二本の電極から相手の体に直接電流を流すことで、一時的に行動不能にする非致死性の護身用の武器。
電流を近接武器に流して相手を牽制する試みは牧畜業において始まり、1950年代にいわゆる「牛追い棒」に電極を搭載したものが始まりである。
その後、1980年代に犯罪者の人権や女性・ビジネスマンなどの護身などが重要視されてきたことで、致命性の低い電気式のいわゆる「スタンガン」が民間製品として広く流通し始めた。
主流はシェーバーのような寸法・形状の携帯機器型のものであるが、日常的に違和感なく携帯できるよう携帯電話やペン、口紅といった日用品に偽装されたものも多い。
精神病院や警察機構向けのリーチや防護範囲が広い警棒型やシールド型のものも登場した。
いずれも基本的に投射能力はなく直接接触させる必要がある点が問題であったため、1960年代から投射式のスタンガンの研究が始められたが、命中精度や安定した電圧の維持、また一般的な銃砲用火薬を用いて投射すると銃器とみなされ調達の容易さに影響するという重大な問題があり、一般化は困難を極めた。
その中でも1969年にNASAの技術者ジャック・カバー氏が考案した、ワイヤーに繋がれたダーツ状の電極を投射するスタンガンは特に洗練されたものであった。彼はこの装置を、自らの好むSF小説の主人公「トーマス・スウィフト(ThomAs Swift)」の「電気式ライフル(Electric Rifle)」の略字として「TASER(テイザー)」の名称で販売した。
この製品から、逆にスタンガンにより抑制することを「Tase(テイズ)」と呼ぶ英語が生まれた。
1993年に設立されたテーザー・インターナショナル(現Axon)社ではこの製品の特許を取得し、より扱いやすく安全なものとして改良する試みが行われた。
2003年に完成した新生テーザー「X26」はワイヤー付きの電極を5〜7mほど発射することが可能となっており、サイズや寸法は小型拳銃程度で、操作も拳銃のようにアイアンサイトとトリガーを備えたものとなっている。このモデルとその発展系は全米の警察機関だけでなくアメリカ軍にも「M26」の名称で採用された。
また同社ではスタンガンの機能を待つ散弾銃の弾薬である「テイザーXREP」も製造している。
現在の日本の銃刀法においては、テイザーは他のスタンガンと異なり空気銃と同じ扱いとなっている。
いずれの製品も一応非致死性ではあるものの人体に危険である点には変わりなく、また犯罪に使用される可能性もあるため、使用時にシリアルコード付きの小さな紙片を複数飛散させるなどの工夫を施したものが大半である。これは銃火器犯罪における硝煙やライフル痕などのように機能し、いつどこでスタンガンが使用されたかの追跡を可能にする。
メディア上でも対象を傷付けず無力化する際によく登場するが、銃火器同様非現実的な描写となっていることも多い。
特によくあるのがスタンガンにより気絶ないし意識が飛ぶという描写である。電流や痛みのショックにより意識が途絶えるほどのダメージがあれば後遺症は相当なものとなるため、これは非致死性として設計されているスタンガンの設計としては基本的に有り得ない。実際には手足が数分ほど自由を失う程度である。
またその程度のダメージであっても一瞬で与えられるということはほぼなく、スタンガンで十分に相手を無力化するには数秒ほど電流を加える必要があり、この間対象は普通に発声することも可能である。
最新の10件を表示しています。 コメントページを参照