった。彼はこの製品を1974年に完成させ、特許を取得。製品名を、自らの好むSF小説の主人公「トーマス・スウィフト(ThomAs Swift)」の「電気式ライフル(Electric Rifle)」の略字として「TASER(テーザー)」の名称で販売した。
 この製品から、逆にスタンガンにより抑制することを「Tase(テイズ)」と呼ぶ英語が生まれた。
 しかしこの製品は操作性や安全性は高かったが、無力化能力は依然として疑問視されており、大きく普及することはなかった。
 1983年にはノヴァ・テクノロジー社がこの特許を元に、非投射式だがより安定した無力化効果を持つXR-5000携帯型「スタンガン」を開発。この商品の登場によって「スタンガン」という名称が一般化されることとなった。
 その後も同様に電圧や電流量、周波数(パルス)を改良することにより無力化効果を改良したとされる製品が無数に設計・販売された。

 1993年に設立されたテーザー・インターナショナル(現Axon)社もテーザーの特許を取得し、より扱いやすく効果的なものとして改良する試みが行われた。
 2003年に完成した新生テーザー「X26」はワイヤー付きの電極を5〜7mほど発射することが可能となっており、サイズや寸法は小型[[拳銃]]程度で、操作も[[拳銃]]のように[[アイアンサイト>オープンサイト]]とトリガーを備えたものとなっている。操作性だけでなく無力化効果もより強化されており、デモンストレーション映像として1トンクラスの雄牛をテーザーによって無力化、その後無傷で起き上がる様子を公開。その高い制圧力と非致死性がアピールされた。
 警察官による誤射・過剰防衛が問題視されていた当時のアメリカでは、このモデルとその発展系は瞬く間に普及し、全米の警察機関だけでなくアメリカ軍にも「M26」の名称で採用された。近年では[[コルト M4]]のハンドガード部分に装着可能な物も開発されている。
 また同社ではスタンガンの機能を待つ[[散弾銃の弾薬]]である「テーザーXREP」も製造している。
 なお現在の日本の銃刀法においては、テーザーやその類似製品は他のスタンガンと異なり、その投射能力から空気銃と同じ扱いとなっている。

 いずれの製品も一応非致死性ではあるものの人体に危険である点には変わりなく、また犯罪に使用される可能性もあるため、使用時にシリアルコード付きの小さな紙片を複数飛散させるなどの工夫を施したものが大半である。これは銃火器犯罪における硝煙やライフル痕などのように機能し、いつどこでスタンガンが使用されたかの追跡を可能にする。
 
 メディア上でも対象を傷付けず無力化する際によく登場するが、銃火器同様非現実的な描写となっていることも多い。
 特によくあるのがスタンガンにより''気絶''ないし意識が飛ぶという描写である。電流や痛みのショックにより意識が途絶えるほどのダメージがあれば後遺症は相当なものとなるため、これは''非致死性''として設計されているスタンガンの設計としては基本的に有り得ない。実際には手足が数分ほど自由を失う程度である。 
 またその程度のダメージであっても一瞬で与えられるということはほぼなく、スタンガンで十分に相手を無力化するには数秒ほど電流を加える必要があり、この間対象は普通に発声することも可能である。

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